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第1話『500年前からの恋』

 2025年、日本。


「おめでとう!今日からきみはプレイヤーだよ!」

「知ってるよ。久しぶり……やっと来たわね、ナビゲーターさん」

「へへっ!きみはそうだね!」


 学校の帰り道。女子高生は、ナビゲーターからプレイヤーの証を受け取った。



 東京都内のとあるビルに、ひとりの女子高生が暮らしていた。


「それじゃあ、今から会議を始めるわ!全員揃ってる?」


 女子高生の宅間宗華(たくまそうか)は、とある企業グループの会長。父である社長が死亡し、現在はグループで最も立場が高い人物である。


「会長!これはどうでしょう」


 女性社員が、資料を持って宗華のもとへ駆け寄ってきた。

 宗華はパラパラと素早くその資料を見た。その速さに、驚く女性社員。


「これとこれとこの案はいい感じだわ。この取引相手は厄介ね……あまりしつこいようなら()()()

「わかりました」


 テキパキとした動作。それは、社員たちから尊敬と憧れの視線を集めている。



 翌日

 外は日差しが強い快晴。思わず顔を腕で覆ってしまう。


「あっついわね……なんとかならないかなこの暑さ」


 カバンを肩にかけながら、通学路を歩く。


 宗華は企業の会長であり、ピチピチのJKでもある。



 学校についた。校門をくぐり、下駄箱で靴を履き替える。


 教室に入ると、すでに何人かのクラスメイトが教室に来て自分の席に座っていた。


 宗華も、クラスメイトと同じように自分の席に座った。


 ふたつの巨乳の間には、ペンダントのように首にかけられている古代の鍵のようなもの──『プレイヤーの証』があった。


「あれから500年くらいね。ニュンリン……私が、絶対見つけ出してみせるから」


 宗華は、かつて自分が英雄ソーカ・エカイッシュだったころの記憶を思い出していた。




 約500年前。


 願いを叶えることになり、ソーカは願いを記入してナビゲーターに見せる。そこには、こう書かれていた。


【想い人ニュンリンを自分のもとへ呼ぶ】


「あ〜。()()()()()()()()()()()()()言うけど……その願いは叶えられないね」

「そんな!なんで」

「とにかく別の願いにしてもらうから。それか、権利の放棄もできるよ〜」

「じゃあ」


【想い人ニュンリンを生き返らせる】


「ごめん、それも無理だね〜。これもまた()()()()()()()()()()()()()言うけど、ニュンリンは死んでないから」

「ならこれ!」


【想い人ニュンリンの居場所を知る】


「これも無理」

「どういうこと!?そんなの、もうこの世界のどこにもいないみたいな……」

「まあ、端的に言えばそうだね〜」


 書いた願いをことごとく突き返され、途方に暮れる。


(待って……これなら)


 ソーカはある可能性を思いつき、願いを書いた板をナビゲーターに渡した。


「ふーん……こんな願いをしたのは、2()()()かな?」

「2人目……?」

「そ、2人目」

「誰?教えて!!」

「それはプライバシーだから教えられないよっ」


 ナビゲーターは、ソーカにきゅるんとした表情を見せつける。


(まさかニュンリンも『転生』を?)

「じゃあ最終確認だけど、本当にこれでいいの?」


 ソーカは、静かにうなずいた。




「転生者……やっぱりニュンリンは転生を繰り返してる可能性が高い……自分のもとへ呼べなかったのはゲームに負けたか何かで死んだから。なのに()()()()()()()()()()死んでないと言ったのは、転生をしてるから。居場所を知れなかったのも、すでにニュンリンの魂的な何かが転生していてその時間軸ではニュンリンの魂が存在していなかったから…………って考えてみたけど、本当にそうなのかな?」


 宗華は自分の席に座って、勉強道具一式を机の上に置く。


 その天才的な頭脳で、問題をスラスラと解いていく。


(そういえば最近、各地で謎の現象が多発してるって社員たちから聞いた。それと連動するかのように、とあるヤクザの資産が増えはじめた)


 そんなことを考えながら東大の赤本のページをめくったその時、宗華の机に影が落ちた。


「おはよう、宗華ちゃん」


 短髪の女の子が、宗華におはようの挨拶をしてきた。


「おはよう、好子(こうこ)


 (たん)好子(こうこ)。漫画や映画が好きなオタク。

 たまに宗華と遊びに行ったりしていて、宗華ととても仲のいい()()


「また勉強してる」

「当たり前よ。私は東大に行くんだから」

「宗華ちゃんなんでそんなに勉強してるの?」

「うーん……強いて言うなら、強くなるため……かな」

「すごい!」


 好子は、宗華の高い目標に感激している様子。


「ふふっ、ありがとう」


 宗華は、にっこり笑顔を好子に見せた。褒められて、悪い気はしない。


「ねえ、修学旅行のことだけど」

「どうしたの?」


 宗華に問いかける好子の表情は、どこか寂しそうだった。


「ほら、真白(ましろ)のこと。真白だけ修学旅行に行けないってなったら、可哀想でしょ?ほら、真白ちゃん貧乏だし、8万はちょっと」

「あまり人のことをそういう風に言っちゃだめよ。でも、好子の言う通りよね」


 宗華は難しい表情をした。


「ねえ宗華ちゃん。────にしない?」

「え?……ああ、そういうことね。先生に掛け合ってみる」

「よかった……!」


 宗華の言葉に、好子は安堵の表情を浮かべた。

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