第六十三話 一つの戦場の集結
ヴェールとの戦いの第二ラウンドはギルという援軍のおかげで第一ラウンドとは比べ物にならないような状態だった。
ロンだけでもヴェールの攻撃を完封できていたのに相性的にヴェールの天敵とも言えるギルが来たからには最早勝負は決まりきっているのだ。
だがそれでもヴェールが未だにやられていないのには理由があった。
元々唯一の不確定要素でもあったあの回復だ。
致命傷を負おうが全身が燃やし尽くされようが復活するのではどうしようもない。
回復を繰り返すと回復の効果が落ちるのだろうと予想していたがそういうわけでもなくそれどころか最初よりも回復量が多い時すらあった。
ランダムなのか何か条件があるのかが分からない以上どうしようもない。
なので何が何でもそれを探し出さないといけないのだ。
さらにもう一つ不安なことがあった。
「うぐっ…………。」
「ギル!? どうした!?」
「俺が飲んだ薬は本来は少しずつ長い期間をかけて飲まないといけないものだったのに無理矢理一度に飲んだから副作用が…………大丈夫だ。しばらくは全力で戦える。」
「分かった……。」
(短期決戦をしないと副作用で不味くなる一方だろうな……。)
強力な援軍ではあるが長期戦になれば危険だ。
どうにかして短期間で勝たなければならない。
(どうしたらあの回復を止められる。魔力の気配も無いし恐らくスキルだろう。だが無尽蔵に蘇生するスキルなんてあり得ない。勇者のスキルですらそこまで万能じゃない。勇者のスキルも即死から免れることがどきるがこれは低確率だ。だけどヴェールは百%……何か必ずタネがどこかに……。)
その時、またヴェールがギルによって致命傷を負った。
ロンは回復魔法を自分へかけていたがその時、とあることに気づいた。
回復魔法の効果がほんの一瞬だけだが低くなったのだ。
ごく僅かだがしっかりと分かった。
(まさかヴェールのスキルは!)
「ギル! ヴェールのスキルの条件が分かった! 恐らく周りから魔力を取ってそれで回復するスキルだ!」
それを聞いてヴェールが隠しきれないほど動揺した。
どうやら図星らしい。
「よく分かったものだ。」
「そらゃあ俺だって勇者っていう魔法のスペシャリストだからな。」
「貴様の予想通りだよ。スキル『輪廻』。周りの魔力がある限り私が死ぬことは無い。分かった所で貴様らに何ができる?」
「お前は魔力を使って回復している。それなら魔力を無くせばいいだろう!?」
「…………さすがに勘の鋭い奴だ!」
「ギル! ヴェールをしばらく足止めしてくれ!」
「やってやらあ!」
すぐにロンは魔法の詠唱を唱え始めた。
みるみる巨大な赤色の魔法陣が形成されていく。
本来なら魔法は魔力をできる限り使わずにできる限り威力を上げるように工夫をするのだが魔力を無くすことが目的ならコスト度外視で撃てばいいのだからなんなら普通にやるよりも楽だ。
「おのれ! 邪魔するな!」
「勇者には近づけねえよ!」
ヴェールも必死で止めようとするがギルがことごとく妨害する。
そして魔法陣は完全し、強力な炎魔法が飛んでいった。
だが内心ではヴェールは笑っていた。
(馬鹿め! 魔法を使った所で魔法は使用後にその場に魔力を放出する。そんな基礎も知らんのか! その放出された魔力で回復すればいい!)
だがロンはヴェールにニヤリと笑うとギルへと魔法を向けた。
ヴェールが驚愕した時にはギルに巨大な炎魔法が炸裂した。
ギルのスキル『炎衣』の効果は火炎無効と自分が触れている炎の温度が高ければ高いほどステータスが強化されるというものと鍛えたことで自分が触った炎を操ったり纏うことができるようになった。
当然、戦っていたヴェールも火炎無効には気づいていたがステータス上昇も炎の操作もわかっていなかった。
なのでヴェールからすると炎魔法が炸裂したはずなのに何故か魔法が使用後の状態、つまり魔力にならずその場にとどまり続け、それどころか火力が上がりそのまま自分へ目掛けてつい先程よりも格段に速くなって突っ込んできたことになる。
あきらかに即死するであろう火力だ。
ヴェールはすぐさま全力で防御する。
攻撃のために出現させた樹木の蛇も壁にして、さらには炎対策に水分を多く含んでいる種類の植物をできる限り生やす。
それに防御結界も何重も張る。
攻撃をしている暇も余裕も無いと判断したのだ。
「おりゃあああぁぁぁ!!」
そして植物と炎を纏っているギルが衝突した。
そして植物が一瞬で燃え尽きる。
水分を含んでいるので火力が少しくらい落ちるかと思ったが水分など一瞬で蒸発したようだ。
防御結界はなんとか持ちこたえている。
「こっちも忘れるなよ!」
炎と防御結界の押し合いにさらに炎が追加される。
ロンはヴェールが防御で手を離せないと踏んでヴェール本体へ攻撃したのだ。
ヴェールは全方向へ防御結界を張っていたため本来は何の意味も無い。
だが死角からの突然の攻撃に反応せずにはいられない。
ヴェールがつい一瞬だけそちらへ意識を向ける。
その一瞬でギルの炎が防御結界を突き破るには十分だった。
「しまっ――」
ヴェールが視線をギルへ戻した時には目の前に炎が迫っておりヴェールが悲鳴を上げる間も無く炎はヴェールを飲み込んだ。
そしてその炎の中でギルの槍はヴェールの心臓を貫いていた。




