第6話『修学旅行費を盗んだのは誰だ!?』
宗華たちは、ワープさせられ学校前に戻ってきた。
空は夜で、ところどころにキラキラとした星が見える。それは綺麗で安らぎを感じさせるようなものではあるのだが、今の5人にはそんなことを感じている暇はなかった。
あることを察したのか、5人はしばらく黙って膠着状態が続いていた。
「ねえどのくらい時間経った?宗華、わかる?」
そんな中、最初に口を開いたのは井曽。
「1秒は1秒だから過ごした時間だけ経ってるはず」
宗華は冷静に、井曽の質問に答えた。
「改めてみんなに説明しておくわ」
宗華は4人に、改めてゲームのことを説明。
「それで、バトルロワイヤル中でも街にゲーム会場が出現したりするの。そこでポイントを集めたりとかして、優勝を目指す」
「でも宗華、宗華が優勝したら私たちは……」
「大丈夫、銀蓉。リタイアしたらゲームに関する記憶は消されるけど日常生活に戻れる」
「じゃあ、死んだら…………?」
「そうなっちゃうと、もとの生活には戻れない。だけど銀蓉、安心して。みんなは最強の私が守るから」
翌日。
「あー、今回はみんなに話がある。クラスの修学旅行費が盗まれた。心当たりのある人は名乗り出てきてほしい」
担任がクラス全員の前で、修学旅行費が盗まれたことを明かした。
ザワザワとするクラス。
昼休み。
修学旅行費が盗まれた話題で、クラスはもちきりだった。
「まずいわね。学級委員だから私と銀蓉が疑われてる」
「宅間さん……」
ため息をつく宗華を、由奈は心配そうに見つめている。
由奈は、噂話をしている男子たちのもとへ歩いて近づいた。
「ねえ。どうして宅間さんと銀蓉を疑ってるの?」
クラスメイトたちを見渡す由奈。
「え?2人は学級委員だし、金を盗みやすいから」
「本当に?クラスのことを考えて行動して、あんなド正義の宅間さんがそんなことすると思う?それに銀蓉も、金持ちがそんなケチくさい真似するかな?」
「あ、うん、まあ…………そうかも。確かにありえないか…………じゃあ誰が」
「それはわからない。でも2人じゃないと思うよ?」
「まあ……そうかな」
由奈の言葉により、一旦は宗華と井曽を疑う空気がおさまった。
帰宅後、仕事中の宗華。
「そっちはどう?岩田社長は対応してくれた?」
「だめです会長。岩田豪社長は土地の価格を安く譲りたくないそうで、高い値段から下げようとしません」
「はぁ……そこと業務提携できればいい感じになるんだけどなぁ」
取引先は大きな会社で、この事業がうまくいけばたくさんの儲けが出る。しかしそこの岩田豪という社長が傲慢でわがままなため、宗華は手を焼いていた。
それからしばらく、社員が出した案の精査や資料整理などに追われていた。
宗華は上の立場ではあるが、下の仕事もすることがある。宅間グループでは社員を大切にし、第一に考えている。下の仕事をすることがあるのもそのため。
といっても宗華は学生。宗華のサポートとして、社内で力のある者何人かが宗華の仕事を手伝ったりする。
「っ、ふぅ〜〜っ!」
しばらくして仕事が終わり、自分の部屋に来た宗華。
(お父さん……)
思い出される、死んだ父のこと。
宗華が中学生の頃。
ある日、宗華は学校のテストで100点をいくつも取ったことを父に自慢しようと、うきうきで通学路を通って帰宅していた。
高いビルを見上げ、中に入るために入口を通ろうとしたその時。
「えっ」
ドグォァ──ン!
それは突然だった。ビルの上の方から、爆発が起こった。
宗華は、爆発の位置がどこかを知っている。
「お父さん……お父さん!!」
宅間グループ社長、宅間陽太郎の葬式が行われた。
「可哀想に……まだ中学生なんでしょう」
「宗華ちゃん、これからはうちと一緒に暮らしましょう?」
宗華に対してかけられる、慰めの言葉。
しかし、それは宗華を心配してのものではなく、宅間グループの権利を狙ってのことだった。一人娘の宗華を丸め込めば、宅間グループを乗っ取ることができる──そう考えてのこと。
「なりません。宅間様は他の企業に取られていい人材じゃありません」
迫られる宗華を守ったのは、秘書の横光騎央。
「会長、どうされましたか」
部屋に入ってきたのは、秘書の騎央。
「修学旅行費が盗まれちゃって。私、学級委員だから疑われてるの」
「そうですか、それは災難でしたね。ですが会長はそんなことをするような人ではありません」
宗華は、特に騎央から信頼されている。
「ありがとう」
「犯人に心当たりはあるのですか?」
「…………」
騎央の質問に、宗華は黙り込んでしまった。