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16

 魔豚種に向かって走り出した。その速度は同じ人間とは思えないほど。

 光のように速く力強く迫るヨイチ。

 魔豚種は体制を立て直し、ヨイチを親の仇のようにして睨みつける。


『人間風情がッ!』


 起き上がった魔豚種は角をヨイチに向け、突進を始めた。

 霧すらも晴れるほどの強烈な突進攻撃。

 俺は軽さゆえに耐えることができなかった攻撃だが、今のヨイチは吹き飛ばすことすら不可能だろう。


「ヨイチ。そいつに目にものを見せてやれ」


 岩陰に隠れていた俺の口から自然と言葉が出ていた。

 魔豚種に声をかかるゴーレム。


『人間など、すぐに蹴散らせッ! お前の突進に敵う人種じゃない!』


 ドドドドッと砂煙りを上げながら迫る。

 ヨイチは走りながら、剣を振るった。

 やがて、突進した魔豚種と交差するかと思ったが、魔豚種はそのままヨイチをすり抜け、岩に頭をぶつける。

 激しい地鳴りが俺の足元にも伝わった。それほど強烈な突進だったのだろう。

 だが、奴はヨイチが見えてなかったのか、狙いを見失ったのか。突然壁に頭を打ち付けた。


『な、何をやってるんだッ! 人間はすぐそこに……ッ!?』


 突然驚いたゴーレム。

 魔豚種の頭、胴体、角、全てに斬り傷が入っていた。それも何度も斬りつけられたかのような。

 やがて斬り傷は赤く染まり、灼熱の炎が魔豚種の身体を斬り裂いた。

 宙に打ち上がる魔豚種の肉体。

 獄炎の魔剣の力で斬りつけられた魔豚種は、即死だった。


「よ、ヨイチさん……なのっ!?」

「俺にもわからねぇ。けど、ヨイチの今の様子を見りゃ、一目瞭然だ」


 魔豚種を倒したヨイチは獄炎の魔剣に付着したであろう血をなぎ払う。神経質に魔剣の刃を覗くあたり、ヨイチは武器を汚してしまったことに、溜息を吐いていた。

 戦い中にそんなに気にするなら使わなければいいのに。


『ば、バカな……ッ!?』


 くるりとヨイチは振り返り、瞳を鋭くした。


「さて、次はキミだね」


 先ほどとは別人過ぎるヨイチ。その背に宿る魔竜がゴーレムを睨みつける。

 俺はチラッとサクリアやシンラのいる方向へと視線を向けた。そこには仰向けになって寝る二人の姿。


「ヘリス。一緒に二人を回復させに行くぞ」

「今のタイミングでか?」

「ああ……嫌な予感がするんだ」


 なんだか胸騒ぎがした。

 まるで、魔精霊種でもない何かが近づいてくるような違和感。

 俺の勘は当たらないが、でも、今だけは確かだった。

 ここは平原。奴らは合流してどこかに向かおうとしていたのだ。それが今、ヨイチと交戦することによって時間は長引いている。

 もしかしたら、奴らの上に何者かがいるのかもしれない。


『ふふふ…………はーはっはっはっ! 笑わせるな小僧よ。我はゴーレムの魔精霊。貴様のような小僧に簡単に殺せると思われるとは心外だッ!』

「何言ってるのかわからないけど。早急に済ませてもらう」


 ヨイチとゴーレムも気がかりだ。魔精霊種は俺が倒した魔竜種や、さっきの魔豚種よりもワンランク強い相手だ。ヨイチで敵うのか、不安が募る。

 ヨイチが駆け出すタイミングで、俺らもサクリアとシンラのや元へと近づいた。

 そのとき、アリーナが俺達に気がつき、近づいてくる。


「アリーナ! 無事か!?」

「ああ……」

「とりあえず、ヘリスに手当をして貰え」

「クマキチはどこに行くんだ?」

「俺は残りの二人を連れてくる」


 ゴーレムとヨイチの戦いが始まった。

 俺はなるべく全力疾走でサクリアとシンラの元へと近づく。

 最初にサクリアの方へと辿り着く。シンラも視界に入る。二人とも息をしていることから無事ではあるようだ。

 だが、そこで、俺の理性を消すサクリアの巨乳があった。


「ご、ごくりっ」


 これは、いや、抑えるんだ!

 今は戦いに集中してるし、ちょっとくらい……。

 いやヨイチが真剣に戦ってるんだぞ!

 だけど、揉みたいなぁ……。

 お、俺は皆を助けて、それで……。

 おっぱい揉むのか?

 ち、違う!

 じゃあなんだ? お前のハーレム要員に、この女を加えるのか?

 お、俺はサクリアを助けたいだけだ!

 本当にそうなら、なぜお前の手はサクリアのおっぱいを揉んでいるんだ?


「はっ!?」


 俺は気がつけば、サクリアの巨乳を揉みまくっていた。どうやら俺の中にある漢が暴れ出したようだ。へへいけねぇーよな。いけねーよ。柔かっ!

 と、止まらねぇ……ッ! 推定Eカップの力は収まるところを知らないッ! 隠れ巨乳のハイパフォーマンスに俺の思考が、いや理性が暴れ出す。


「んんっ……」


 サクリアが声を漏らす。

 くそッ! こんなときに俺は何を……ッ!

 そのとき、ゴーレムが押されたのか。俺達のいた場所が吹き飛んだ。


「ぎゃああああぁっ!?」

「え? あれ? 私なんで!?」

「ええええ!? クマ太郎さん!?」


 俺ら三人は吹き飛び、サクリアとシンラは目が覚めた。

 落下し、俺を下敷きにしてシンラとサクリアは無事着地。

 俺の顔をクッションにして、座る形になったサクリアとシンラ。


「く、クマ太郎さんっ! アタシの為に……」

「あ、ごめんなさいっ」


 二人は俺に対して謝った。

 だが、内心ではどこかグッドラッグのポーズを決めている自分がいる。

 サクリアは起き上がり、俺の姿を目にするとぽーっとした顔をしていた。


「く、クマキチ殿……?」

「はい。俺はクマキチです」

「も、もしかして、私を助けてくれたのですか?」

「そりゃあな。それより、あっちを見ろ」


 さっきまでは気がつかなかったが、洞窟が奥の方にある。濃霧でわかりにくい が、そこにセレスティンがいる可能性がでかない。

 俺はそそくさと起き上がり、二人を見つめて言った。


「今はヨイチが戦ってくれているが、ゴーレムには勝てないと思ってる。だから、俺がヨイチと交代したとき、ヨイチの傷の手当をしてくれないか?」

「それはいいけど……クマ太郎さんは?」

「俺はゴーレムを倒したら、そのまま洞窟に行く」


 ヨイチは満身創痍だろうし、シンラやヘリス。またはサクリアやアリーナを連れて行くのは危険だ。


「待ってください。私も行きます。そこには私のい、じゃなくて部下がいるんだとしたら、一国の王として行かせてください」

「……それなら、アタシだって!」

「いや」


 サクリア一人くらいなら、まだいいかもしれん。王が迎えに来たとすれば、多くの捕まった者も覇気を取り戻して、大人数で裏にいるボスを倒せるかもしれん。


「悪いシンラ、お前はヨイチ達と一緒にいてくれ。ここからはお前を守れる保証はないし、できればここにいて俺達の帰りを待って欲しいんだ」

「……わかった」

「よし、いくぞサクリア」

「はい。あなた」

「あ?」


 サクリアが何か言ったような気がしたが、俺は気にせずにゴーレムを見上げた。

 どうやら戦いはヨイチが優勢しているらしい。

 先ほどから圧されているゴーレムは、ヨイチに対して反撃すらできないくらい攻撃を受け続けているのだ。

 だが、その前に片付けなければならない奴がいる。


「……っとその前にサクリア。先に洞窟の方へ行ってくれ」

「どうかしましたか?」

「ヨイチの手助けをしてから向かう」


 サクリアはこくりと頷き、笑顔を見せた。


「では、先に私は洞窟へと向かっています。早く来てくださいね」

「ああ」


 サクリアが洞窟へ向かい、シンラが頬を膨らませて、俺を睨む。


「シンラ。悪いが、ここからは俺達に任せてくれ」

「……でも、二人きりになるじゃん」

「安心しろよ。俺にその気があっても、サクリアは国王だ。俺様になんか好意ができるわけがない」

「それならいいけど……」


 シンラは何度も振り返りながら、ヘリス達の元へと戻っていく。

 何だか、戦ってる最中とは思えないほどシンラは怒っている。

 まぁ、それでも俺は推定Cカップに用はないがな。

 俺はヨイチの隣に向かって走る。


「クマキチっ!」

「待たせたなヨイチっ!」


 俺は隣に立ち、ヨイチと並ぶ。

 ゴーレムの身体には既に無数の斬り傷。


「俺がいなくてもヨイチだけで倒せたんじゃねーか?」

「無茶言わないでよ。これでも限界だって……」


 ヨイチの額から流れる汗。魔剣からは未だに強力な力を感じる。多分、ヨイチの体力と魔力を激しく消耗するのだろう。その証拠にさっきから魔豚種を倒した必殺技ような類は使ってない。

 恐らく、さっきの攻撃で魔力は尽きたのだろう。


「わかった。ヨイチ、俺に力を貸してくれ」

「それ俺のセリフだって……」


 ニコリと笑うヨイチ。


『人間のくせにやるな。それは認めてやろう。だが、魔力の尽きた人間など恐るるに足らずッ!』

「あ? そうか。じゃあ怖くないんだな」

『なんだとッ!?』


 俺様は動き出す。

 拳を固めると、日差しのような柔らかい光が拳を包む。光は俺が走った跡を描くように道しるべを描く。

 身体がボロボロの筈なのに、ゴーレムは拳を走らせた。


「俺様は元々人間だぜッ!」

『それなら尚更怖くなどないわッ!』


 俺の拳とゴーレムの拳が激突。

 爆弾が投下されたかのような衝撃が平原に響き渡る。

 大地を揺るがす衝撃。その中心には俺とゴーレムがいた。


「一撃で壊れねぇとはなッ!」

『ぬいぐるみのパンチと同等とは、我も腑抜けたものだ』


 一度拳が離れる。

 俺とゴーレムはさっきぶつけた拳とは違う手で殴った。

 轟く平原。これでは埒があかない。

 だが、それは俺だけだった場合の話だ。

 俺の頭上を飛び越える人影。


「ヨイチッ! 行けぇッ!」

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!」


 ゴーレムを二刀で斬りつけようとするヨイチ。

 しかし、ゴーレムは俺と接触している手とは逆の腕をヨイチに向けた。


『甘いぞ、人間ッ! ロケットパンチッ!』

「な!?」


 腕からロケットのように拳が放たれる。

 ヨイチは攻撃の狙いをゴーレムから、飛んできた拳に変えた。

 二つの剣と衝突するゴーレムの拳。

 その瞬間、平原を眩い光に包まれた。


「ば、爆弾だとッ!?」

『馬鹿め! ただの拳ではない! 爆破魔法付きだッ!死ねェェェェェッ!』

「ヨイチッ! 離れろッ!」


 ヨイチは何も喋らずに俺を見つめ、微笑んだ。

 口が動く。

 そして、爆発がヨイチを包み込んだ。

獲得称号


・無職のぬいぐるみ:効果不明


・ドS好きのドMぬいぐるみ:効果不明


・神に嫌われたぬいぐるみ:効果不明


・神をオカズに抜く男:効果不明


・絶対不死の男:発動した者に対し、物理・魔法問わず、ダメージを与えることができない。但し、神が少し設定をいじっているので、痛みは感じる。


・竜に挑みし者:効果不明


・竜殺しのぬいぐるみ:効果不明


・老人を気遣うぬいぐるみ:効果不明


・神からの超運を恵まれし者:稀に当たったかと思われる射撃や、魔法を躱す。ギャンブルなどでも、大金を稼ぎやすいなどの、屑には与えてはいけない称号


・一撃必殺を授かりしぬいぐるみ:一撃で相手を殺せる力。但し、あまりにも大きい魔物などは、部位破壊として判定される。

追記

人間や、そのペットでは気絶させる程度に弱まる。


・役立たずのクズ:効果不明


【ヨイチの称号】


・双竜刀発動の青年:獄炎の魔剣と死毒の魔剣を装備した場合にのみ、発動される。二匹の魔竜種の魔力を引き出すことができる。

《派生技》

・獄双竜:魔力を消費することによって、竜巻を起こすことができる。


上級魔物討伐達成


>魔竜・ヘルフレイムドラゴン【討伐報酬】獄炎の魔剣


>魔竜・ポイズンドラゴン【討伐報酬】死毒の魔剣


>森大将【討伐報酬】

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