第五十四話 炎の地獄
ヴィヨレとの戦闘が始まって1時間ほどたった時、ヴェールとの戦闘も始まりかけていた。
「戦闘用意! 封印が解けるぞ!」
ロンは武器の手入れを中止して配置につく。
「さて、ついに始まるのか。……長かったな。」
ロンが独り言を呟いていると後ろから足音が聞こえた。
振り向くとギルがいた。
「ギルか。どうした?」
「…………俺、ちゃんと戦えると思うか?」
「ギルらしくもない。大丈夫さ。君は既に俺と同じくらい強いから。」
「そうか。…………なんか複雑な気持ちだな。数カ月前にボコボコにしてきた奴にそう言われるのは。」
「ハハハハ。そうかもな。…………始まるぞ。」
その時、森の奥の方からガラスが割れたような音がした。
「あれだけ完璧な結界でも消える時はとてもあっさりなんだな…………。」
「というかそういえばなんか作戦があるらしいけどどんな作戦なんだ?」
隊長クラス以上の階級の人間やロンは戦闘が始まる前にとある作戦を聞いていた。
作戦名は『インフェルノ』。
「見てからのお楽しみ。」
「う〜ん…………まあいっか。」
その時、作戦開始の合図の角笛の音が響いた。
それを聞いて指揮官達も声を張り上げる。
「作戦開始だ! 魔法部隊は全員詠唱開始!」
各国から集められた炎魔法の使い手達が一斉に炎魔法を発動させた。
炎魔法は真っ赤に燃え盛りながら樹海へと飛んでいき森という大きな的に外すわけもなくきっちり命中した。
その次の瞬間、樹海が大炎上した。
「ん!?」
ギルが驚きの声をあげるのも仕方がなかった。
なぜなら魔法自体はそこまで上位の強力な魔法ではなくあれだけ炎上させるのは不可能だからだ。
すると樹海で今度は爆発があちこちで起きる。
「んん?」
ギルが首をかしげているとますます爆発が連続して起きる。
「んんん??? 一体何が起きているんだ…………?」
ロンがギルの困惑ぶりを見て答える。
「あれはね、あらかじめ樹海に可燃物を大量に仕掛けておいたんだ。」
「ええ……?」
「油や火がつくと爆発するものとかを置いてるんだよ。さすがに奥地のほうには置けなかったけど樹海の外周部分には置いてるんだ。」
「めっちゃ燃えてる…………。」
どんどん火が燃え移っていき樹海が灰になっていく。
樹海を全て飲み込む勢いだ。
魔物の悲鳴も時々かすかに聞こえる。
しばらくするとさらに誘爆してそれと同時にさらに魔物の悲鳴があがる。
「このままいければいいんだけど……っ!? 退避!」
ロンが突然、警告の声をあげた。
次の瞬間、地面から大量の木の根が飛び出してきた。
一つ一つが、先端が尖っており槍のようだ。
ギルはロンの声ですぐに避けれたが周りの反応の遅れた兵士達は根によってかなりの人数が貫かれた。
「はあっ!? なんだこりゃ!」
「ヴェールの魔法でしょ!」
「こんな範囲広いのかよ!?」
人類側の戦力は12万だがその軍団ほぼ全てが魔法の被害にあっていた。
一箇所に密集してるわけではなくある程度散らばっているのにその全てを魔法の影響下に置けるほどの攻撃範囲なのだ。
それは都市が一つ丸々入るほどの範囲だった。
あちこちで根に貫かれたが即死はしなかった兵士が悲鳴をあげる。
「助けて! 助けて!」
「うわあああぁぁぁ!! 足が! 足が!」
「大丈夫か! 畜生! 早く回復魔法を使えるやつ呼んでくれ! こっちのやつはかなりの重傷だ!」
「手が足りねえ!」
「他の陣地から増援呼んでくれ!」
「他の陣地もどこもやられてる! どこも怪我人が多すぎて人手は余ってない!」
戦場に慣れていないギルは顔を顰めているがロンは魔王との戦争のせいで慣れているのだ。
「大丈夫か?」
「……一切問題がないわけじゃねえけど南大陸出身だからな。戦いに影響は出ねえよ。」
南大陸は魔王や魔族との戦争が数百年の間に何度もあったのだ。
つまり南大陸の街というのは全て戦争の最前線であり魔族との、戦いとまでは言えない小競り合いがしょっちゅう起こっていた。
だから多少怖がることはあれど戦いには影響しない。
「じゃあ早く決着をつけよう。これ以上この魔法を連発されたら全滅しかねない。」
「ああ。」
2人は悲鳴が飛び交う中、燃え盛る樹海へと走り出した。




