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第2話 女子力低下!? 突然のエネルギー不足

「あれ、今日、電気のつきが悪くない?」


朝、リビングの照明がいつもより暗く感じたのは、一人暮らしの会社員サキだった。 気のせいかと思いながらコーヒーメーカーのスイッチを入れるが、起動音が以前より弱い気がする。


「まさか、また電力供給のトラブル?」


ニュースアプリを開くと、案の定、都心部を中心に電力供給が不安定になっているという速報が流れていた。原因は調査中とのことだが、ここ最近、頻繁に起こるこの事態に、サキは小さな苛立ちを覚えた。


サキは、その明るい笑顔とコミュニケーション能力の高さから、社内でも評判の女性だった。もちろん、それは彼女の女子力の高さの表れであり、常に安定した発電量を誇っていた。同僚たちがスマホの充電に困っている時など、よく彼女がエネルギーのお裾分けをしていたほどだ。


「まあ、私には関係ないか」


そう思おうとしたのだが、今日はなぜか、自分のリストバンドのランプがいつもより弱いような気がした。気のせいだろうか?


会社に出社すると、オフィス全体が昨日より張り詰めたムードに包まれていた。 電力不足の影響で、空調は最低限に抑えられ、パソコンの動作も心なしか遅い。


「おはようございます、サキさん!」


後輩の田中が少し疲れた顔で挨拶してきた。


「今日も節電しないとですね。スマホの充電、昨日完全にしておいてよかったです」


「おはよう、田中くん。本当に困るわよね」


サキはいつものように明るく返したが、心の中には小さな引っかかりがあった。 なぜか、今日は自分も元気に振る舞うことが難しい。


午前中の会議中、プレゼンテーションの資料を大きなスクリーンに映し出す際、映像が数回途切れるというトラブルが発生した。


「申し訳ありません!電力供給が不安定なようです」


技術的な担当者が慌てて対応する中、サキは自分のリストバンドをそっと見た。やはり、ランプの光は弱い。まるで、彼女自身の活力が低下しているかのようだった。




その日の午後、サキはクライアントとの重要な打ち合わせを控えていた。万全の状態で臨みたいところだったが、体のだるさが抜けず、集中力も散漫になりがちだった。


「どうしたんだろう、私……」


トイレの鏡に映る自分の顔は、いつもよりくすんで見える気がした。エネルギーが湧いてこない。


(なぜ?)


サキはここ数日の自分の生活を振り返ってみた。仕事は以前より忙しく、残業も続いていた。恋人とは少し口論が続いていて、電話で話すたびに小さなストレスを感じていた。睡眠時間も十分とは言えなかったかもしれない。


ふと、サキは最近上司にプロジェクトのことで厳しく注意された時のことを思い出した。普段はあまり気にしないようにしていたが、心の奥底では小さなショックを受けていたのかもしれない。


「もしかして……」


サキは、自分の内面の状態が、女子力発電に直接影響していることに気づいた。外見を磨いたり、社交的な振る舞いを心がけたりすることだけが女子力ではない。ストレスや悩み、心の状態も、エネルギーの生成に大きく関わってくるのだ。


打ち合わせの時間まで、まだ少しあった。サキは誰もいない会議室の椅子に深く座り、目を閉じた。


(まずは、深呼吸しよう)


サキはゆっくりと息を吸い込み、穏やかに吐き出すことを繰り返した。恋人との些細な衝突を思い出し、素直に謝るメッセージを送った。プロジェクトのことで注意されたことも、自分の成長の糧にしようと意識的に考え方を変えてみた。


数分後、サキは再び目を開けた。心なしか、胸の重さが軽くなったような気がした。そして、何気なく自分のリストバンドを見ると、ランプの光が、わずかに強くなっていた。


打ち合わせは、以前よりスムーズに進んだ。サキはクライアントの話を注意深く聞き、笑顔で的確な提案をすることができた。エネルギーが戻ってきたことで、コミュニケーション能力も自然と高まったようだ。


その日の帰り道、空には美しい夕焼けが広がっていた。サキは電話を握りしめ、恋人からの返信メッセージを微笑んで見た。「ごめんね。私も言い過ぎたかも。今度、ゆっくり話そう」


リストバンドのランプは、朝よりも明らかに明るく輝いていた。サキは穏やかな満足感を感じながら、夜空を見上げた。電力供給の不安定な社会でも、自分自身の内面を整えることで、エネルギーは再び生み出せる。彼女は、改めて女子力発電の奥深さを実感していた。




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