表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Distinction  作者: 雪柳
10/14

真実

 朝8時。僕は内線で翠子に呼び出された。

 ダッシュでと仲間さんには言われたが、寝不足の体は鉛のように重くノロノロと着替える。用意されていた幾つかのサイズのうち、体に見合うモーニングを着て本館へと向かった。


「おはよう。よく眠れたかしら」


 指定のダイニングルームへ向かうと⸺屋敷侵入の際の下調べのお陰で迷わずに済んだ⸺食後だろうか、紅茶を飲んでいた翠子が僕を見て挨拶をした。そして「……今夜はカモミールティーを用意させるわ」とクスッと笑う。そんなに僕は酷い顔をしているんだろうか。


「まぁ、それが普通の感覚なのかしらね。その分じゃ食欲も無さそうね」


 その通りだった。食事などする気分ではない。翠子は上品な所作でカップをソーサーに置くとナプキンで口を拭いた。


「さあ、それじゃ行きましょうか。案内したい所があるの」


 翠子は細い両手をテーブルにつき立ち上がると、流れるようにダイニングルームを出ていった。

 そう言えば、使用人は仲間さんを始め何人か居る筈なのに誰もいない。人払いをしているのだろうか。自室に備え付けられている小型テレビでニュースを少し観たが⸺スマホを持っていないのでそれが唯一の情報源だ⸺隆司や藤堂グループの件は何も報道されていなかった。屋敷の外に報道陣が押し寄せている、ということも無さそうだし、そもそも昨夜仲間さんも何も知らない様子だった。


 問題なく「後片付け」されたという事、だろうか。僕は薄ら寒くなる。

 それもおかしな話だった。彼女は「ただの普通の少女」であるのに。僕は振り切るように、急いで翠子の後を追った。



「礼服、よく似合っているわ。貴方はお顔がなかなか良いものね。お名前の通り誠実そうだし、スタイルも悪くないわ」


 歩きながら翠子は声を弾ませる。心から楽しそうだった。一方の沈んでいる僕は誉められても全く嬉しくない。


「キミは……何故僕を使用人にしたんだ……?」


 長時間出していなかった声は思った以上に掠れてしまったが、翠子には聞こえる距離だ。

実際、翠子は立ち止まり前方を見たまま「言わなかったかしら」と小首を傾げる。


「私に償いをしてくれるんでしょう?」

「確かに僕はそうキミに言った。だが、それで犯罪者の僕を使用人にする事はイコールにならないだろう。やはり少なくとも司法のルールに従うべきじゃないのか。何というか、この状況は……とても変だ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ