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 コロンブス王国城下町。ここは、多種族の人間が足を踏み入れる王国だ。ヨイチやへリスのいた村も、このコロンブス領に入るらしい。

 周囲には、耳の尖ったエルフ。半漁人。特別綺麗な容姿をした精霊種など様々だ。

 俺は物珍しさに、周囲の人々を眺めるが、逆に俺の存在も目立っているのも事実。

 街並みは、石煉瓦で積まれたできたような中世ヨーロッパ風。そういうところは、ゲームなんかとそっくりだ。

 武器にアイテムに八百屋。いろんな物が売ってる市場を俺達は歩く。


「ほぅ……すげーなッ! こんなに色んな物が売ってるんだな! なぁヨイチ?」

「……これは素材がアレか……なら、アレをこうして、これを叩いて……ブツブツ」

「ヨイチ?」


 武器を目と鼻の先まで近づけて眺めるヨイチ。元々鍛冶屋だからか、興味津々らしい。店主がちょっと困っているようなので、俺はヨイチの背中を引っ張る。


「ちょ、クマキチ何するの!?」

「店長が迷惑そうだったぞ」

「クマキチ、ちょっといいかな」

「ん?」


 ヨイチは真剣な顔をして、人差し指を立てた。


「俺にはこの旅で大事にしていることがある」

「ふむふむ」

「まず、クマキチと一緒に世界を歩くこと」

「ほうほう」

「次に、俺は世界一の鍛冶屋になることが夢だって言ったよね」

「確かな」

「だから、俺は人に迷惑をかけようが、武器を見ることに関してはとやかく言われる筋合いはない」

「め、めんどくせ……」


 どうやら、多くの武器を見て熱が入ってしまったようだ。

 結構武器に関してはうるさいところがあるからなぁ。前の魔剣に関してもだいぶ、ウンチクを聞かされたし。


「めんどくさいって、いつもクマキチのめんどくささに付き合ってるのは誰?」

「う……。それはそれで、言い返せない自分がいるな……」

「たまには俺の言い分も通らないとダメだよね」

「うぐっ……」


 こうして、俺はヨイチのわがままに付き合わされることになった。

 市場は広くて、俺の脚ではどれくらいかかるのかわからない。しかも、そのうえ一個一個調べるヨイチに付き合っていたら、日が暮れる。

 どうすればこの状況を打破できるか、足りない脳で考えることにした。


「ん、そういえばシンラいないな」

「あ、そうだね」


 俺は閃めく。これはシンラを探しに行くと言えばいいだけのことだ。


「ヨイチよ。俺がシンラを探しに行くよ」

「んー、そう?」

「ここにずっといるだろ?」

「うん、そうかもね」


 武器を見ながら会話するヨイチ。かなり熱中してしまっている様子だ。

 俺はその隙にバニーガールとか、巨乳のお姉さんでも探しに行こうと決心した。


「じゃあ、ちと探してくるわ」

「うん」


 ヨイチから離れ、市場を逆走する。

 さっきコロンブス城下町に入ったときに、目星しい場所を押さえておいたのだ。 俺は早速、そのお店に入りバニーガールの巨乳を揉みまくろうと考えていた。

 ぐふふふ、死んでからというもの、おっぱいを揉めていないからな。俺の手が疼くぜ!

 遂に到着した、ウエスタンの酒場風な店。周囲には鎧とか、やたらゴツイ人間を見かけるが関係ない。

 俺様の欲を久々に解放させてもらうぜッ!


「たのもーッ!」


 木製の扉を俺は開いた。

 店内は賑やかだったのだろうが、一瞬で静まり返る。

 木製の店内。このレトロな感じの居酒屋が俺様の肌にはあってるなと感じた。  ま、酒なんて飲んだことないけどね。

 俺の見た目でか、注目の的となる。

 俺はカウンターに座り、マスターと思われるモジャモジャヘアーのヒゲに告げた。


「俺に、テキーラを持ってきな」


 マスターは頷き、氷の入ったグラスに茶色の液体を注ぐ。

 その間に俺は目線を動かさずに、隣に誰がいるのかを探る。

 甘い芳香。視界にいない筈なのにそこにいるとわかるボイーンでマブな女。

 俺はクスリと微笑み、マスターに告げる。


「マスター。隣に一杯」


 コクリと頷いたマスター。

 俺にはテキーラと思われる液体の入ったグラスを置いた。というより、テキーラが存在すること自体に正直びっくり。だけど、落ち着いていなければ、隣のハニーは落とせない。

 やがて、マスターは適当にお酒を作り、カウンターからグラスをスライドさせた。


「え? 私、頼んでないわよ」

「お隣のお客様からです」

「え?」


 マブな(見てないので正直わからない)女が、俺に目線を向ける。

 隣の席にいる女に渋い顔をして、ウィンクした。


「俺の奢りだ。飲みな…………ってえ?」

「く、クマキチっ!?」

「だ、誰かな? クマキチなんて、喋るぬいぐるみ俺はし、知らないぞっ」


 視線をすぐに逸らすが、隣にいた女がズカズカとやってきて、俺の胸ぐらを掴む。

 おおっとどよめく店内。


「ちょ、ちょっと待ってよ! お、ひ、人違いだって!」


 隣のマブでボイーンな姉ちゃんは、なんとヘリスだったのだ。一緒に旅をしたいと言っていたが、結局ヨイチと俺の独断で置いていくことにした。

 会ったら怒られるだろうなぁ……と思っていたが、まさか早過ぎるだろ!?

 ヘリスは俺を睨みつける。


「いくら探してもいないから、ヤケになってお酒を飲んでいたら……まさか、そっちから来るとはねっ!」

「ご、誤解だって! ほ、ほら、ヘリスにはヘリスの仕事がさ!」

「うっさいっ! ……ヒック」


 あ、どうやら酔っ払ってるようです。

 顔が赤いヘリスは、そのまま目と鼻の先にまで俺の顔を近づけた。酒臭い。

 全身冷や汗の俺は、どうにかならないと、脳内でパニクっていた。


「クマキチ……。逢いたかったよ。でもね、許される行為をしたわけじゃないのヒック。もしねヒック。許して欲しければヒック。私とヒック。ここで、キスしないさいよヒック」

「ちょ、そ、それだけは勘弁しない? ヘリスだって好きな人としたいんじゃない!? 酔っ払った勢いとかダメだよっ!?」

「うるさいな……ヒック。私だけでいいじゃないヒック。こんなに美人であなたに忠実な女なんかねヒック。この世には私しかいないわよ? ヒック」


 だ、ダメだ! き、き、キスだけは! おっぱい揉むのはなんてことないけど、キスだけは酔っ払ってしてはいいもんじゃない!

 おおっと更にどよめく客達。マスターはグラスをタオルで拭いている。


「もう、我慢の限界……ヒック。うーん」

「ちょ、ちょ、ほ、本当に! だ、誰が助けてぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 妖艶な唇を近づけてくるヘリス。

 俺は初接吻を酔っ払いの姉さんと済ましちゃうの!? キスは好きな人とじゃないと、俺は、俺は、俺はイヤァァァァァアァッ!

 そのとき、扉が凄い音をしながら開かれた。


「クマ太郎さんっ!?」


 そこに現れたのは、行方不明だったシンラ。

 早速、俺とヘリスを視界に入れる。

 ズカズカと俺に近づき、ヘリスの肩を押した。


「ちょっと、アタシのクマ太郎さんに絡んでんじゃないわよ! この酒乱っ!」

「痛っ! ……何するのよ。このまな板っ! 私とクマキチのファーストキスを邪魔しないでヒック」

「ファーストキス!? あんた、クマ太郎さんにキスしたら、殺すだけじゃ済まさないよッ!」

「あなたこそ、クマキチのなんなのよ! クマキチは私みたいに綺麗で巨乳の女の人の方が良いに決まってるわ!」

「そんなことないッ! クマ太郎さんは、アタシも助けてくれる凄い優しい人ッ! あんたみたいな酔っ払いのビッチなんか選ばないわよッ!」


 喧嘩を始めるシンラとヘリス。その光景はまるで、虎と竜の戦い。これは凄まじい戦いとなりそうです。

 てゆか、助けて。

 取っ組み合いになりそうな喧嘩を前に、客達もヒートアップ。俺大パニック。

 二人して俺のことを睨みつけてくる。


「どっちなの! クマ太郎さんッ!」

「当然私よね? クマキチ……ヒック」

「お、俺は、俺は、俺は…………っ!」


 ここで欲望のままヘリスと言えばシンラに殺されるのが確定し、シンラと言えばヘリスの推定Gカップは揉めずに殺されるのが確定。

 どっちに転んでも殺されるのが確定されている。どっちにしても、俺には苦渋の選択だ!


「「どっちなの!」」

「そ、それは……」


 二人してぐいっと迫ってくる。

 俺の脳は回転を止め、身体からは冷や汗が垂れ流し状態。

 二度目の救いを、俺にッ!

 また、客席が騒ついた。それは俺らの修羅場を見ているからではない。新たな客人が来たからだ。


「あ、やっぱりここにいた! クマキチっ! 何やって……ってヘリスさん!? それにシンラも!? 何やってんの!」

「ヨイチぃぃぃーっ!」


 ヨイチは無理矢理二人の距離を開けさせて、俺の身体を抱っこしてくれた。

 シンラとヘリスの二人がヨイチをギロリと睨みつける。


「ちょっと、答えを聞いてないんだから、いきなり取らないでよッ! アタシのクマ太郎さんなんだからッ!」

「聞き捨てならないわね! ヨイチさん! 私のクマキチを返してください……ヒック」

「二人とも落ち着いてッ!」


 このタイミングのヨイチは神々しかった。俺を助けてくれるのは、やはり相棒だ。


「クマキチは、俺の相棒なんだよ。シンラ、それは君もわかってるよね!」

「そんなの関係ないよ! クマ太郎さんはアタシの婚約者でしょ!?」

「ヘリスさんも! 黙って置いて行ったのは、悪かったけど、クマキチを責めないでよ!」

「責めてなんかいないわよ。ただ、好きなだけ」


 ヘリスは真剣な顔をして俺に言った。

 顔色も戻ったし、酔いが覚めたのだろうか。

 俺はなんだか気恥ずかしくなる。


「……ちょっと、クマキチ。照れてる場合じゃないよ」

「いや、こう俺のモテ期はやっと到来したかと思うと嬉しくてね。へへ」


 すると、シンラは逆に目を吊り上げて対抗してきた。


「いーやッ! アタシの方がクマ太郎さんのことを好きだし! あんたなんかどうせ、クマ太郎さんに助けられて落ちたチョロいビッチでしょ!」


 それを君が言ってしまうのか。と俺は密かに思ったが、喉にしまっておくことにする。


「それはまな板の方じゃないかしら。私は最初見たときから好きだったわよ。初恋を邪魔しないでもらえるかしら」

「アタシだって初恋よ! あんたみたいなビッチが初恋とかよく言えるわねッ!」

「さっきからビッチビッチって言うけど、私だってまだキスすらしたことなんかないわよッ! 私の最初は……」


 チラッと俺を見つめるヘリス。


「ふん、ならあんたの前にアタシがしてやるわッ! ヨイチッ! クマ太郎さん貸して!」

「嫌だよ! クマキチは俺の相棒だもん! ずっとずっと一緒にいたんだ! 絶対に乱暴にされるとわかってて相棒は渡さないよっ!」

「ヨイチさん。恩を返すときです。あなたを救ったかわりに、今すぐクマキチとキスさせてください」

「嫌だよ! 俺を救ったのはクマキチでしょ!?」


 おお、なんか皆からの愛を感じる。

 けど、修羅場感が半端ない。

 ジリジリと燃えてゆく三人の喧嘩。ヨイチはミイラ取りに来たのに、ミイラになってしまったようだし、この状況どうやったら改善できるんだ!?


「待ちなよ」


 だが、ようやく助け船がきた。

 俺達の視線は声の主に集中する。

 金髪のふわふわパーマの色白のイケメン。見た目だけで優しそうな雰囲気を醸し出す、いわゆる俺が嫌いないけ好かない奴だ。

 まさか、俺が学校に一人はいそうなモテる奴に助けを求める日が来るとは思わなかった。

 そいつが歩くだけで、女子共が瞳を輝かせる。


「そんなにキスしたいなら、僕じゃダメかな? 喧嘩両成敗って言うじゃん?」


 まるで爽やかな風が吹いたかのようなイケメンオーラ。くっそ、消してやりてぇが、どうもコイツに助けられる以外は方法はないみたいだ。

 そいつはまず、シンラの方に歩いていく。


「とても可憐。キミはまさに、可憐そのもの。まるで一面花畑の中に咲く、ひまわりのように可愛い。どうだい? 僕が代わりにキミのキスを受けて差し上げよう」


 シンラはギロリと睨みつけ、奴の足を全力で踏んだ。


「ふんッ! クマ太郎さん以外とのキスなんて、死んでもゴメンよッ!」

「「「キャァァァァァァァァッ! セレスティン様の足が踏まれたぁぁぁぁぁっ!?」」」


 女性客が叫ぶ。

 だが、イケメンのセレスティンは前髪を軽く弄り直して、今度はヘリスの前へと行った。


「僕は初めからキミを見たとき、運命を感じたよ。宝石の頂点、ダイヤモンドの如く美しいその顔。僕にもっと見せてくれないか?」

「見るな」


 ヘリスは足でセレスティンの股間を蹴り上げる。

 少しも顔に出さず、セレスティンは次にヨイチの前へと向かった。


「まさか、俺にもナンパするのか?」

「……そのクマを貸してくれないか?」

「……はい」

「え? ヨイチさん!?」


 すーっと俺を差し出すヨイチ。

 セレスティンは俺の頭を鷲掴みにして、そのまま俺を床に叩きつけた。


「ふげッ!?」

「このぬいぐるみがッ! いなければッ! 皆、皆! 笑顔になれるんだよねッ!」


 俺の頭を足でグリグリ踏みつけるセレスティン。

 ちょ、痛いっつの! クソ野郎ッ!


「な、何するのよ!」

「そうよ! クマキチのチ⚪︎コが使い物にならなくなったらどうするのよッ!」

「関係ない! コイツがいなければ、皆平和なんだよッ!」


 俺は我慢の限界だった。


「いてーんだよクソ野郎ッ!」


 頭を思いっきり上げ、セレスティンの足を退ける。

 そのまま立ち上がり、セレスティンを睨みつけた。


「おいッ! すけこまし! さっきから黙って聞いてりゃ、女の子を片っ端からナンパしやがってッ! テメェはどんだけ性欲に飢えてんだよッ!」

「そ、それクマキチが言うかなぁ……」

「ヨイチうっさいッ!」


 もう我慢の限界だッ! このすけこましをボコボコのけちょんけちょんにしてやるッ!

 セレスティンは前髪をまた弄ってから、腰の剣に手をかけた。


「そこまで言うのなら、表に出ようか。どっちが二人の美女に相応しいか決めようじゃないか」

「望むところだボケッ! テメェなんかボコボコにして、どっちがシンラとヘリスに相応しいか目を覚ましてやるッ! すけこましッ!」


 俺は肩を上げて、ずかずかと外に出る。


「クマ太郎さん……そこまで、アタシのこと大事なんだ……」

「クマキチ……好きっ」


 ヨイチは額に手を当てて溜息を吐いた。


「……どうしてこうなったの……はぁ……」

獲得称号


・無職のぬいぐるみ:効果不明


・ドS好きのドMぬいぐるみ:効果不明


・神に嫌われたぬいぐるみ:効果不明


・神をオカズに抜く男:効果不明


・絶対不死の男:発動した者に対し、物理・魔法問わず、ダメージを与えることができない。但し、神が少し設定をいじっているので、痛みは感じる。


・竜に挑みし者:効果不明


・竜殺しのぬいぐるみ:効果不明


・老人を気遣うぬいぐるみ:効果不明


・神からの超運を恵まれし者:稀に当たったかと思われる射撃や、魔法を躱す。ギャンブルなどでも、大金を稼ぎやすいなどの、屑には与えてはいけない称号


・一撃必殺を授かりしぬいぐるみ:一撃で相手を殺せる力。但し、あまりにも大きい魔物などは、部位破壊として判定される。

追記

人間や、そのペットでは気絶させる程度に弱まる。


・役立たずのクズ:効果不明


上級魔物討伐達成


>魔竜・ヘルフレイムドラゴン【討伐報酬】獄炎の魔剣


>魔竜・ポイズンドラゴン【討伐報酬】死毒の魔剣


>森大将【討伐報酬】

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