表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の色は変化し続ける、ということだけが変化しない。~宵と暁の空~  作者: 来夢創雫
任務 「救出任務001:潜入、港のコンテナからの救出」
5/85

「沈黙の武装」

任務当日の夜。


居間の中央に広げられた地図と、タブレットに映る現地の監視映像。

全員が座り込み、真剣な表情で画面に見入っていた。


「現場は港の一角、使われていない積み出し用の倉庫群だ」


 和大が地図上を指しながら言った。


「監禁されているのはこのコンテナブロックの一つ。該当箇所には昼間、複数の人間が出入りしているが、夜になると周囲の動きはほぼ止まる」


「つまり、夜間は少人数で警備してるってことか?」

シンイチが確認する。

「ああ。敵は5~7名。全員武装している可能性あり。コンテナ内の被害者数は不明だが、少なくとも4人以上。移送される前の今夜が唯一のチャンスだ」


「出入り口は?」

イハラが短く問う。


「コンテナ南側に搬入口があるが、通常は施錠されてる。俺と隼斗で周辺を攪乱して、シンイチが裏手から侵入する。イハラは情報遮断と通信の妨害を。政悟、お前は突入後、監禁されている人の救出につけ。侵入と救出が第一。戦闘は避けろ」


政悟がうなずいた。


「救出が完了したら?」

隼斗が問う。


「被害者の安全を確認した時点で、残りの敵を抹殺する」

和大の声は静かだった。

「抹殺って言い方、最近だんだん板についてきたな」

シンイチが苦笑する。


会議は短く、静かに終わった。決行は3時間後だった。


作戦会議のあと、政悟は台所に飲み物を取りに立った。冷蔵庫から缶ジュースと取り出すと、ふと、後ろからシンイチの声がした。


「なあ、政悟」

「はい?」

「今日、怖くないのか?」


政悟は一瞬だけ視線を泳がせたが、すぐに静かに答えた。

「怖いですよ。だけど、行くって決めたんです」


「正直でよろしい」


シンイチは笑って、政悟の隣に並んだ。


「前に誰かが言ってたんだけどさ。任務に向いてる奴ってのは、恐怖と同居できる奴だって。

でもまぁ、できれば、無傷で帰れ」


「僕、そんなに無茶しそうですか?」

政悟が笑った。


「するよ。年齢のわりに冷静すぎる顔してるくせに、中身が熱い」

「別に、熱くなんかないですよ」


シンイチは少しだけ目を細めた。

「そうか? だったら、昨日のお前の目は何だったんだ」


政悟は返事をしなかった。ただ、静かに冷蔵庫から出した缶ジュースのふたを開けた。


作戦会議が終わり、それぞれが静かに準備を始める。

緊張感の漂う家の中で和大は小さく息をついて立ち上がった。


居間の端、畳の下に手を伸ばす。畳を持ち上げ、板の節目に沿って鉄のリングを引いた。ギィ、と軋む音とともに、小さな床下収納の蓋が開く。

下には、二重底の構造になった木箱があった。

上段には乾パンや保存食、医薬品。

その下に、重ねて隠されていたのは、黒い布で包まれた銃器類たち。

和大が布をめくると、分解されたライフルと数丁の拳銃、無線機、スモーク弾、予備マガジンが静かに姿を現した。


「床下の湿気、意外と馬鹿にならないな。防湿材増やすか」

イハラの声が後ろから響く。


和大はうなずいてそれらにゆっくりと手を伸ばした。


「屋根裏の方も見ておいた方がいいだろうな」

隼斗が言いながら、和室の天井を見上げた。


ふすまの上、天井の一角には、小さなハッチが取りつけられていた。ハッチを開けて登ると、暗い屋根裏に細工された木箱が置かれていた。中には、折りたたみ式のスナイパースコープと狙撃用の銃、サプレッサーが眠っていた。


政悟はナイフを取り出し、刃を確かめている。手馴れた動きだった。迷いのない手つきに、和大がわずかに目を細める。


「屋根裏の装備品、問題ないか?」

シンイチが天井裏にいる隼斗に問う。


「ああ、問題ない」


「いいか政悟、いざと言う時は逃げろ」

和大がはっきりと告げた。


「いざってときなんて来ないですよ」

 政悟はナイフを鞘に収め、立ち上がった。


沈黙が落ちる。全員は無言のまま装備を身に着け、互いの目を見た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ