第八章:窮地
レオンの言霊と同時に、光の球が弾ける。
途端、白い閃光が森の中を駆け抜けた。
「ぐぁっ! 目が!」
閃光に視界を奪われ、立ち尽くすセスカ兵たち。
その隙を逃さずに、弓兵の元へ駈けるレオン。
一人、二人、三人。
目にも留まらぬ剣さばきで弓兵達を切り捨てた。
「おおおおぉ!」
振り向きざまに気合いと共に繰り出した一撃は、槍兵の持つ盾をも切り裂き、その体を腹を境に真っ二つにした。
視力が漸く戻った兵士達は、斧兵を前面に陣を組み、四方からレオンを追い詰める。
斧を扱う者は、その斧の重量故に振り下ろしか凪ぎ払いの攻撃しか出来ない。
その為、攻撃までの隙を埋めるべく、重厚な鎧と盾を身に付けるのである。
鎧を纏ったその体躯は、どんな攻撃にも動じない重さと硬さを手に入れる。
その鉄壁の守りを打ち崩せるのは、その体を覆う鎧の僅かな隙間を貫き通す細剣や、力を一点に集中させた馬上槍の一撃、鎧ごと人体を叩き壊すハンマーぐらいしか無いだろう。
今レオンは、その手段のどれも持ち合わせていない。
皇帝から賜った一振りの剣のみである。
この剣とレオンの技量ならば、或いはその鉄壁を切り崩すことが出来るかも知れない。
しかし、木々が乱立する森の中に多対一。
圧倒的不利のこの状況で、鎧を切り裂く事など不可能であった。
斧兵特有の、巨大な体躯から繰り出される必殺必至の連撃と、その間を縫うようにして突き出される剣士の攻撃。
その総てを紙一重に躱すが、如何せん反撃の糸口が掴めない。
斧兵の一撃に討たれるのは時間の問題であった。