邂逅
何も言えないでいる僕に、シャワーを浴びて着替えるよう翠子は命じた。硝煙の臭いを消すためだ。
言われた通りにすると⸺着替えの服は隆司の私服らしく僕は複雑な気持ちになった⸺翠子は満足したように頷いた。そして連れ立ってリビングに移動し、仲間さんを呼びつけ今に至る。
「後片付けは私が全部引き受けるわ。貴方は何も心配しないで話を合わせて。新しい使用人としてね」
仲間さんが来る直前の翠子の言だ。
心配するなと言われても。僕は頭を抱える。
僕は藤堂隆司を撃った瞬間に自身の人生も捨てたのだ。
はあ、と溜め息を吐く。自害しようにも拳銃は翠子に取り上げられてしまった。
⸺拳銃……
僕は目を見開く。撃った時の衝撃が甦った。血を撒き散らしながら倒れていく隆司の姿も。
腹の底から恐怖が渦巻き全身が震え出す。ひと一人の命を奪ったその重みが、今になってのし掛かってきた。
自分と同じ人種。同じように見、同じように聞き、同じように食べ、同じように触れ、同じように過去があり思い出があり、これからまだ未来があり出会いがあった者。
それを、僕のこの手が全て断った。
なんと罪深くて、恐ろしいのだろう。
連続殺人者はどういう思考回路をしているのか。良心は何処にあるのか。罪に押し潰される事はないのか。僕は、今にも押し潰されそうだ。
硝煙の臭いは、ずっと僕に纏わり続けるだろう。
体の震えは止まらないまま、結局その夜は眠れなかった。




