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神話の戦士と今の勇者  作者: サン
最終章 堕ちた英霊

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第六十九話 白の波

予想外の早さでの復活に対して人類の対応は迅速だった。

予想外で奇襲のような形であったにも関わらず復活の3日後にはケルグ山脈の麓付近に軍隊が布陣して万全の構えとなっていたのは褒めるべきことであろう。


だが不安もあった。


「…………本来なら1年の準備期間の間に用意するはずだったのに全然準備がされていないよ……。」


レイナが愚痴をこぼす。


「そうは言っても仕方ねえだろ。というかそれよりもさ……不気味じゃないか?」

「まあね……3日経ったのに未だに攻めてくる様子も無いし……。」


封印が解けてから3日。

未だにノワールはまったく動いていなかった。

封印から解放されたならすぐに暴れ出すと予想していたばかりに肩透かしをくらった気分だった。


「まあ時間をかければ砦や陣地を構築していくからこっちのほうが有利なんだけどな……。」

「一体あっちは何をしているんだろうね。」

「さあな。」

「けどあっちの陣営はヴィヨレやヴェール、その配下とかを考えたら戦力の三分の二を失ってるけどこっちは全体で見たら被害は最小限だから普通に考えればこっちが優勢なんだよね……それをあっちが理解していないわけもないだろうしどうするつもりなんだろ。」


その時、スキルによって視力が強化されたレイナの目がケルグ山脈に立ち昇る雪煙を捉えた。


「ん? なんだろあれ。」


雪煙はかなり広範囲に広がっているらしい。

しかもかなりのスピードで拡大していっている。

魔力が微量ながら含まれているため魔法で間違いないだろう。


ギルも広がりつつあるかすかに見える雪煙に気づいた。


「あの雪煙…………魔法、だよな?」

「そうだね。……なんか嫌な気配がする。」


レイナがそういったまさにその瞬間、雪煙の中から魔法ではないあくまで別の魔力の反応が出てきた。

魔法ではない魔力ということは魔力を持っている魔導具や物質、もしくは生き物だ。


「まさか……!」


レイナがようやく雪煙の中にいるナニカを悟った時、雪煙の中の魔力反応が急激に数を増やした。

魔力感知が苦手な人間でも分かるほどの数だ。


「敵襲! 敵襲!」


すぐに大きな声を張り上げて知らせる。

見張り台の兵士も警鐘を狂ったように鳴らし続ける。

今日は非番で休憩していた兵士達も慌てて装備を付けていく。

ドルド将軍もすぐに指揮を始めた。

よく通る声で命令を出していく。


「すぐにでも敵の第一陣の騎兵隊が来る! すぐに陣形を整えよ!」


慌てて戦闘態勢に移っている間に雪煙の中から大量の敵が、現れた。

だがそれは馬に跨る黒い騎兵でも槍や盾を持つ歩兵でも黒いフードを着た魔法兵や弓兵でも無かった。


「それは白い波だった。」

この戦いに参加したとある兵士は後に日誌にそう書き残している。


雪煙から現れたのは雪国の魔物特有の真っ白な毛皮の獣達だった。


狼、山羊などの代表的な雪国の魔物以外にも数々の獣が雪煙から次々と途切れることなく現れた。

ケルグ山脈に生息するありとあらゆる魔物が来ているのだろうか。


その光景はまさしく絶望的と言える。

レイナやギルはもちろん、経験豊富なドルド将軍ですら手を止めて呆然としてしまうほどには圧倒的な数だ。


とはいえいつまでもそんなことをしているわけにもいかない。


「っ! 何を呆然としてる! すぐに敵が来るぞ! 槍隊は前へ! 盾隊もだ! 魔法隊と弓隊も配置に付け! 手が空いてる者は薬と弓兵用の矢をありったけ持ってこい!」


ドルド将軍の声でようやく兵士達も我に返って動き始める。


訓練通りの動きで全部隊が配置につく。


その間に足の速い魔物はすでにかなり近くまで迫っていた。


「魔法隊! 詠唱開始! 足止め最優先! 弓隊は撃ち方用意! 近くまで引きつけろ!」


人類が構築した陣地には対騎馬兵用の防護柵と落とし穴、魔法によるトラップが設置されているがあの大群にはそれも大した効果は出ない。


「魔法、放て!」


足止め用の魔法が魔物の大群の先頭付近で発生する。

茨や泥濘ができ、多少なりとも勢いが落ちた。

それと同時にドルド将軍がさらに号令を発する。


「弓隊! 撃て!!!」


一斉に雨のように矢が飛んでいき、大群の先頭集団に命中する。


運の悪い魔物は頭に鉄の矢をくらい、即死し、運が良くても矢の数が多いため体のどこかには当たっている。

だがそういった魔物は全体から見ると極小数だ。


死体や傷を負って苦しむ魔物を踏み越えて途切れることなく魔物達は前進する。


そんな光景に恐怖しながらも人類は迎撃の手を止めずに魔法と矢の雨を降らせるのだった。

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