第六十一話 精霊と勇者の激闘
しばらく魔物を倒し続けていると案の定一部の魔物が逃走を始めた。
統率も取れていないただの獣の群れなどそんなものだ。
それも上官に忠誠を誓っているわけでもない兵士が。
「さて、ついにリーダーか。」
魔物の群れの奥に見覚えのある魔物がいる。
相変わらず膨大な魔力を纏っており疑いの余地もなくヴェールで間違いない。
「やっと来てくれたか。」
「…………少しでも魔力を削って疲れさせようと思ったのだがな。ほとんど効果は無かったか。」
「部下をそんなふうに使うなんて酷い上官なものだ。ドルド将軍を見習ってほしいね。」
「私はそのドルド将軍とやらを知らん。興味もない。私達があとすることは殺し合うことだけだ。」
そう言うと5時間前と同じようにそこら一帯の地面から木の根が飛び出してくる。
予想できた攻撃なので剣で切り落としたりどうしても無理なら炎魔法で燃やすことで対処した。
するとロンに攻撃の隙を与えたくないのかヴェールがすぐに次の攻撃へ移る。
葉っぱを刃のようにする攻撃だ。
「芸が無いね。それは5時間前に見たばっかだよ!」
葉っぱは木よりもさらに燃えやすいので炎魔法で一瞬でかき消した。
「ならば新しい攻撃にしてやろう。」
そう言いながらヴェールがまた広範囲の大規模な魔法を発動させる。
荒地だった地面からあたり一面を埋め尽くすほどの量の野花が生えてきたのだ。
ロンが首を傾げると野花が一斉に花粉のような物を放出し始めた。
「うげっ! だから毒はヴィヨレだろ!」
そう言いながら風魔法で花粉を吹き飛ばすが常に花粉は出ているようなので風魔法でかなり頻繁に飛ばさないといけない。
一応毒耐性のスキルはあるが念には念をこめておいたほうがいいだろう。
すると野花の隙間を縫うようにして蔦が生えてきた。
蔦はロンに巻き付こうとしてくる。
どうやら足止め用らしい。
わざわざ残しておく意味も無いのでさっさと燃やす。
ぱっと見は緑豊かな平原に炎を放ってる酷い奴にしか見えないが誰も見てないので問題は無いだろうと思いながらロンは燃やしていく。
そして隙を見てヴェール目掛けて魔法を飛ばす。
発動も弾速も速い雷魔法だ。
だがヴェールに着弾する直前で突然地面から出現した物体に阻まれた。
「竹!?」
どうやら竹で防御したらしい。
魔法の力と元々の成長能力が相まって植物とは思えない速度で成長したようだ。
「これならどうだ!」
ロンは毒魔法を飛ばした。
普通の木なら腐り落ちだろう。
だがこれも違う物体に防がれた。
毒に汚染されている地域に育つ種類の木のようだ。
「マジか……。」
その後もそれぞれの魔法に合わせた植物を生み出すことで全ての魔法を防御してみせた。
(これは魔法は近距離から使わない限り効かないな。剣で斬ったほうが速いか……?)
そこからしばらくヴェールの攻撃を耐えしのぎ隙が少しでもできたら反撃する、ということを繰り返したが一向にダメージを与えられている感じがしなかった。
(せめてもう一人強い人間がいれば……ギルは毒で動けないしレイナとミネはヴィヨレ戦だ。もしレイナとミネがヴィヨレを早めに倒しても海を渡るのには時間がかかる。ギルがかかってる毒は魔法で生み出された物だから魔法を使った本人とヴェールが死なないと消えないだろうし……まずいな。かなりピンチだ。幸いなのはヴェールもヴェールで決め手に欠けているから全然粘れるということくらいだな……。)
この戦いはその後もお互いが新たな手を打ったりするもののお互い完全に防いでしまうため長時間に渡って続いたのだった。




