64 獅子心中の虫
ここの警備隊の隊長だった、小野隊長達と合流した俺達は、フードコートに集まり今後を話しあう。
集まった面々は、俺、小野隊長、ホウチュウ准将だ。
「ホウチュウさん、自衛隊はどうなっているんだ?」
「ライフラインの防衛で手一杯だね。とてもじゃないがゾンビを駆逐する事は難しいだろうね」
「暫くは立てこもるしかないか。隊長、街の様子はどうだった?」
「道路は壊れた車とゾンビで、まるでゴーストタウンのようだった。生存者も探したのだが、どこかに隠れているか集まっているかで、街には1人もいなかった」
「隊長はどこにいたんだ?」
「俺は異変を感じて、近くの公民館に避難したんだ。ここにいる皆はその時の人達だ。ゾンビが次々と増えて死を覚悟した時、彼等自衛隊が助けてくれた」
「自衛隊の人達は何故そんな所に?」
「私達はドクトルの研究に付き合う為に外に出たのだよ」
「研究?」
「ああそうだ。ゾンビの研究がしたいと聞かなくてね。そこで俺とミキ中佐が護衛に付いたのだよ」
「どんな研究か聞いても?」
「ああ、ゾンビ化したまま、人の意識を保てるようにする研究らしいよ」
そんな事が出来るのだろうか?
俺の事は話さない方がよさそうだな。
確証はないが、今のところそれに当てはまるからな。
それより気になる事がある。
「ミキ中佐とはどんな人物なんだ?」
「一言で言えば実直。真面目を絵に書いたような人物なんだよ。あのお嬢さんが、何故あんなに感情を剥き出しにしたのかが不思議でしょうがない」
斎藤は確かに難しい所があるが、あれほど人に対して感情を露わにするのは珍しい。
後で聞いてみないとな。
「ホウチュウさん達はこれからどうする?」
「暫くはここにいさせてもらえると嬉しいが。ドクトルの研究もあるのでな」
「わかったよ。怪しい事はしないでくれよ」
「了解した」
ホウチュウ准将は、そう言って席を立った。
後に残された俺と小野隊長で再度話し合う。
「隊長は信用出来ると思うか?」
「難しいな。何か隠している気がする」
「オレも同意見だ。様子見をお願いして良いか?」
「了解だ」
俺は小野隊長と一旦別れて、斎藤の下へ向かう。
一度話を聞いておかないと、またいつ暴れるかわからないからな。
「斎藤、ちょっといいか?」
「何?神谷君。私、忙しいんだけど」
と言うが、特に何をやっているわけではない。
多分、話をしたくないのだろう。
「ミキ中佐の事だが」
「何も話す事はないわ」
「そう言わずに、あいつと何があったか話してくれないか?」
「嫌よ」
「どうしてもか?」
「どうしてもよ」
「わかった。言いたくなったら話してくれ。じゃあな」
俺はその場から去る。
そのうち話してくれるだろう。
俺はその足で、避難して来た人と話している、梶君と石川さんの所へ向かう。
「知りあいか?」
「あっ、神谷さん。昔、家の剣術道場で一緒に習ってた2人です。東京に行っていたのですが、たまたまこっちに戻って来たところだったそうです。男性がホソヤで、女性がシマムラです」
「ホソヤ君に、シマムラさんか。よろしくな」
「はい。お世話になります」
「よろしくお願いします」
剣術道場にいたせいか、2人とも礼儀正しく挨拶をしてくれる。
「2人も強いのか?」
「いえ。石川には一回も勝った事ありませんよ。梶は相手になりませんが」
「何だって!勝負だホソヤ!」
「お前、俺に勝った事がないだろ?」
「昔の話だ!今は違うからな!」
「やめなさい、2人とも」
「シマムラ、すまない。梶を弄るのが懐かしくてな」
「裕に手を出すなら私が相手する」
「ごめんよ、石川。もうしないから」
仲良さそうに話している4人から離れ、最後に堀江に会いに行く。
堀江はさっき避難して来た女性達と、昼食の準備をしているようだ。
「堀江、ちょっといいか?」
「いいわよ。準備も大体終わったから」
堀江を連れ屋上へと移動する。
「何の用?告白かしら?」
「それはない」
「もうっ、神谷君ったら。こんなシチュエーションなんだからもっと期待させてよ」
「それはない」
「はぁー。もういいよ。それで?あの人達の事でしょ?」
「話が早くて助かる。堀江はどう思う?」
「うーん。やっぱりあの自衛隊の3人は信用できないね。何か隠している気がする」
「堀江もそう思うなら確定だな」
「ただの勘よ?」
「いや、堀江の人を見る目は信用出来るからな。それに俺に隊長、斎藤もいれて4人が信用出来ないと言う事はそういう事なんだろう」
これは確定だな。
あの3人には何かある。
これから気を付けないと、取り返しのつかない事が起きる気がする。
梶君達にも注意するよう言っておこう。
人が増えるのは良いが、面倒事も増えるのが難点だな。
だが引き入れてしまったからにはしょうがない。
何事もなければ良いが。




