紅の兄妹 4
ちょっと怪しい行動をするお兄様、まんざらでもないクレア。
さて、何を着ようか。二人はそれぞれの部屋に入って着替えだす。
「やっぱり…こんな感じがいいのかな」
クレアは立ち鏡の前で、白のフリルブラウスと茶色いスカートを身に纏ってくるりと回る。ふわりとスカートが浮き上がって慌てて押さえ、ドレッサーの前にある椅子に腰掛けた。
「髪、そろそろ切らないと…でも忙しいし。時間も掛かるか」
髪を透いた後にリップクリームを付けていると、ノックの音と一緒に兄が入ってきた。
「ん?今日は随分可愛い格好だ。いつもこうだと嬉しいのだけど」
クレアから櫛を取って、そっと髪を梳いていく。
絹のように乱れの無い髪、うなじから香るシャンプーの微かな匂い。女特有の甘ったるい体臭が鼻孔をくすぐる。
「…こんな格好。お兄様以外に見せはしません」
ありがとう、と櫛を受け取って引き出しにしまい。椅子から立ち上がると灰色のフードをたんすから二枚取り出す。
「そういえば、いつも軍服だから新鮮だな…」
手渡されたフードを目深に被って紐を軽く縛る。黒いコートに合わせたスーツに相まって近寄りがたい印象を与える。
「軍服の方が好きです…動きやすくて。お兄様?裏口をお探しになっていたでしょう」
ピンク色のバッグを肩に掛け、いつもより部屋に来る時間が遅かった事を思い出す。
クレアは手を差し出し、冷たい手を包み込む。二人の体温が合わさっていく。何となく服に対する緊張感も溶けたように思えた。
「異常が無いか周りを見に行っていたんだよ。昼は人数が少ないだろう?」
もっともらしい言い訳を口にする兄に込み上げる笑いを堪えながら、共に裏口から庭に出る。風が草の芳香を運び、冷たさを増した外気を浴びつつ足を踏み出した。




