23:棒きれの真剣勝負
こんなことになるなら、この方が毎朝されているお父様との立ち合いを、もっと見学していればよかった。
構えからしてもう違う。この国の剣術と比較してしまい、どうしても差異を探ろうと様子を伺って、ついつい先手を打たれてしまう。
というか……そもそもの剣技が相手の方が二枚も三枚も上手ですわね。それがまた腹立たしいっ!
「きゃっ!」
剣が舞う。いえ剣じゃないわね。木の棒が、私の手を離れて宙を舞うのだ。
真剣とは違い、軽くてグリップも効かないお粗末な棒きれは、少し手元に仕掛けられると簡単に私の手を逃れて空高く飛んでしまうのだった。
……ちょっと言い訳が過ぎたわ。
そんな芸当、実力差があってこそなのよね。ええ、悔しいけど認めるわ。
彼は、強いっ!
「カリン様、いかがでしょうか? これであなたの二連敗。大人しく負けを認めては?」
「ふぅ、やだやだ。せっかちね。言ったはずよ――三回勝負ってね!」
私だって、こうなることは想定済み。
だからあらかじめ三回勝負と銘打って挑んでいた。
そして次こそ、三回目……もう後がない。
「か、カリン様……! 大丈夫ですか!?」
思わず駆け寄る子供たち。
強引に剣を外されたからまだ手が痺れる。正直、もうやりたくないっ!
だけど終わる訳にはいかないわ。
私の自尊心は、私自身が守らなければ!!!
棒きれを拾って、高らかに宣言する!
「そろそろ、本気を出すわ! さあ構えてっ!」
「へっ、子分の前だからって強がっちゃって……いいぜ、きな!」
「はァっ!」
本気も、本気よ!
さっきからずっと本気だった!
本気で――さっきまでの動きを本気だと思わせた!!
今の私はさっきまでよりも……速くて重いっ!
「おっ! おおっ!?」
カン! カン! カカン!
さっきまでと同じように棒きれがぶつかり合う。だけど少し違うのは、私の剣圧に、オージンが押されてるってところよ!
それでも一発も当てられないってのが気に入らないけどね!
ここまでブラフをかけてきたのに、少し驚かせるのがやっとだわ!
「はっ!」
袈裟斬りに一閃。わざと大振りに、意識をそこへ向けさせる。
まんまとオージンは袈裟斬りに釘付け。そこに対処しようと行動を起こした瞬間に――!?
えっ!?
突如、彼は剣ではなく、私の顔を見つめてきた。
吸い込まれそうな金眼が、まるで私の意図などお見通しといったようにギラりと光った。
「へっ、残念。もう慣れた」
「なにっ! あ……」
彼は手に持つ棒きれをくるんと一回転。それだけで、私のフェイントの袈裟斬りは止められてしまった。フェイント故に力を込めていないために、カツンと、これまでで一番軽い音を響かせた。
そしてトドメとばかりに、彼は剣を……私に振りかぶった。
私は剣を、空高く投げ捨てた……。
――勝ちを確信して、ね。
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