第六十八話 崩壊の音
ヴェール、ヴィヨレ討伐からしばらくして、人類は残った全戦力をギルス砦へと集結させた。
その中には当然レイナとギルの姿もあった。
だが2人ともぼ〜っとしており緊張感の欠片も無かった。
ちなみにロンはステータスが急激に下がったためなのか体調が優れず、回復魔法の得意な勇者教の人間に任している。
「……ノワールっていつ封印が壊れるんだっけ。」
ギルがふと思った事を言う。
「1年後…………。」
「はあ〜〜〜。」
ギルが大きなため息をつく。
「何で1年も待たされるんだろうなぁ……。」
「さあ…………何でだろう……。」
「本当に1年なんだよな?」
「うん。勇者様が言ってたよ。封印をかけた本人だしほぼ間違いないだろうね……。」
それを聞いてギルがもう一度ため息をつく。
「はあ〜〜〜。……まあ訓練できるし準備期間は長いほうが断然いいからまあ別に悪くは無いんだけどさあ…………なんというか勢いが削がれるというか……はあ、まあ訓練に戻るか。」
「そうだねぇ……。」
2人は立ち上がると訓練へと向かって歩き始めた。
その時、ケルグ山脈方面から膨大な魔力を感じ取った。
2人とも同時にケルグ山脈方面へ振り返る。
「……なあ、今のって……まさか。」
「いや、さすがにそんなわけ……勇者様はあと1年はあるって言ってたはずだけど……。」
「けどあの魔力……明らかにただの魔法や魔物で出てくるもんじゃねえよな。」
2人はロンから継承したスキルのおかげで感覚も一部だが強化されているため魔力を遠くでも鮮明に感じ取れたが周りの人間は何となく違和感がした程度なのか不審には思っているようだが焦っているような感じは無い。
「お二人ともどうしました?」
傍から見たら挙動不審のレイナとギルへ兵士達の部隊隊長が話しかける。
「たった今、ケルグ山脈の方角から膨大な魔力が放出されたみたいだ。」
「ええっ!? それはまさか……封印が?」
「ああ、多分だけどな……。」
「ひとまずすぐに調査くらいはしたほうがいいね。」
「同感だ。すぐに調査部隊を送るように上層部……特にドルド将軍に今すぐ伝えてくれ。」
「了解しました。」
部隊隊長が慌てて走り去っていく。
「一体、どうなってんだか。」
「…………ひとまずいつでも出撃できるようにはしとこうか。」
「そうだな……。」
―その頃、ケルグ山脈にて―
「何だ今の魔力は!?」
ケルグ山脈に設置されていた前哨基地では近かったのもあり当然、突如として出現した膨大な魔力を察知していた。
さらにはケルグ山脈からガラスが割れたような音が聞こえてきていた。
「今の音……封印が解けたのでは?」
「そんな馬鹿な!?」
「ですがそれ以外にあり得ません!」
「まだ1年経ってないぞ……ひとまずギルス砦に伝えてこい! そしてここらの村に避難指示だ!」
「りょ、了解しました!」
前哨基地にいる駐屯部隊の隊長の指示で兵士達が一斉にそれぞれの仕事を始めた。
―その頃、とある都市の勇者教の教会にて―
この大きな都市の教会ではロンがディースによって治療されていた。
「いやあ〜。勇者様を直接治療できるなんて今日はとても良い日だ!」
「はあ〜。こいつが一番回復魔法が得意なばっかりに…………っ!?」
突然、様子がおかしくなったロンにディースが訝しげな視線を向ける。
「勇者様!? 一体どう――」
「ノワールが復活した。」
ディースの声を遮るようにしてロンが声を低くして言う。
「なっ!?」
「間違いない。今の魔力……スキルが無くても何となくだけど感じ取った。あの量からきてノワールが復活した。」
「ですがまだあと1年はあるはずでは?」
「まあ、相手が相手だから時を読み間違えた可能性はある……けどにしてもこんな早いなんて………………嫌な予感がするな。」
ロンは遠くにいるレイナとギルを思い浮かべ、2人の無事を祈るのだった。




