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第四章:犠牲の果てに

早く、速く、疾く、駿く。


後ろから、地響きの如く迫る轟音。

振り返ると三十もの騎馬が、其処には居た。

その兵達の手や馬の首には若い騎士達の首は無かった。

どうやら無事に逃げ切れた様だ。

大方取り逃がし、死んだ関守を見て囮だったと気付いたのだろう。

騎兵達の顔には焦りの色が見えていた。


しかし、こちらのダメージも大きい。

なにしろ負った傷もろくに手当てせずカルミナから此処まで逃げてきたのだ。


徐々に、レオンともう一人以外の騎士達が離されていく。

そして、逃げ切ることは不可能と悟った三人の騎士は、

「隊長!我らはこれまでのようです。これ以上付いていっても最早足手纏い。故に奴らを

道連れにして参ります!」

悲しき叫びを上げた。


それに気付き、後ろを振り返るレオン。

しかし、三人の姿は無く、只遥か後方から戰人の叫び声が聞こえるだけであった。

「く、グレイ!ウィリー!ジャン!」

手綱を握り締め、馬をかえそうとするレオン。

だが

「お止め下さい兄上!皇子の為に死すのが我らの使命の筈。彼らはその使命を果たした迄

!今戻ろうと意味は在りません! 今は彼らの為にもクラウスに辿り着くこと!違います

か!?」

彼の妹、クリスが嗜める。

「くそぅ!俺にもっと力が有れば…!」

「今は耐えるのです。そして信じましょう!彼らが生き延び、私たちの前に現れることを

紅い唇から紡がれる言葉は、レオンを落ち着かせるのに十分な効果を出した。

レオンがクリスの方を向く。

その整った顔立ちからは、「助けに行きたい」と言う人間としての感情と「騎士の誇りである

」と言う騎士としての理性の葛藤が見て取れた。


そうだ。つらいのは自分だけではない。

いつもの自分ならそう思えただろう。

しかし今は、何人もの命を犠牲にしてでも、皇子をクラウスに送り届けなければ。

今はそれだけを心に、馬を奔らせる。




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