第四十九話 神話と今の激突
ロンとノワールが遭遇して1年。
ついに七色の魔物の内の3体との戦争が始まる日が近づいていた。
既に封印は限界でいつ壊れるかは分からない。
封印の結界の魔力の残量から考えると今日中には壊れるということだけが分かった。
「ついに始まったちゃうのか……。」
レイナが独り言を呟く。
レイナはこの戦争がどうなるかを考えていた。
その時、後ろから誰かが話しかけてきた。
「どうしたの?」
「ん? 誰かと思ったらミネかぁ。驚かさないでよ…………この戦争がどうなるかを考えていたの。」
「そう……けど考えてもそんなこと私達には分からない。」
「まあね。けど考えられずにはいられないじゃない?」
レイナはとあることを心配していた。
はたして自分達が勝てるのかと。
その時、兵士が何かを叫んでいることに気づいた。
「封印が解けるぞーーー!!!」
何を言っているかを認識してレイナとミネは驚く。
周りの兵士達もかなり動揺している。
封印がいきなり解けるとは思っていなかったのだ。
次の瞬間、砂漠から何百枚ものガラスが同時に割れたような音がかすかに聞こえ、それを喜ぶように魔物達の鳴き声が一斉に鳴り響いた。
「戦闘用意!」
指揮官や隊長達が風魔法で音を大きくして指令を伝えていく。
すぐに兵士達がそれぞれの武器を持って配置につき陣形ができあがる。
レイナは一番先頭のほうで待機している。
兵士達が準備している間に魔物達も準備を終えて移動を始めたのか砂漠からとてつもない量の足音が聞こえる。
兵士達も準備を終えて陣形につく。
他の人よりも少しだけ豪華な装備を着た指揮官が大声で話し始める。
遠目なので一瞬分からなかったがドルド将軍だとレイナは気づいた。
「皆のもの! 我々はついにこれから七色の魔物と戦う。奴らは神話にでてくる化け物ばかりだ。だが恐れることは無い! 我々は準備した。この一年間もの間、人類は団結し、協力し、対策を練り、鍛え続けた。これ以上できることは無いと言ってもいいほど我々は備えた。後は戦って勝つのみだ! 我々の後ろには我々が愛する故郷が! 家族が! 親友が! 人々がいる! 奴らをここから先に行かせるな! 全て叩き潰せ!」
兵士達は鼓舞されて士気を上げる。
全員分かりきっていた。
この戦争に負ければ人類が滅びることを。
演説が終わった次の瞬間には音楽隊による演奏も始まった。
彼らが奏でる音楽はスキルの効果でステータスが上昇するのだ。
しばらくすると魔物の大群が人類にも見える距離まで近づいた。
指揮官が声を上げる。
「魔法部隊! 詠唱始め!」
魔法を使える人間は全員、魔法の威力を少しでも高めるために詠唱する。
詠唱に合わせて魔法陣が浮かび上がる。
「詠唱完了!」
「よし、放てーーー!!」
号令に合わせて色とりどりの魔法が蠍の大群へと飛んでいき、命中した。
大群の先頭辺りにいた蠍は数え切れないほどの数の魔法を避けることも防ぐこともできずに受けてしまい吹き飛ばされた。
だが後続の蠍が死体を乗り越えて突き進んでくる。
「第二部隊、放て!」
二回目の魔法の一斉射撃が蠍の大群へと襲いかかり蠍の死体はさらに増えていく。
その後も何度も攻撃するがいかんせん蠍の数が膨大すぎて後続がまだまだいるようだ。
その時、突撃を繰り返すだけだった蠍の大群のほうで動きがあった。
「将軍! 報告です! ついにヴィヨレが動きました!」
スキルで遠くの物が見える偵察兵がヴィヨレを発見したのだ。
封印されているときとは比べ物にならないほどの魔力を纏っている。
普通、魔法にもなってないただの魔力の状態だとスキルがない限り見えない。
だが密度が凄まじいのかヴィヨレからは禍々しい魔力が出ているように見えた。
まるでロンに殺されて今は亡き魔王と同等かそれ以上の迫力だった。
するとヴィヨレが有り余る魔力を操りだした。
魔力が膨大すぎて魔法が不得意な種族なくせに適当に放った魔法でも恐るべき威力を叩き出すだろう。
「敵の大規模魔法が来るぞ! 結界魔法発動!」
だがヴィヨレが大規模な魔法を放つことなどもちろん予想しているためすぐに魔法使い数十人による結界魔法を発動させる。
次の瞬間、ヴィヨレも魔法が完成させたのか紫色の巨大な魔法陣が現れて魔法が発動する。
すると毒の雨が降り始めた。
「軍団全てをつつみ込めるほどの範囲の魔法を単独で発動だなんて……さすが神話の化け物だ……。」
本来は何人もの魔法使いが儀式をして発動させる規模の魔法を単独で行使しているという事実に兵士どころか指揮官クラスの人間も唖然としていた。
毒の雨は範囲は広いが直接的な力はないので結界を突破できるわけもなく被害はない。
毒の雨で蠍達に被害が出てくれないかと淡い期待をしたがさすがに毒耐性のスキル持ちなのか体中が濡れて少し動きが鈍くなったくらいだ。
すると毒の雨で人類に被害が出なかったからか蠍の大群でさらに動きがある。
今までは対して強くない蠍ばかりだったのに長生きして経験を積んだエルダースコーピオンが出てきのだ。
しかも魔法が不得意な蠍の中でも特殊な種族である魔法が得意な種族の蠍が現れた。
ミュージシャンスコーピオンという種族で身体能力が低く殻もとても脆いかわりに多種多様な魔法を使えるのが特徴の蠍だ。
他の蠍は紫色なのに赤色である。
その蠍が頑丈なエルダースコーピオンの後ろに来て結界魔法を発動させた。
そこまで強力ではないが十分面倒だ。
魔法の効きが悪くつい先程までのように魔法で吹き飛ばしていくことはかなり困難になるだろう。
このまま魔法で蠍の大群を削れるかと思った矢先のことだったため絶望感が人類を包むのだった。




