第四十話 行き詰まった勇者
レイナが落ち着いてからロンがもう一度詳しく説明して納得させた。
「わかりましたよ……やればいいんでしょ……。」
レイナは結局渋々ながら納得してケルグ山脈へ馬車に乗っていった。
おそらく数日後には到着するだろう。
そしてロンはとあることを考えていた。
「さて、あと残っている問題は……俺がどうするかだな。どうしたものか……。」
少しでも勝てる可能性を上げるためにもロン自身も強くならなければならいとロンは考えていた。
だが剣は限界が見えてきていた。
剣の才能があまりなかったのだろう。
もともと天才と言われるほどでは無かった。
「あと俺が成長できそうなものは魔法だな。」
ロンは基本的に魔法と剣術を組み合わせて戦うが実は魔法の才能のほうがある。
なにせ新しい魔法を創り出すことができるほどの腕なのだ。
新しい魔法を創り出すことはとんでもなく難しい。
それがちゃんと優秀な効果の魔法を創った場合ならば天才と言われてもおかしくない。
ロンは従来よりも優秀な身体強化魔法を発明したのだから魔法の才能は申し分ない。
だからこそロンは魔法を鍛えようと思った。
「どうやって鍛えたものか……。」
とはいえロンは既に魔法の限界を感じていた。
既に極限まで極めきっているのだ。
ここからは明確に強くなることは無いだろう。
短い期間で大幅に上げることもできない。
結果的に他の方法を探すことにした。
散歩しながら考えていると誰かが後ろから話しかけてきた。
ロンが振り向くとそこにいたのはドルド将軍だった。
「こんなところでどうしたんだね?」
「あっ! ドルド将軍! 自分はこれからについて少し考えていました。」
これがディース教皇とかならロンは冷たい視線を向けるのだろうがドルド将軍は尊敬できる人間だと思っているので敬語で話す。
「これからのこととは?」
「自分は数カ月前にノワールと戦って実力不足を痛感したのでどうにかして強くなりたいなと思い、その方法を考えていました。」
「なるほど。」
「自分で言うのもなんですが自分はかなり強いです。なので師匠と言えるような人もいませんのでどうすれば強くなれるかもよく分からなくてですね……。」
「……私はそこまで強くない。なので君に教えられるようなことは何もないが……アドバイスくらいはできる。」
「?」
「古文なり伝承なりを読んであの3体の魔物について知ればなにかしら対策を立てるなりできるのでは?」
「なるほど……ちなみに例のスキルですか?」
ドルド将軍は人格者であり優秀な指揮官だということで有名だがとある特殊なスキルを持っていることも有名だった。
『未来予知』というスキルだ。
未来に起こることがわかるというものだ。
ただしそこまで詳しくはでないし未来は行動によって簡単に変わるのであまり当てにはならないし、制約も多い。
見えることもあれば見えないこともあり偶然見るかもしれないくらいだ。
だがそれでもたまにとはいえ未来が見えるというのは優秀なのだ。
「まあその通りだな。君が古い本を見て何かを思いついている景色が見えた。」
「じゃないとそんな事を突然言い出しませんしね…………じゃあさっそく試してみます。」
ロンもドルド将軍のスキルのことを知っているので意味不明なことでも信用した。
なのですぐに資料が大量に保管されている部屋へ行った。
「なにかわかるといいんだけど……。」
ひとまず昔の英雄などの資料を読んでみた。
ついでにノワールやヴェール、ヴィヨレなどが登場する神話も読んでみた。
初代勇者の神話はとても有名な神話なので誰でも知っているが詳しく知っている人間はなかなかいない。
なのでそこからあの3体の使う戦術などを読み取れる可能性があるだろうと思って読んでみた。
「これは知らなかったな…………。」
それにはいろいろな事実を知れた。
思った以上に資料には詳しく書かれていたのだ。
その中には衝撃の事実もあった。
ノワールが使っていたあの謎の超加速についての記述があったのだ。
あれは東の島国でよく使われているスキルの『瞬歩』というものだというのだ。
正確なことは分からなかったがノワールの超加速にとても酷似しているらしい。
曰く、距離制限があるかわりに一瞬だけとてつもない速さで動くことができるらしい。
距離制限がかなり厳しく5メートルも動けないらしく一歩進めばそれで効果が切れてしまい、ほんの少しの間使えなくなるらしい。
条件はあるがかなり強力だ。
それでも5メートル以上は動けないので仮にノワールがスキルレベルが高くてもっと動けたとしても大差は無いことが予想できるため距離を意識しながら戦えばうまく立ち回れるだろう。
それ以外の2体の情報も集めていきロンは3体の魔物への対策を考えていった。
しばらく考えているとふととあることを思い出した。
ギルにまだ訓練の説明をしていないことだ。
部屋に閉じこもってしまっているらしいのでひとまずはギルの部屋へ行くことにしてすぐに向かった。
ギルの部屋にはすぐ辿り着いた。
ドアをノックしてみるが反応が無い。
ドアを開けようと思っても鍵がかかっているのか開かない。
兵士に聞いたところ、一応食料はちゃんと食べているそうなので立ち直るまでは放置することにして立ち去った。
―1週間後―
「おい勇者! 何をすればいいんだ!」
ロンは困惑していた。
今ロンに聞いてきたのがギルだったからだ。
1週間前まではあれだけ落ち込んでいたのに突然立ち直ったのだ。
「なんで突然立ち直ったんだ?」
「…………ドルドのおっさんが部屋に来ていろいろ言ってきてそれで立ち直った。」
ギルが気まずそうに顔を逸らしながら言う。
ロンはますます困惑するのだった。
しかもギルやドルド将軍本人に聞いても何も教えてくれなかったため結局聞くことは諦めるのだった。




