第四十五話 人が操る風
レイナは山を登り始めてしばらくしてもうすぐ山頂というところまでやってきていた。
スタミナ特化のレイナにとって登山など朝飯前なのだ。
すると突然雲が出てきた。
遠くから雲が風で流れてやってきたわけでもない。
何もないところから突然出てきたのだ。
「あきらかに故意に誰かが魔法で出してるよね……ここの主がやったのかな……?」
雲はどんどん大きくなりあっという間に山全体を包み込み風が吹き始める。
かなりの冷たさだが凍え死ぬ程では無い。
体の動きが若干鈍くなっているような感じがするだけだ。
恐らくこれで少しでも消耗させる気なのだろう。
向かい風を受けながら進んでいくとついに山頂へ辿り着いた。
そこには黒いフードを被った骸骨が立っていた。
アンデッドらしい。
アンデッドでノワールを思い出すがノワールとは位置的に無関係だろう。
かなり広範囲に吹雪を吹かせるだけあってかなりの魔力を保持しているのかかなり手強そうだ。
「かなり手強そうだけど魔法使いっぽいし近づければ勝ち目はある。問題は近づかせてくれるかだけど……というかそれが一番の問題なんだけどね……。」
幸いなことに距離自体は50メートルほどしか離れていない。
これが1キロメートル先とかにいてしかも長距離から攻撃ができる手練れの魔法使いが相手ならとんでもなく苦労するし最悪の場合、軍の部隊が壊滅するレベルで大変だが不幸中の幸いと言うべきだろう。
すると骸骨はカタカタと歯を鳴らしながら白色の宝石が先についた黒い杖を掲げる。
宝石が輝いた次の瞬間、風の刃が数十個ほどレイナ目掛けて飛んでくる。
「たぁっ! ていっ! とりゃっ!」
かけ声を出しながら剣を振って風の刃を叩き落としていく。
絶え間なく風の刃は飛んでくるが一つ残らず叩き落とし一歩一歩着実にレイナは距離を詰めていく。
するとその時、骸骨がニヤリとしたように見えた。
「うぐっ!?」
咄嗟に避けるが何かに切られる。
恐らく透明な刃だろう。
風なのだから透明なのは当然といえば当然だが風魔法使いがこんなふうに使っているのは始めて見た。
後に風魔法使いに聞いて知るが透明にすると普通は威力が落ちるのだそうだ。
だがこの骸骨は威力がほとんど落ちていなかった。
生前はきっとかなり優秀な魔法使いだったのだろう。
「うわっ! ひえっ! うぐっ!」
透明といえど空気を切るような音があるためまったくわからないわけでは無いがそれでも見えない高速の物体を躱すというのは困難だ。
致命傷は避けているが小さな傷が段々増えていく。
「このままじゃジリ貧かな……? 一か八かで突っ込む……いや、冷静になって……どうすればいいか考えれば分かるはず……そうだ!」
何かを思いついたレイナはなんと目を閉じ、剣を鞘に収めた。
骸骨は一瞬困惑したがすぐに好機だと思い、風の刃に全方向から集中攻撃させる。
次の瞬間、レイナは見えない程の速さで剣を抜いて透明な刃も含めて一つ残らず叩き落とした。
骸骨が激しく動揺している間にレイナは一気に距離を詰める。
骸骨が我に帰って風の刃を出そうと杖を掲げた次の瞬間にはレイナは杖ごと骸骨の胴体を切り飛ばしていた。
魔法を発動させた魔法使いが死んだため周りの吹雪も消える。
きっと本来はこれで凍えさせて弱らせるつもりだったのだろうが先日巻き込まれた吹雪と比べるととても弱かった。
骸骨が完全に動かなくなったことを確認してレイナはその場で崩れ落ちるように座り込んだ。
「ふぅーーー………魔力をうまく探知できてよかったぁ〜。」
レイナは目を閉じることで魔力を感じやすくしたのだ。
そうすれば魔法が透明だろうが魔力がこもっているため分かるのだ。
もちろんかなり難しい技術で誰でもできるとうわけではない。
もしできても魔力を感知できる範囲というのは視覚よりも断然低い。
目が向けれない方向の魔力も感知できるがせいぜい10メートル先くらいまでの魔力しか感知できない。
なので普通の人間がレイナの真似をすれば風の刃に気づいた時には速すぎて切られているのだ。
つまりレイナの反射神経が優れているからこそできるのであってロンですら真似できない領域になっていた。
「なんとか倒せた〜…………うん? あっ! レベルが上がってる! やったぁー! あの敵、レベル高かったのかな?」
そんな凄いことをしていたレイナはレベルが上がっていることに子供のように喜んでいた。




