第七章:邂逅
「ほう、そちらからわざわざ現れてくれるとは。貴君がレオン・アレストラードだな?」
下衆な笑いを浮かべたまま、指揮官は男に問いかける。
「そうだ」
レオンは剣を構えながら、指揮官に答える。
「ふむ、では質問しよう。貴君の主人であるエアリーズ皇子はどちらかな?」
「答えるわけがなかろう?」
表情は崩さず、剣を構えたままだ。
「まあ、そう答えるであろうな。おい! 其処の三人で、クラウス近くを探して来い!皇子にはまだ護衛がついているやも知れぬ。気を締めて掛かれよ」
「了解しました」
三人の兵士は答え、クラウス方面へ姿を消して行く。
レオンはその場から動かず、現在の状況を確認する。
―…剣兵と斧兵が五人ずつ、槍兵が四人に弓兵三人か。厄介だな―。
「おや?あの三人を追い掛けずとも良いのかな?」
わざとらしく聞く指揮官。その挑発には乗らず、冷静にことばを返した。
「今皇子についている護衛は俺に引けを取らず強いからな。他人の心配より自分の心配をしたらどうだ?」
……一番厄介な弓兵までは十歩か。少し遠いな。
弓矢等投躑による攻撃で敵の動きを牽制し、その隙を剣や斧や槍で討つ。
兵法の初歩の初歩であるが、これを蔑ろにする指揮官はこの大陸には居ないであろう。
何故ならその効果は単純ながら絶大だからである。
それ故にこの様な白兵戦では、弓兵を狙うのが定石なのだ。
しかし、援護に特化した性質上、弓兵は全く前線に出てくる事が無い。
従ってこの場合は、多少のダメージを覚悟に突撃をするか、煙幕の様なもので目眩ましをすれば良い。
「……雷聖ルート。今その名を借りて雷の精に命ずる」
片手に剣を構えたまま、もう片方の手で空中に陣を描く。
「雷の精よ、今我が眼前に立ち塞がりし者達に、汝等の光を炸裂させよ!」
人差し指を兵士達に向け、言霊を紡ぐ。
レオンの前に、白色に光る球体が現れ、兵士達の元へ漂う。
「散!」