17:バスターズ結成!
「あなたたち、よくお聞きなさい!」
子供たちのたまり場。
そこにお立ち台をつくり、その壇上で私はみんなに呼び掛ける。
みんなが私に注目し集まったところで、私は彼らに問いかけた。
「みんな、この街は好き?」
突然、そのような漠然としたことを聞かれても戸惑うのはわかっている。私だってこんな質問で彼らの率直な意見を聞きたいわけじゃない。好きでも嫌いでもどっちでもいい。
質問の意図がわからずみんなが答えに詰まっている中で、さらに追い打ちをかける。
「この街を……守りたいとは思わない?」
周囲がざわつく。この街で何かが起ころうとしているのではないか。
そんな予感に誰もが顔を強張らせた。
いいわね。面白いくらい想像通りの反応。……でもまだ、笑ってはいけない。
ほっぺの内側を噛んでその痛みで愉悦の表情を固く閉ざす。
ただの演説ごっこだと思われないように、みんなを睨みつけて、大きな声で力強く言い放つ。
「ワックマン領は今、窮地に立たされているわ!」
今に始まった事じゃないけどね。
「助けは来ない!」
お金がないからね。
「物資も残り僅かだ!」
お金がないからね。
「だが諦めることは許されない! そうなれば……この地の全ては魔物共に蹂躙されるでしょう!」
辺りがどよめく。
魔物と聞いてより一層、みんなの表情には分かりやすく危機感が芽生えた。
当然よね。多かれ少なかれ、この地に住まう誰もが必ず魔物の被害を受けている。作物の被害や水質汚染で飲まず食わずの日々を送ることだって少なくない。
獰猛な魔物に追い回されるケースだってある。
――だけどもし、それらを駆逐することができたとすれば。
自分たちの手で、それらをやっつけることができたとしたら――!
「私たちは立ち向かわなければならない! これ以上魔物共にこの地を荒らされ続けるなんて、あってはならない! ならばどうする!?」
うーん、まだ反応がいまいちね。
もっと盛り上がってほしいのだけれど……。
「あ、あの……カリン様!」
「……何かしら?」
ここで一人の男の子が手をあげる。
私の予想では、ここで一気にみんなの感情が高ぶって雄叫びの一つでも上げてくれるものと思っていたのだけれど、私の言っている意味がどうも理解できないようで、このままじゃ焚きつけてもから回るだけになってしまう。
この子の意見でも聞いて、ワンクッション置こうと思った。
「もし魔物がいなくなったら、ごはんお腹いっぱい食べれる?」
「まあ、そうね。そうなるわね」
オオオッ!!?
途端に子供たちの反応が変わった。それは明らかに……私が作り上げたかった歓声だった。
さらに他の子たちからも質問が続く。
「喉がかわいたときにいつでもお水が飲めるの!?」
「もちろんよ。水質汚染は魔物の仕業ですもの」
オオオオオッッ!!!
「外で遊んでも怒られない!?」
「当り前じゃない。だって魔物がいなくなるんですもの」
オオオオオオオオオオオオ!!!!!
「おかねは!?」
「えっ?」
…………。
「おかねは貰える!? お小遣い貰えるっ!?」
「……」
…………。
「……」
…………。
「……貰えるッ!!!!!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!
「さあ皆の者! 立ち上がれ! 今ここに私とあなたたちの魔物討伐部隊の結成を宣言するわ! その名も『バスターズ』よ! ただしこれは大人たちには絶対にバレてはいけない秘密結社……! 漏洩者には厳しい罰があるわ! いいわね!?」
ハイッッッ!!!!!!
……結果オーライね!
わ、私のお小遣いを魔物の討伐報酬になってしまうのは……誤算だったけどね……!
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