第六十二話 駆けつけた新星
昼に始まったヴェールとロンの戦いは夕方まで続いていた。
お互いがほとんど傷を負っておらず戦況は全く動いていなかった。
つい先程までは。
ロンはあくまでも人間なのだ。
疲れもするし空腹もあるし魔力切れもあるし集中力も無くなってくる。
段々とそういったことで動きが鈍くなっていっていた。
(どうする? いよいよ後が無い。これ以上長引いたら反撃のチャンスも無くなる。これが最後のチャンスだ。どうやったら倒せる。どうやったら…………。)
だが先に限界が来たのはヴェールだった。
ずっと続けていた魔法での猛攻が一瞬だが止まったのだ。
どうやらヴェールはロンよりも戦闘経験が少なかったようだ。
長生きはしているものの封印されていた期間もあるし互角かそれ以上の強さの相手との戦いは慣れておらずきっと今までは圧倒的な物量で強引に叩き潰していたのだろう。
そのチャンスを歴戦の剣士でもあるロンが見逃すわけもなく一瞬で近づく。
ヴェールは慌てて植物を壁のように生やして防御しようとするが勇者の剣撃がただの植物ごときで防げるわけが無い。
魔法は相性の問題で防がれたが単純な物理での攻撃に相性も何も無いのだ。
「っ!」
だがロンは咄嗟に立ち止まって距離を取った。
その時、植物の壁を突き破るように樹木の蛇が飛び出してきた。
植物の壁で死角になっている場所で魔法を使ったのだろう。
もしそのまま突っ込んでいればギルの二の舞になっていただろう。
「そう簡単にはいかんか……。」
「あの戦争を経験したんだからこれくらい対応できて当然だよ……。」
距離を取りながらもう一度集中している状態にして改めて仕切り直す。
その時だった。
突然ヴェールが何故か慌てて植物の防壁とさらには咄嗟に出したことで弱めだったとはいえ防御用の結界までもを張りロンの背後からヴェール目掛けて炎の塊が飛んできた。
その威力は凄まじく植物の防壁は元々無かったかのように貫き、防御結界も割ったのだ。
その時点でもいくらヴェールが魔法をあまり警戒していなかったとしても上々の結果だと言えるだろう。
だが炎の勢いは収まらずヴェールを飲み込んだ。
つばを飲み込みながらそれを見ていると炎の中から一瞬強烈な光が輝いたと思った次の瞬間、炎が掻き消えてヴェールが立っていた。
だが満身創痍だ。
所々に重度の火傷の跡がある。
どうやら例の回復らしいが完全には回復していないらしい。
「そんな馬鹿な……何故貴様が……!」
ヴェールの困惑の声を聞きふと後ろに振り返って見てみるとそこには毒で苦しんでいるはずのギルが立っていた。
「英雄は遅れてやってくる!」
ギルがそのように言っているがそれに対してツッコめるほどロンは冷静ではなかった。
ヴェールは困惑しているしロンは驚愕していた。
「ギル!? 何故!? 毒は!?」
さすがのロンでも驚愕を隠せず驚きの声をあげる。
薬でも魔法でも治せなかったのにどうやったのかと困惑しているとギルが答え合わせをしてくれた。
「それがとある貴重な薬が偶然この毒に効いたんだ! 効果が遅れてやってきたみたいだからちょっと遅れたぜ!」
それを聞いていたのかヴェールがますます困惑する。
「そんな馬鹿な! あの毒に効く薬などあるわけがない! だがまだあの毒に冒されているなら強烈な苦痛があるはず。そんな状態では無いというなら本当に治ったのか!?」
「そういうことだ! フッフッフ。俺様が来たからには形勢逆転だぜ!」
「…………いろいろまあ聞きたいことはあるけどもひとまずはヴェールを倒すぞ!」
こうして新たな増援を得てヴェールとの戦いの第二ラウンドが始まるのだった。




