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空の色は変化し続ける、ということだけが変化しない。~宵と暁の空~  作者: 来夢創雫
任務「潜入任務007:「信仰の影 潜入の3日間」
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「静謐の選別~セミナー潜入2日目②」

 セッションの合間の休憩時間、隼斗は別棟への廊下を進んだ。複数の部屋が並び、いくつかは使用中であることを示す赤いランプが点灯していた。そのうちの一つから、小さく呻き声のような音が漏れていた。


 (あれは――?)


 だが、それを確かめる時間はなかった。スタッフの足音が近づいていた。

  部屋へ戻ると、霞が控えめに微笑みながら隼斗に頷いた。言葉はないが、演技を続けるよう促す合図だった。



 午後の最後、二人は個別面談へと呼ばれた。霞は幹部と、隼斗は別のスタッフと。


 「八神様。あなたのような若くして実績を残した方は、今の社会の中でも稀有な存在です」

 「恐縮です。でも、僕の力じゃありません。周囲に恵まれていただけです」

 

  スタッフは静かに笑い、言葉を続けた。

 「この世界には、気づいた者にしか見えない扉があります。お連れの羽瀬川様は、その扉の向こう側をきっと見つけられるはずです」


  隼斗は、薄く笑った。

 「彼女が見たものは、俺が守りますよ」


 面談が終わり、参加者たちはラウンジでくつろいでいた。やや社交的な雰囲気の時間だ。


 その時、外国人講師らしき人物が、隼斗にフレンドリーに声をかけてきた。


「Hey, Mr. Yagami!  I heard you’re running a fintech start-up?  Sounds exciting!」

(やあ、八神さん! フィンテックのスタートアップを経営されてるって聞きましたよ。すごく面白そうですね!)


 隼斗は一瞬だけ相手を見て、すん……と目を細めた。


 その表情は「ちゃんと聞き取ってますけど、今すぐ話しかけるなオーラ」そのものだった。


 横にいた霞が、自然な笑顔で割り込むように応じる。


「Yes, he started a digital asset management firm last year. You know, domestic regulations are strict, but he’s trying to expand carefully.」

(ええ、昨年、デジタル資産の運用会社を立ち上げたんです。国内の規制は厳しいですが、慎重に事業を広げようとしているところなんですよ)


「Oh, really?  That’s impressive!」

(へぇ、本当ですか? それはすごいですね!)


 相手は満足げにうなずき、隼斗に向かって親指を立てた。隼斗はほんの少しだけ眉を上げ、無言で軽く頷いた。そして会釈したあと、やや遅れて霞の耳元でぽつりと零す。


「助かった」


 霞は小さく笑った。


「任せて。私、恋人だから」


その声はどこまでも落ち着いていた。


―――夕刻

「すみません。彼女と少し、外で夕食を……門限までには戻ります」

 隼斗は低めの声でスタッフに申し出た。


「もちろんです。愛を育む時間も大切ですから」

 案内役の女性は笑顔で頷いた。


 その横で、霞がふっと笑みをこぼす。

「聞きました? 愛を育むですって」

「聞こえてる」

 隼斗はそっぽを向きながら、ドアの方へ歩き出した。

 霞が軽やかにその後ろをついていく。


「ねぇ、もし私が本気だったら、どうする?」

「『もし』って時点で、ややこしい」

「ふふ。そういうところ、意外と好きよ」

 霞の笑みに、隼斗は一言も返さず、静かにドアを開けた。


 二人の背中が、夜の空気の中へと消えていった。


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