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邂逅
僕は怯んで後ずさる。覆面をしていないので顔がバレてしまうとか、そんな些末な事を危惧したからじゃない。翠子の目が、僕から事切れている隆司に向く。
⸺駄目だ……見るな!
父の遺体の第一発見者は僕だった。その時の、世界が千切れていく感覚は一生忘れないだろう。胃に氷塊を落とされ力が抜けて視界が真っ暗になる、あれが絶望だと初めて知った。
それを幼い子供に体験させたくはない。罪は父にあり、彼女にはない。自分の父親が殺された現場を目の当たりにして、彼女がどれだけ傷付きトラウマを負うか。それは本意ではなかった。僕は紛れもない殺人者だが、外道に成り下がるつもりはなかった。
僕は蚊の鳴くような声で「すまない……」と詫びる。謝って済むことではない事を重々承知の上で。
しかし。
翠子は⸺笑った。見間違いではなかった。ふふふっと、実に愉快そうに笑った。
思わず口をぽかんと開ける僕を真っ直ぐに見て、その桜色の小さな唇を開き、こう言い放った。
「なぁに? 貴方、その男に何の恨みがあったの?」




