紅の兄妹 2 決意
「彼女はクレアを捨てたわけじゃない。私もお前も、分け隔てなく愛情を注いでもらった」
イグニスはクレアの肩に両手を掛けてソファーに座らせ、静かに言葉を紡ぐ。隣に座れば戸惑うような目で何度もメモを読み返す姿が見えて痛々しい。
「そんな事…お父様が怖いから私を置いていった。あの人は畏怖の対象、お兄様だってそうでしょう?」
メモをきちんと畳んでソファーに置き、諫めるように兄を見る。彼が彼女に肩入れするのが気に入らない。ただ、子供っぽい感情。そんな風に自覚しつつ、片手をイグニスの頬に添える。
「どんな人だったのか…確かに覚えています。手作りのお人形をたくさんくれた、お兄様に会う時も見張り役になってくれてた。けれど…あの方はただの使用人」
イグニスはクレアに手を重ね、髪を撫でて立ち上がる。本棚に向かい、一番上の棚を見ている。
「恨んでくれて構わない、と言っていた。お前を生かしておくためにああするしか無かったんだよ。もし、父様にばれていたら…」
兄の言葉を遮るようにクレアが告げた。
「お墓へ、連れていって下さい。貴方の本当の妹が眠っている場所へ」
イグニスは目を伏せた後、静かに頷いた。




