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河童ライダー【完結】

河童ライダー5

作者: 家紋 武範

 河童ライダー、木郷(もくごう)(たけし)は改造人間である。

 彼を「きゅうり男」に改造し、出荷しようとした『シュッカー』は世界征服を目論む悪の秘密結社である。河童ライダーは世界の平和のためにシュッカーと戦うのだ!

 ゆけ! 河童ライダー!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ジャジャーン!


『シュッカー全滅!首領の最後』


◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 木郷孟は逮捕され、警察署に連行され取り調べを受けた。必死にシュッカーの存在を説明するものの、刑事は聞く耳を持たない。

 そのときであった。日本中のモニターというモニターに怪しき怪人の姿。それこそシュッカー首領である。彼は電波ジャックを行い、日本中に演説したのであった。


「はははははは! 聞こえるか木郷孟! これより日本人は全て処刑する。お前と最後の決戦だ! ここにきてワシを止めてみよ! さもなくばシュッカー爆弾を日本中に投下する!」


 なんという恐ろしい声明であろう? 全ての人々が震えあがった。それは取調室も例外ではなかった。


「まさか本当にシュッカーが存在していたとは」

「刑事さん、これがシュッカーのやり方なんです。オレに最後の戦いをさせてください!」


「バカやろう! 一般人にそんなことがさせられるか! ここは警察に任せておけ!」

「しかし……!」


 そこに一人の老年の男が入ってきた。


「まあそう叫ぶな。廊下まで聞こえたぞ」

「警部……!」


 取り調べの男が老年の男を警部と読んだ。警部は木郷の前に一枚のカードを置いた。


「これは、取り消しになったオレの免許証──」

「裏の駐車場には、お前のバイクも置いておいたぞ」


 そういって窓のほうを見る警部。木郷はその背中に語りかけた。


「行かせてくれるんですね?」

「だが誘拐の取り調べが終わっていない。五時間だ。五時間で帰ってこい。それまで上のほうは誤魔化しておく」


「五時間……」


 木郷が時計を見るとちょうど19時を、指している。つまり、0時には戻らないと行けないということだ。


「分かりました」

「うむ。頼むぞ。河童ライダー」


 木郷は廊下を走り裏の駐車場へ。するとそこには園田(そのだ)桃子が待っていた。


「孟さん。一人では行かせないよ」

「バカ。死ぬかも知れないぞ?」


「どうせ改造された体よ。それに孟さんと一緒なら怖くない」


 木郷孟は彼女へとスペアのヘルメットを渡した。


「ノーヘルじゃ捕まるからな。しっかりオレに抱きついとけよ」

「うん!」


 走る、走る、走る──!


 河童ライダーと、ピーチレディを乗せたバイクがシュッカー基地へと向かって。





 23時50分。警察署の取調室に残っていた警部は窓から外を眺めていた。

 すると西側の空が真っ赤に染まった。大爆発だ。警部は目を大きく見開いた。


「やったのか!? 河童ライダー!!」


 もくもくと煙が上がるその場所は人気のない山岳地帯だ。きっと木郷はわずかな時間でシュッカー基地を探しだし、首領を撃破したのであろうと推測された。


 しかし、時計が0時を指しても1時を指しても木郷は帰ってこなかった。


「警部……。逃げたのでは?」

「バカやろう! アイツはそんなヤツじゃねぇ!」


 警部が怒鳴ったその時。桃子に肩を支えられながら現れたのは、負傷した木郷孟だった!


「木郷……! お前──」

「警部すいません。約束の時間を守れずに」


 警部はおもむろに自分の腕時計を見た。


「バカやろう。俺の時計ではまだ23時59分だ」

「警部……」


 警部は涙を拭いて、今までの木郷孟に関する取り調べの調書を破り捨てた。


「警部。な、なにを?」

「バカ。木郷なんてヤツはもともといなかったんだ。そんなヤツは捕まえてなかった」


「し、しかし」


 警部は木郷と桃子の背中を押す。


「さあ。ここは一般人が入れる場所じゃない。出てった、出てった」


 何が起きたかわからない木郷と桃子が振り返ると笑顔で取調室の扉を閉める警部に全てを悟った。二人は喜んで警察署を出てバイクに股がった。


「桃子。帰ろう」

「ええ。孟さん」


 二人は夜の街へ向けて走り出した。


 ありがとう河童ライダー!

 君のお陰で日本は救われたよ。

 ありがとう! また、会う日まで!





 ウウーーン!


 突如、二人の後ろで鳴り響くサイレン。振り返るとミニパトから女性警官の声。


「前のオートバイ止まりなさい。前のオートバイ止まりなさい」


 慌てる二人。路肩にバイクを停めると女性警官が二人降りてきた。


「はい。無灯火ですよー。免許証だして」

「これは……シュッカーのアジトに突入したときランプが壊れてしまって……」


「じゃ整備不良ですね。キップ切りますから押して帰って下さいね」


 残念。河童ライダーと、ピーチレディは警官に叱られた。でもやっぱり河童ライダーはこうじゃなくっちゃネ。




【おしまい】

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後まで河童ライダーだった! 警部カッコよくて癖になりそうです。 最終話までお疲れさまでした!
[良い点] ついに迎えた最終回。 第一作を読んだとき、こんな大作になると誰が想像し得ただろうか。 河童ライダーよ永遠に! [一言] 真面目な話、ほのぼの大団円とオチまでつける手腕は、さすが家紋さまと感…
[良い点] 警部が……河童ライダーの理解者だったのですね。 「バカやろう。俺の時計ではまだ23時59分だ」 と言って調書を破り捨てるところ、格好良かったです。 そして、負傷しながら帰ってきた河童ライダ…
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