第七十八話 先代勇者の誇り
ノワールが復活した時、元勇者のロン、ディース教皇、ドルド将軍などがいる戦場でも変化が起こっていた。
「なっ!? 今の魔力は何だ!?」
魔力を感じ取ることが苦手な人間ですら分かるほどの魔力、もっといえば瘴気がケルグ山脈から流れ出る。
「どういうことだ!?」
その時、アンデッドが吠えるような雄叫びを上げた。
するとつい先程までは愚鈍な動きを繰り返すだけのアンデッドだったとは思えないような素早い動きで戦いだした。
具体的にいえばEランク下位の強さだったのが突然Dランク上位くらいまで跳ね上がったのだ。
「うぐっ!」
「敵が突然強化されたぞ!!」
「こっち援護してくれ!」
つい先程まで膠着状態に持ち込めていた戦況が一気に崩れ始める。
すぐさまドルド将軍が立ち直そうとするがいかんせん、相手が悪すぎた。
一体なら訓練しただけの経験の浅い兵士数人でも余裕を持って倒せる程度の強さしかないがなにせ合計百万は下らないほどの大軍が相手だ。
さらにもう一つ最悪の特性をアンデッド達は持っていた。
「なっ!? 復活した!?」
「くそっ! こいつら聖魔法じゃないと殺せねえみたいだ!」
アンデッド達はケルグ山脈から溢れ出る瘴気を使うことで何度でも蘇っていた。
百万の不死身の兵士が押し寄せてきているということになり、戦況は不利であり現状を維持することすら難しい。
「撤退! 撤退! 聖魔法が使える者を殿にして撤退しろ!」
ドルド将軍もすぐに撤退を指示する。
徐々にアンデッド達が人間の軍を囲もうとしてきており、これ以上遅れれば包囲されると判断したからだ。
「我々が殿である! 時間を稼ぐぞ!」
殿は主に聖魔法を使える勇者教の人間だ。
聖魔法と剣の両方を使える聖騎士などならアンデッド退治はいつものようにしており慣れている。
そして殿部隊はアンデッド達と対峙した。
「俺が先頭でできる限り引きつける! 聖騎士達は抜けてくる奴らを倒してくれ!!」
ロンが元々持っていた剣は全て剣に見合うだけの実力を持った人間に渡すなり国に渡して厳重に保管してもらっているなりしている。
そして今使っている剣はそんな中で唯一誰にも渡していなかった剣だ。
それは白色と金色の片手直剣だ。
この剣は通称、勇者の剣と呼ばれている。
ロンが最も多く使った剣であり魔王討伐の時にも使った剣だ。
別に伝説の聖剣などというわけではない。
ロンがとある名工に作ってもらった剣であり、その名工は生涯最高の傑作だと言った。
勇者の剣は魔導具だ。
付与されている魔法は聖魔法の常時付与、時間経過での自動修復、持ち主の全ステータス上昇という理論上最高の効果だ。
強力な聖魔法が常時付与されているのでアンデッド相手には最高でもある。
「まさかこの剣をまた使うとはなあ。魔王を倒したらもう使わないつもりだったんだが…………最後の戦いだ。頼むぞ相棒。」
そう剣に呟くとアンデッドに斬りかかる。
全ステータス上昇のおかげで低レベルでも敵の攻撃にしっかりと反応できる。
反応さえできれば戦闘経験豊富なロンにとっては愚直に突っ込んできては武器を振り上げては叩きつけてくるだけのアンデッドなどただの有象無象だった。
「レイナやギルのもとにお前らを行かせるかーーー!!」
そう叫びながらアンデッドの大軍の中に突撃したのだった。




