第4話 男子校潜入!男子女子力発電の可能性
「よし、かんぺきでしょ!」
鏡の中のエネルギッシュな短髪の男子高校生、これぞ変装の天才・リコの姿である。ダボダボの制服に、今日きつめに巻いた胸。リストバンドは当然、注意深く袖の中に隠してある。
私の野望、それは男子校に潜入し、「男性だって、可愛いアニメキャラや歴史上の美女を意識した時、微弱な女子力エネルギーを放出するはず!」という革命的な仮説を証明することなのだ。教授は呆れてたけど、私はマジメなんです!
コネをフル活用し、一週間の交換留学生として、近所の有名な男子校への潜入許可をゲット!いざ、男の世界へ!
初日。体育倉庫みたいな汗臭さ、大きな叫び声、そして周囲の男子たちの、女子への飢餓感すら漂う乾き……想像以上だった。
(ふむ、絶好の実験環境じゃないか)
私はこっそりと小型エネルギー測定器をポチポチ。しかし、今のところ、女子力エネルギーは全く反応していない。
昼休み。食堂でカレーを一人で食べていると、隣のテーブルの男子たちが騒ぎ始めた。
「なあ、新作アニメの猫耳メイドヒロイン、マジ天使じゃね!?」
「わかる!あの優雅な尻尾の動きとか、うるうるの瞳とか!」
「俺は、あのゴミを見るような視線に射抜かれたいね…」
(キタコレ!猫耳メイド!)
テーブルの下で測定器を構える私の手は震えた。画面は……やっぱり、うんともすんとも言わない。
(なんで!?猫耳メイドは女子力の塊じゃないのか!?)
次の日。歴史の授業中、私は隣の席の男子に、教科書の絶世の美女の肖像画を用心深く見せてみた。
「ねえ、この人、可愛いと思わない?」
男子は思いがけなく赤面し、蚊の鳴くような声で「う、うっす」と答えた。
(今度こそ!)
測定器を最大限に敏感なモードに。画面は……まさかの無反応。私の心は台風みたいに荒れた。
数日後。男子校ライフにも慣れてきたけど、男子の会話の九十パーセントは下ネタかスポーツの話だと知った。あと、彼らは挨拶代わりに思いがけなく体当たりしてくるらしい。毎日毎日飽きもせず。疲れた。
そんな時、図書室で一人の男子が有名な画家の画集を凝視しているのを発見。用心深く覗き込むと、そこにいたのは、息をのむほど美しい女性の姿だった。
「その絵の女性、本当に美しいですよね」
思わず声が出た。
男子はビクッとして振り返り、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ああ……なんか、こう、心が洗われるような美しさだなって思ってて……」
(キタ!心洗われる美しさ!)
私の指は震えた。測定器を最大限に敏感な感度で男性に向ける!
その瞬間!
ピピピピピピィィィィィン!!!!
測定器がランプを激しく点滅させ、けたたましい音を立て始めたのだ!図書室の男子たちが「なんだ!?」と振り返る中、画面には「女子力エネルギー検出 レベル:微弱」の文字が!
「うおおおおおお!!!」
心の中で叫んだ。いや、実際にも叫んだかもしれない。やった!やったぞ!猫耳メイドには無反応だった測定器が、有名画家の美女に少なからず反応した!
その後も、私は歴史的な偉大な女性の話、文学作品の悲劇のヒロインの話など、矢継ぎ早に男子たちに語りかけ、こっそりと測定を続けた。すると、ごくごく稀に、あの赤いランプが点灯する瞬間があったのだ!
一週間の潜入調査を終え、鼻息荒く女子大に戻った私は、集めたデータを教授に叩きつけた。
「どうですか教授!男子だって、女性の美意識に触れた時、女子力エネルギーを出すんですよ!証拠はここに!」
教授はデータを眼鏡の奥から注意深く見つめ、真剣な顔で言った。「確かに、ごく微弱だが、興味深い反応が見られるな。特に、歴史的な人物や芸術作品に対しての反応が高いとは……」
私は勝利を確信した。
「つまり、男子は、二次元の萌えキャラよりも、現実的な、あるいは歴史的な女性の美しさに、潜在的な女子力を刺激されるってことですよ!」
教授は腕を組み、少し哲学的に呟いた。
「あるいは、手の届かない理想的な女性像に、男子は古代から特別な感情を抱くのかもしれんな……」
「どっちにしろ大発見です!」
私は胸を張った。
「次の研究テーマは、男子の隠された女子力エネルギーを効率的に収集する方法についてです!」
教授は深く溜息をつきながらも、わずかに笑みを浮かべた。
「君の暴走には、いつもブレーキが壊れているな。まあいい、研究を続けなさい」
やったぜ!男子校での肉体的な疲労も吹っ飛んだ!
(ただ、男子校の男子な雰囲気に染まりすぎたせいで、女子大の可愛い会話のテンポに、少しついていけない自分がいるのは内緒だ。あと、昨日、うっかり女子寮で男子口調で返事して、少し奇妙な目で見られた……まあ、それも研究者の犠牲ってことで!)
私の次の野望は、男子女子力発電システムの実用化だ!未来は明るい!(たぶん)