第0話①『最高のパートナー出会う時、追放されたチート悪役令嬢は恋をする』
古代ヨーロッパで、戦争が起こっていた時代。
ソーカ・エカイッシュは、いくつもの戦を戦い抜いた英雄の女だった。その戦闘力は絶大で、他軍が負けてもソーカの軍だけは勝利するほどの力を持っていた。
絶大な戦闘力に加え、知略も凄まじい。まさしくチートと呼ぶに相応しい力。
「きゃー!英雄様よ!」
「英雄様だ!!こっち向いてくれ!!」
「英雄様〜!!」
英雄ソーカに向かって、民たちが手を振る。
ソーカの人生はバラ色。令嬢であり英雄ということで、超絶偉い超絶イケメンの令息と結婚することになった。
「イケメンと結婚できるなんて……わたくし、なんて幸せなんでしょう」
ソーカは結婚、恋愛というものに憧れていた。相手のあまりのイケメンさや地位の高さ、金持ちさなどに浮かれていた。
しかし、人生はそう簡単にはいかなかった。
「わたくしが、婚約破棄?」
ある日。ソーカは、婚約予定だった男に婚約破棄の旨を告げられた。
「お前が魔女だという噂が広まっている。魔女とは結婚できない」
男が、厳しい顔をソーカに向けながら言い放った。
その当時、ちょうど『魔女狩り』が横行していた。力を持つソーカを恐れ、ソーカを魔女だとする声が各地であがった。
ソーカは、令嬢家を追放されてしまった。
処刑の時は、刻一刻と迫ってきていた。
「わたくしが…………処刑…………」
兵士に捕らえられ、歩く。
ソーカに、反抗の意思はなかった。いろいろなものに失望しきっていたから。
ギロチンに首をセットされた。
「せいぜい地獄で反省するんだな」
ソーカに向かって、処刑人の男がいい放つ。
「冥土の土産に教えてやろう。お前が魔女だという情報を広めたのは……お前の婚約者だ」
「────!?」
驚き、目を見開くソーカ。ギロチンがソーカの首を切断しようとしたその時。
ボゴンッ!
「えっ?」
突然の音に驚くソーカ。
どこかから飛んできた火炎弾が、ソーカを避けてうまくギロチンだけを破壊した。
見渡すと、ハヤブサの翼を生やした女が空に佇んでいた。
「な、なにあれ……人?鳥?化け物?」
見たこともない生物、超能力。果たしてあれはこの世のものなのか?といろいろ思考をめぐらせるが、結論は出ない。
ハヤブサの女は一直線でソーカのもとへ。
「ソーカ・エカイッシュね。色々聞きたいことがあるだろうけど、今は逃げるわよ」
ハヤブサの女はソーカを抱え、どこかに飛び去った。
女の自宅に連れ込まれたソーカ。
「あ、あなたはなんですの?なんでわたくしを助けましたの?」
ありえないことが連続で起こり、女に質問攻めしてしまう。
「あなたを助けた理由は……あなたが私の力になってくれるかもしれないと思ったから」
「え?」
「私は知っている。今までのあなたの行いを。あなたはこの世でもっとも清い正義を持つ人間」
女から、すでにハヤブサの翼は消えていた。
「あ、ありがとうですわ。でも、わたくしを助けるとあなたも処刑され…………いえ、その謎の力があれば処刑はされませんわね?」
それから、ソーカと女は密かに、しかし楽しく暮らした。その過程で、2人はとても親しくなった。
「あ、あの。そろそろ、名前を教えてくださらない?」
「私はニュンリン。こう見えて、れっきとした人間よ」
ニュンリンは、魔女と言われたソーカにも優しくした。
「ひとりぼっちで寂しかったわよね。大丈夫。あなたは何も悪くない。あなたは英雄。だから、何も気に病むことはないわ」
ニュンリンは、ソーカの頭を優しくなでなで。英雄であることを気にせずなでなで。
「でも、わたくしはいつも人を殺してしまって」
「それは、国を守るために仕方なくしたことでしょ?」
「でも!だからといって……正義の名のもとに人を殺すなんて、本当はやりたくありませんわ!!」
耐えきれず泣いてしまう。
「大丈夫、大丈夫だからね……」
「ううっ、うん……」
戦争で心が疲弊したソーカを優しく包み込む、ニュンリンのあたたかい手。
かつて婚約者に裏切られて男が嫌いになったソーカは、いつしかニュンリンに惹かれていた。お見合いの時とは違い、恋をしていた。ソーカにとって、ニュンリンは最高のパートナーだった。
「ニュンリン。そろそろ教えてくれてもいいでしょ。ニュンリンの能力、いったいなんなんですの?」
「…………」
ソーカがニュンリンに聞いたが、ニュンリンはその答えをソーカに教えることはなかった。
部屋の窓から、少しの日差しが差す。
「あれ……ニュンリン?」
ソーカが起きると、ニュンリンは家の中にいなかった。
何日経っても、ニュンリンは帰ってこなかった。
「ニュンリン……どこに行ったの?寂しいわ……まだ好きも言えていないのに」
いてもたってもいられなかった。指名手配の身であるにも関わらず、街に出てしまった。
「あ、魔女だ!」
「捕まえろ!」
「抜けがけするなよ!」
(くっ……どうやら懸賞金をかけられているようですわね!当然ですわ)
逃げるソーカ。鍛えられている英雄ソーカに追いつけるはずもなく、民衆たちはどんどん離されていく。
いくら探しても見つからない。そう途方に暮れていると──
「おめでとう!今日からきみはぁ〜……『プレイヤー』だよ〜!」
黒い箱を持った派手な衣装の女が、何もないところから突然目の前に現れた。
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