第六章:交差する思惑
未だ日が照らさぬ暗い森の中、セスカ聖教国の兵士達はカルミナ帝国を落ち延びた騎士達と、第三皇子エアリーズの探索を続けていた。
強大な影響力を持つカルミナ帝国の皇子を生かしておいてはならない。
皇子が生き延びれば、必ずカルミナの残党や東側諸国が皇子を旗印に反旗を翻すに違いない。
そう考えたセスカ軍は、皇子討伐の為約六百の大軍を編成。二十に部隊を分け、東側の国境付近を封鎖、探索していた。
先程までレオン達を追い、若き騎士達に足止めをされたセスカ兵達は、レオン達を目前で取り逃がしたと言う事実に焦りっていた。
「早く彼奴らを見つけんかぁ! このまま彼奴らを逃しては只ではおかぬぞ!」
一際豪華な鎧を身に付けた指揮官らしき男が、額に青筋を浮かべながら怒鳴る。
そんな中、一人の兵士があるものを発見した。
「隊長!あちらにこんな物が」
そう言いながら、拾った物を指揮官の目の前に置く。
「これは!皇族親衛隊の隊長どもが被る兜ではないか!」
指揮官の目の前に置かれたのは、白銀に輝く兜であった。
「未だこの辺りに潜んでいるやもしれぬ。者ども、十二分にこの辺りを探せ!」
「は!」
三十近くの兵士達が声を揃え応答し、探索を再開した。 周囲を探索していた兵士の一人は、目の前にネックレスが落ちているのをみた。
そのネックレスを拾い上げてみると、銀で出来た鎖に、ルビーが埋め込まれた端目から見てもかなり高価なものであると思えた。
「へへ、こんな良いものを誰にも渡しちゃいけねえわな」
そう呟きつつ、兵士はそれを胸に仕舞い込もうとした。
その時であった。
彼の頭上から、大きな影が落下してきた。
「へ?」
兵士は上から落ちてきた影の正体を確認することも出来ずに、影が繰り出した剣に脳天を貫かれ、絶命した。
ドサッ、と何かが倒れるような音を耳にした兵士はそこに集まる。
そして、その影の正体を確認したとき、彼らの顔からは焦りの色が消え、代わりに下衆な笑いが浮かんでいた。