第五十話 輝く二つの星
蠍達が結界魔法で身を守りながら進んでくるというのは予想以上に厄介なものだった。
ミュージシャンスコーピオンはとても小型の魔物で50cm程度しかない。
魔物の中では最小クラスの小ささだろう。
だがその見た目からは想像できない優秀な魔法の使い手だった。
結界魔法をアレンジしているのか魔法にたいしての耐性が異常に高まっており、元々頑丈なエルダースコーピオンは凶悪そのものだった。
「駄目です! もうほとんど距離がありません!」
「畜生! あそこまで硬いなんて!」
「魔法耐性の高い結界魔法を使っているのかほとんど効き目がない!」
「魔法部隊を後ろに下げろ! 近接部隊と交代だ!」
指揮官達の怒声が響き訓練通りにスムーズに陣形を変えた。
「近接部隊、抜剣! 突撃用意!」
魔法が効かないため物理の近接武器を使うしかなく、近接部隊を前にした陣形にした。
「必ず生き残ろうね。」
「もちろん。」
レイナとミネも近接部隊なので先頭に来た。
するとレイナとミネがいる場所付近の傭兵の部隊の隊長が部下達に何かを言っていることに気づいた。
「お前ら! すぐそこに勇者候補のお嬢様方がいるぞ! いいとこ見せてやれ!」
「オオオォォォーーー!!」
何を言っているかを理解して2人は顔を見合わせて苦笑するがすぐに気を引き締め武器を構えた。
勇者候補になるほどの実力者がいるというのは普通の兵士からするととても安心出来ることなのだろう。
もうほぼ目の前まで蠍の大群が迫っているというのに士気は最高だ。
その時、ついに指揮官が号令を下した。
「突撃ーーー!!」
一斉に全ての部隊が動き出し、蠍の大群と激突した。
レイナもすぐに目の前の蠍を獲物に定めて飛びかかる。
その蠍が大きな鋏でレイナを捕らえようとする。
それをレイナは避けながら剣でその鋏を切り飛ばす。
突然腕の先が無くなったことを認識して悲鳴を上げようとしている間にさらに追撃を加えられてその蠍は絶命した。
すると二匹の蠍が同時にレイナへと飛びかかった。
レイナは片方の攻撃を避けつつもう片方の蠍にはカウンターを叩き込んだ。
飛びかかったために勢いがついていた蠍にカウンターが完璧に刺さり眉間に剣を突き立てられてその蠍も絶命する。
突き立てた剣を抜きながらその勢いのままレイナに攻撃を避けられてしまったほうの蠍へと剣を振り蠍の両腕が切り飛ばされる。
その蠍にしっかり止めを刺したことを確認して周りを見渡してみると人間と蠍が入り混じる乱戦になっていた。
さらに気づいたのは思っていた以上に人類が有利だということだ。
常に数人で囲んで殺しているためエルダースコーピオンなどの上位の魔物が相手でもうまく立ち回っていた。
訓練が活きているのだろう。
だが普通の人間では手が出せない相手もいるようだ。
「ヴィヨレの子供がいるぞー!」
「手練れを呼んでくれ! とてもだが手が出せねぇぞ!」
「だ、誰か助けてくれ!」
数カ月前にレイナが遺跡の奥で戦ったあの蠍と同じ種族だ。
あの時点でレイナは十分手練れの剣士と言える強さだったのだ。
そんなレイナが苦戦した相手に普通の兵士が勝てるわけもなく鎌できり裂かれてしまった兵士が倒れていたりと悲惨な状況になっていた。
すぐにレイナは走り出しその蠍へ近づく。
蠍は数カ月前に見たのと同じように鋭い鎌で人間の首の高さで薙ぎ払った。
首を跳ね飛ばそうとしているのだろう。
それをレイナは体を低くして避けながら素早い動きで走り寄る。
そして蠍の体の下に一瞬で潜り込み硬い殻の隙間を狙い剣を突き刺した。
致命傷にはならなかったものの剣を体に突き立てられて無事なわけもなく蠍は血を流しながら苦しんでいる。
その痛みで怒り狂ったのか暴れ出そうとした時、ビクッと体が震え、倒れてそのまま動かなくなった。
レイナが不審に思うと蠍の急所に投げナイフが深く刺さっていた。
その投げナイフには見覚えがあった。
ミネの投げナイフだ。
どうやら投げナイフで急所を貫いたらしい。
スキル『無情』のおかげで堅牢な殻を小さな投げナイフでも貫けたらしい。
つい先程からミネの姿が見えないが気配を消して『無情』を使った攻撃で急所を貫いて殺して回っているようだ。
レイナは頼りになるが敵にまわしたら恐ろしそうだなと思いながら次の獲物へと武器を片手に突っ込んでいった。




