13
翌朝。ヨイチよりも早く起きた俺は、ヘリスとシンラに寝起きドッキリを仕掛ける為に早起きをし、彼女達の部屋へと向かっていた。
宿屋の廊下は恐ろしいくらい静かなことから、かなり高い場所を提供してくれたようだ。
そんな朝早くなのに、すれ違いそうになった女性が一人。
翡翠色の長い髪の毛に、ブラウンの瞳。整った顔立ちの女性が、俺の前に現れた。ここで重要なおっぱいだが、鎧を着込んでいるせいで測定は困難を極める。
その女性とすれ違おうとした女性は俺の前でぴたりと足を止めた。
「お主か」
「は?」
無表情で俺を見下ろす女騎士。やがて、腰のポケットあたりから手紙を取り出し、俺に渡してくる。
「これは、お主への手紙だ」
「おい、俺様は例えレディーと言っても、名乗らないような無礼者から手紙を受け取る趣味はねーぞ」
「失礼した」
女騎士は一礼すると、自己紹介を始めた。
「私は王国騎士団第二班兵士長のキサラギ・アリーナだ。その手紙は、我が王国の長たる者からの伝言だ」
「はぁ」
俺様、遂に王国に名を知らしめたるほどの武勇伝を作り上げた男になってしまったのか? だが、無理もない。俺様ってば、王国騎士団のセレスティンまでワンパンで仕留めるほどの男だかんな。
と内心ボヤいてみたものの、正直ヘリスを寝起きドッキリさせておっぱいを揉みしだこうと思っていたので、かなりだるかった。
手紙をやや乱暴に開けると、アリーナが不機嫌になりながら睨んでくるが、俺は気にせず開封を済ませる。
『この手紙を読んでいるということは、王国騎士団団長のセレスティンが行方不明となっていることでしょう。どうか、この手紙を読まれているお方。私の元へ一度来てもらえないでしょうか。セレスティンを救う為に力を貸してください』
手紙の内容はこんな感じだった。
というより、これはセレスティンがいなくなったときの為の手紙だと見受けられる。
チラッとアリーナを見ると、ムスッとした顔で言った。
「つまりはそういうことだ」
「どういうことだよ。これ、セレスティンがいなくなったらっていう理由で使い回しができるじゃねーかよッ!」
するとアリーナは眼差しを鋭くしながら口を開く。
「昨夜。魔精霊種がコロンブス領内にて確認され、セレスティン王国騎士団団長様が出撃されたが、行方がわからなくなった。連絡も追跡魔法を発動しても、セレスティン様の行方は不明。……ので、最悪の場合、戦死した可能性もあり得る」
「ちょ、お前何言ってんだよッ!」
俺の手から手紙が落ちた。
セレスティンが死んだ? あんなに強かったあいつが?
昨夜知り合ったばかりだが、その人間が死んだかもしれないという言葉を聞かされ、俺は正直呆然とするしかなかった。
「昨夜、お主が何かを唆したのではないかと、王国では話し合いがなされている。早急にお主を連行するようにと命令されているのだ」
一瞬考えたが、俺はすぐに頷く。
セレスティンが死んだ。だが、俺は何もしなかったでは寝目覚めが悪い。それを無視しておっぱい揉んでましたでは、死んだセレスティンの幽霊に呪われてもおかしくないだろう。
「わかった。だが、俺一人にしてくれないか? 悪いが、相手が魔精霊種だと思うと、他の連中を連れてけば、そいつらが死ぬことになるかもしれん」
俺はアリーナに真剣な顔つきで言った。
「また一人で何でも解決しようとしてるの? 悪いけど、今回も置いてけぼりは嫌だよ。クマキチ」
「え?」
振り返ると準備を済ませたヨイチ。
俺はキツネにつままれた顔をして、眺めてしまった。さっきまで寝ていた筈なのに、もうやる気満々で準備を済ませていたのだ。
「クマキチよ。悪いけど、私も参加させてもらう。クマキチ達ではセレスティンさんの怪我を応急処置できんだろうしな」
「へ、ヘリス姉さん!?」
ヘリスも白衣を羽織い、自慢の武器である鞭を腰に装備している。
ニヤリと微笑み、俺の動揺を感じ取っているようだ。
「クマ太郎さんだけを死地に行かせるわけにはいきません。死ぬときも一緒だからね」
「シンラ……」
シンラも微笑みながらやってきた。
相変わらず怖い。
「そういうことだ」
「なるほどね。俺は外堀を埋められたってわけか。これじゃ、俺様は従うしかないわけだな」
「では、早急に王国へと向かうぞ」
俺達はアリーナに連れられて、宿屋から王国へと馬車に乗って移動をした。
城下町から馬車で十分ほど移動し、馬車から降りると巨大な青銅製の扉が、存在する。奥にはお城が聳え立つ。
アリーナの指示で扉が開くと、アリーナの後について、城内へと足を踏み入れる。
奥に進むと、近衛兵がそこかしこに集まり、談笑を交わしていた。
やがて、階段をいくつか上がり、俺達の前には、女性――――というよりも、女の子が玉座に堂々と腰を降ろしていた。
「……なるほど。アリーナは、昨夜セレスティンに接触したこの方達を連れてこられたわけですね」
「はい。昨日の夕刻。セレスティン様と、この汚いクマが勝負を町内でし、セレスティン様に汚いクマが勝利しました。この汚いクマは、それなりに使えるでしょう」
片膝を着き、頭を下げるアリーナ。
おい、誰だ俺様のことを汚いクマとか言いやがったのは。
「おいっ! 俺様は汚くねーぞ!」
「少々お黙りになってください」
席を王女と思わしき者が立ちながら言った。
ボインと揺れる胸。どうやら立ったときに揺れるほどのカップ数ということ。つまりは未知数。それによく見たら、王女だけあってものすごく可愛い。足とか白くて細いし、白色のドレスにプラチナにも似た髪は俺の、いや男心を揺るがすのには充分であった。
気のせいか、誰かに似ている気がするが、まぁいいか。
「私の名は、アイゼン・コロンブス・サクリア。この王国の十四代目の王。そなたら冒険者にお願いがある」
「お、おぅ」
俺様は先頭に立ちながら、ビビってしまった。あまりの胸の揺れに、言葉がほとんど入ってこない。
くっそ、大き過ぎるおっぱいとか危険じゃねーかッ!
「な、なんだよ。俺ぁ忙しいんだよ」
「私と共にセレスティンを、探してくれないか? セレスティンは騎士団長であり、とても親しい者なんだ。私も多少なりとも武術に心得はある。アリーナもついていく。どうだろうか?」
つまり、アリーナは騎士団の兵士長で、サクリアは武道に多少心得がある程度。ということは自然的にアリーナはセレスティンに劣るわけで、サクリアに関してはシンラとヨイチ、ヘリスレベルということか。
戦力的には自殺しに行くレベルなんだが。
俺が考えていることを見透かしたかのように、サクリアは続けて話した。
「もちろん報酬は支払う。私とて一国の王。ギルドに提示した報酬金の倍は約束しよう」
「え!?」
ヨイチが声をあげる。そういえば、ヨイチは話を途中までは聞いていたので、しっかりと内容を覚えているのだろう。
だが、それでいいものか。果たして、男たる者金だけで動いてはいけない。そう、いつだって男は好奇心を求める生き物だ! つまり、俺は己に嘘偽りなく生きていく! 金はいらねーッ!
高々と手を挙げ、俺は凛々しい顔つきで叫んだ。
「金なんかいらねーッ! その代わり、報酬として、サクリア王女のおっぱいを無制限で揉める権利を――――――――――ひっ!?」
言葉の途中で頰に擦り傷が三つほどついた。
血は出ないけど、微かな痛みと恐怖が俺の身体に刷り込まれる。
気がつけば、三人の女がまるで人を殺すかのような瞳で俺を睨んでいた。
クナイで俺の頰を掠めたシンラが呟く。
「クマ太郎さん。アタシは確かに胸は小さいかもしれないけど、浮気するようなら一緒に死んでもらうからね」
鞭を掠めたヘリスも囁く。
「クマキチ。あんまり私を怒らせないでくれよ?」
最後に俺の頰を掠めたヘリスが微笑んで言った。
「国王様を侮辱するのなら、殺すぞ。ゲス」
三人の美女が怒り狂う中、サクリアが呟く。
「べ、別にそれくらい……」
「それくらいではありませんサクリア様。失礼ですが、こんなゲスに胸を揉ませるくらいならば死んだほうがマシです」
「クマキチは確かにゲスだね」
サクリア以外が俺を侮辱する中、俺は胸を張って答えた。
「俺はゲスでもなければ変態でもないッ! 俺は紳士だ!」
「紳士なら頻繁に女の子のとこに行ったりしないと思うよ、クマキチ」
「私だけでいいと思うんだが、どうだろうか。クマキチよ」
「クマ太郎さんって紳士なのかなぁ」
「というかゲスクズだろ」
散々罵倒してくる皆様。俺って、本当は豆腐メンタルなんだぜ?
サクリアは溜息を吐いて、俺を凝視した。
「でも、セレスティンを倒したほどの者ならば、私も凄く興味があります。どのようにして、私のい――――――騎士団長を倒したのか気になりますしね」
今何か言いかけたけど、気のせいか?
「それは私とて同じです。如何にゲスクズでもセレスティン様を倒すことができたのであれば、もしや魔精霊種すら倒せるかもしれませんからね」
どうやら、バカにはしているがアリーナは俺の実力は一応信用しているようだ。
アリーナだけはお堅いタイプっぽいな。
「それでは作戦を説明します」
サクリアの作戦は、魔精霊種が確認されたコロンブス平原と言われる場所らしく、夕方に確認されるようだ。昼間は寝ているらしいく、その居場所も突き止める為の人員がいるらしい。
そこで、俺らは今から出向き、セレスティンの捜索隊と魔精霊種の討伐及び囮役と分けられるようだ。
そこで決まったのが、シンラと俺とサクリアが囮役で魔精霊種からの攻撃を集め、その隙にセレスティンを探すのがヨイチ、ヘリス、アリーナのようだ。
本来、アリーナはサクリアの護衛らしいが、俺の力を信用して捜索隊の方に配属された。
「じゃあ、クマ太郎さんとアタシで、倒せるかもねっ!」
「それは難しいと思うが、クマキチ殿にはできれば討伐をお願いしたい」
「わかってるよ」
だが、あのセレスティンがやられたというのが気になる。こうもあっさりと倒されたのであれば、いくら俺といえど倒すのは難しいかもしれん。
「じゃあ、俺達でセレスティン君は探すよ」
「そうね。クマキチ。くれぐれもその女には気をつけてね」
「こんなゲスクズのどこがいいのか……」
アリーナは呆れて俺を見つめ、ヘリスとシンラは犬と猿のように睨みあっていた。
シンラとヘリスが離れたのは良かったが、どっちにしろシンラがいるんじゃ、サクリアのおっぱいは揉めそうにないなぁ……。
「では、馬車を用意しておりますので」
アリーナがヘリス、シンラを案内する中、ヨイチがサクリアに呼び止められた。
「あの……」
「ん?」
ヨイチと俺は振り返り、サクリアを見つめる。
何か、言いにくそうな顔をしていたが、サクリアは口を開いた。
「その腰の剣……。もしや、獄炎の魔剣と死毒の魔剣ではないでしょうか?」
「あ、これね。クマキチからのプレゼントなんだ」
「あげた覚えはないけどな」
のんきに話す俺とヨイチだったが、サクリアは深刻な顔をする。
「……そ、そのもしよろしければ、どちらか、わ、私に貸していただけませんか?」
「え!?」
とんでもなく驚いたヨイチは、わざと剣を隠した。
「ど、どういうつもり!? これは俺の大切なものなんだけど……」
「勝手に所有物にした上に宝物扱いかよ」
「クマキチは黙ってて!」
全く、近頃の若者はすぐに借りパクをするなぁ。それって立派な犯罪だぜ? あ、ヨイチは実はジジィだったか。
「……聞いたことがあります。魔剣は人の手で造られた物よりも効力があると。ですので、私にも……」
「それはできない」
ヨイチはキッパリと言い切り、真剣な顔をして言った。
「これは魔剣だから俺の大切なものなんじゃない。クマキチがくれたから宝物なんだ。これがなければ俺は人の作った物こそが、最強だと信じてるよ」
「で、ですが……」
「最近の鍛治鍛錬は進化してるよ。もう少し城下町を見てみればわかるよ」
「……」
サクリアは黙り込み、やや苦笑いで口を開く。
「……そうですよね。私が国民の物を使わないで、誰が使うんだって話ですよね……」
「そうゆうこと」
それだけ言ってヨイチは先を歩いて行った。
サクリアはヨイチの剣を羨ましそうに眺めている。
ヨイチは鍛冶屋だからか、武器や防具には特別な目利きがあるのだ。当然、俺のような素人には全くわからない。
サクリアの言わんとすることはわかる。わかるが、簡単に愛刀を貸すほどヨイチは武器を嫌いじゃないし、むしろ大好きだ。
そこらへんは、いくら巨乳で美しいサクリアであろうとも譲ってもらわないと困るところだ。
馬車は二手に分かれ、俺とシンラ、サクリアは静かに乗り込んで、その時を待った。
到着して馬車から降りると、周囲一帯は霧に包まれている。昼間の筈だが、夜のような暗さ。
「ぎゃあああああああっ!?」
そのとき、男の悲鳴が響いた。
俺達は、すぐに顔を合わせてコロンブス平原を走る。
獲得称号
・無職のぬいぐるみ:効果不明
・ドS好きのドMぬいぐるみ:効果不明
・神に嫌われたぬいぐるみ:効果不明
・神をオカズに抜く男:効果不明
・絶対不死の男:発動した者に対し、物理・魔法問わず、ダメージを与えることができない。但し、神が少し設定をいじっているので、痛みは感じる。
・竜に挑みし者:効果不明
・竜殺しのぬいぐるみ:効果不明
・老人を気遣うぬいぐるみ:効果不明
・神からの超運を恵まれし者:稀に当たったかと思われる射撃や、魔法を躱す。ギャンブルなどでも、大金を稼ぎやすいなどの、屑には与えてはいけない称号
・一撃必殺を授かりしぬいぐるみ:一撃で相手を殺せる力。但し、あまりにも大きい魔物などは、部位破壊として判定される。
追記
人間や、そのペットでは気絶させる程度に弱まる。
・役立たずのクズ:効果不明
上級魔物討伐達成
>魔竜・ヘルフレイムドラゴン【討伐報酬】獄炎の魔剣
>魔竜・ポイズンドラゴン【討伐報酬】死毒の魔剣
>森大将【討伐報酬】




