第八十三話 静かな戦場
レイナがノワールを倒した時、各地で変化があった。
―ロンのいる戦場にて―
「あっ!?」
ロンが驚愕の声を上げる。
ロンの剣をロンのレベルの低さのおかげで盾で必死に受け止めていたアンデッドが突然崩れ落ち、さらには瘴気がきえさったためだ。
「どういうことだ?」
周りを見渡すと周りにいた数えるのも面倒なほどの数がいたアンデッドが全てただの物言わぬ屍へとなり、さらにはあっという間に朽ち果てていた。
そしてアンデッドは全てノワールの瘴気によって死体がアンデッド化されたものか魔法で召喚されたもののためノワールが死んだ、あるいは追い詰めたということなら納得ができる現象だ。
「やってくれたのか……!」
「勇者様! これはどういうことですか?」
状況をまだ分かっていないディースが話しかけてくる。
「これは……ノワールが倒されたってことだ。」
その戦場には静寂が訪れていた。
―ギルのいる要塞にて―
レイナがノワールを倒した頃、ギルは3体の隊長格のアンデッドと戦っていた。
長めのカトラスを持ったやや軽装の騎士と片手斧とタワーシールドを持った重装備の騎士と長弓を持ったフードを深く被った弓兵の3体であり一体一体が恐るべき強さを持つのに同時に襲いかかられたためギルは必死で防ぐことしかできず防御に全力を注いでいてなお圧倒的不利であった。
致命傷こそぎりぎりで防いでいるが全身に傷を負っており死んでもおかしくない量の血がダラダラと流れ出ていた。
隙を見逃さずアンデッドたちは攻撃をさらに仕掛けてくる。
まずは矢が風をきりながら飛んでくる。
魔法によってホーミング機能が付いているため避けることはできない。
すぐさま槍を振るって矢を迎撃する。
だが槍を振ってしまったことでガラ空きになった部位目掛けてカトラス使いが鋭い突きを放つ。
ギルは体を捻って避けようとする。
胸を守る鎧の装甲がギャリギャリという音を立てながら削られる。
そして避けることを予測していたのか回避方向にいつの間にか移動していた片手斧使いが片手斧を振り上げる。
片手用とはいえ斧なので剣よりも重い。
受け損ねてしまうかもしれないだろう。
ギルはすぐさま状況から判断し、槍を強引に引き戻しながら片手斧使いへ突く。
片手斧使いは片手斧を振り上げようとしていたのを中断してタワーシールドを前面へ出す。
ギルの攻撃ではこのタワーシールドを破壊することも貫通することも不可能なのは確認ずみだが多少はノックバックさせられる。
構わず全力でタワーシールドの中心へ槍を突き出した。
そして槍はタワーシールドに当たり――滑った。
受け流されたのだ。
今までは受け流さずに防いでいたのに手を隠していたらしい。
槍は明後日の方向へ滑っていった。
相手はギルを間合いに捉えると今度こそ仕留めようと斧を高々と振り上げた。
槍では近すぎる間合いで防ぐことも攻撃することもできないしそもそも槍を引き戻す暇は無い。
炎は魔法で対策されており最初っから意味は無かった。
「くっ!」
ギルは目を見開き眼前に迫った斧の鋭い刃が自分に触れるのをなす術なく受け入れる――寸前でピタリと斧が止まった。
「…………ん?」
なんで止まったのかと思った次の瞬間、3体のアンデッドたちから真っ黒な瘴気が浄化されるように消えていった。
周りで遠目に見ていた兵たちからも瘴気が消えていっている。
ほんの数秒経った時、動きを止めていたアンデッドたちは一斉にその場を後にした。
「……一体どうなってんだ?」
そして空を見上げると瘴気で覆われていた空は晴れており、青空が広がっていた。




