第七十五話 城攻め
人類が必死で足止めしている頃、レイナとギルはついにノワールのいる要塞へと迫っていた。
「おい。」
「…………。」
「おい!」
「えっ!? な、何!?」
「もうそろそろ要塞に着くぞ! …………どうした?」
「いや、何でもない……。」
その時、レイナは夢について考えておりノワールとレイナの祖先でありカタナの元の持ち主であると思われる人間の2人の関係についてを特に考えていたのだ。
上の空になっていたレイナに訝しげな表情になったギルだがとあるものが視界に入るとそちらに目を向ける。
それはノワールがいる要塞だった。
「あれが……。」
ギルが要塞を見ながら声を漏らす。
要塞を見てレイナも思考を切り替える。
あの夢がなんであろうと今は人類に仇なす敵を倒さなければならない。
もしこの場にロンがいれば要塞が1年前と大きく違うことに気づいていただろう。
1年前までは戦争の跡が残りボロボロだった廃墟のような要塞は誰がどう見ても難攻不落と断言できるような大要塞へと変貌していた。
崩れていた城壁は土魔法や結界で補強され、城壁の下には防護柵や落とし穴が掘られ、鋳鉄の扉は完全に閉められ、さらには城壁の尖塔の上にバリスタや投石機などが設置されている。
もしノワールが復活してからのたった数日でこれを作ったとしたらとてつもないことだ。
それらについ感嘆していると要塞から警鐘の音がけたたましく鳴った。
「バレたね。」
「もうかよ……速すぎんだろ。」
おそらく敵の気配を感じ取るスキルなどを持っている兵士がいるのだろう。
すぐさま城壁の上のバリスタなどがこちらへ狙いを定め始めている。
「行くよ!!」
「おおっ!!」
2人が一斉に走り始める。
ギルは魔導具の槍で炎を出してステータスを上げておく。
悲しいことにギルは勇者候補と言われた3人の中で一番、速度のステータスが低いのだ。
それをスキルで無理矢理補いながらレイナに並走する。
その時、さすがの早さで素早く装填されたバリスタや同時に十発以上の矢を放てる固定型の弩弓が一斉に発射された。
バリスタの銛は当然ながら矢のほうも足に突き刺さり歩けなくなれば集中砲火を食らうのでどちらも避けなければならない。
だが今回はギルがいた。
「おらああぁぁ!!」
ギルが纏っている炎が矢を全て焼き尽くしているのだ。
バリスタの銛はさすがに無理だが矢ほど数は多くないのでそれは槍で叩き落とす。
レイナはギルの炎に当たらないくらいの距離を保ちながらギルの後ろについて行く。
防護柵なども設置されていたが木製の防護柵なら灰にしながら進むことができた。
だがしばらくすると敵のほうから微量な魔力が大量に現れた。
すると大量の矢が飛んでくる。
全てただの矢では無いようだ。
どうやら全てに魔法が込められているらしい。
つまりは一本一本が魔導具の一種なのだ。
魔導具の条件として魔法に耐えられる器が必要だ。
つまり今飛んできている矢はかなり上質な素材なのだろう。
ギルが咄嗟に矢に向かって炎を浴びせる。
だが驚いたことについ先程まではもっと火力が低くても燃えていた矢は燃えることなくギル目掛けて飛んできた。
魔法で炎に対しての耐性を矢につけたのだ。
仕方なくギルは槍で矢を叩き落とすがさすがに数が多く、何本か体に受けてしまう。
軽装のレイナなら危なかっただろうが幸いにもギルは高品質の装備を着込んでいる。
とはいえさすがにフルプレートメイルではないので装甲が無い部分があり、そこに矢が命中してしまえばかなりまずいことになる。
「大丈夫!?」
「ああ、まだ大丈夫だ。この鎧を矢は貫けないみたいだからな! ひとまずは俺が前で受け持つ!」
「分かった!!」
その頃、城壁の上ではもう一度一斉射撃をしようと弓を構えた。
弓に魔導具の矢を番え、引き絞り、そして放った。
「うぐっ!!」
ついに矢の一本が鎧の隙間に突き刺さった。
レイナはロンから貰ったスキルで無理矢理強化した回復魔法でギルを回復させる。
だがさらにもう一度一斉射撃がきた。
怯んでいたギルにさらに二本の矢が突き刺さる。
レイナがさらに回復魔法をかけた。
ギルも魔力を全力で槍に投入することでステータスをどんどん上げる。
だがすぐさまさらに矢が飛んでくる。
その後も矢は放たれ続けたがギルは足を止めることは無く、地道に歩き続けついに扉まで辿り着いた。
「魔力切れだ……しばらくは動けんから後はよろしく…………。」
そう言うとギルはばったりと倒れた。
死んでいるわけではなく本当にただの魔力切れなようだ。
「任せて。」
レイナは力強く返事をするとカタナを抜き、門の扉に剣を叩きつけた。
鋳鉄の扉は次の瞬間には冗談のようにすっぱりと斬られ、崩れ落ちていた。




