58 迷子の怪異
防災センターを出た俺は、まず1階の店舗を見て回った。
最初は中央にある建物だが、10店舗ぐらいのブランドショップが入っている。
ゾンビは南側にあるエントランスから侵入したため、南向きにある店舗は壊滅的だ。
店舗の中は、抵抗したのか争った形跡が見られ、服や小物が散乱している。
そこには、1店舗につき2~3体のゾンビがいた。
そいつらを警笛で外に誘き出し、中に生存者がいないか調べてから扉を閉める。
北向きの店舗は比較的綺麗だった。
南側の異変に気付き逃げ出したのだろうか、店舗の中には誰もいなかった。
中央の建物の確認が終わり、次にモールの外側の店舗に向かった。
モールの一番北側にある店舗から、時計回りで回って行く。
北側の店舗も、先程の中央北の店舗と同じ様に、誰も中にはいなかった。
しかし、東側の店舗はエントランスが2ヶ所あるため、逃げる人が殺到したのだろう。
店舗の中にはゾンビが溢れていた。
ゾンビ共を警笛で外に誘き出す。
店舗の中を調べると、ゾンビになっていない女性店員の死体があった。
腹にナイフが刺さっているので、どさくさに紛れて殺されたか。
または、この状況に諦めて自殺したのか。
どっちにしろ、このクソッたれた世界に嫌気がさす。
女性の近くに入口のカギが落ちていたので、扉にカギを掛け、店舗の中に誰も入らないように封印する。
俺は店舗の前で手を合わせ、その場を後にした。
南東には食料品を扱っている店舗がある。
やはり食べ物がある所には、人が集まるものだな。
そこでは、至る所にゾンビが徘徊している。
そいつらを何回かに分けて外に誘導した。
老若男女50体はいただろうか、バックヤードにいた者を含め、全て外に出し扉を閉める。
店舗の中は、棚が荒れているものの、大体手付かずで残っている。
これなら暫くは保ちそうだなと考えていると、サービスカウンターの台の上にアホ毛が見えた。
何だ?と思い近付いてみると、そこには女の子がいた。
小柄な体に、体と同じ大きさのリュックを背負っている。
「誰だお前は?」
こちらに向けて背を向けていた女の子はビクッとなり、ゆっくりとこちらを振り返る。
「あ、あなたこそ誰ですか!」
ゾンビではないようだ。
でも何故こんな所に1人でいるのか?
「俺は神谷だ。ここで何をしている?」
「かみみやさんですね。あっ、すみません噛みました。私はカトウと言いますが、気付いたらここにいたんですよね」
こいつ絶対わざと噛んだな。
あれ?さっき死んでた女性店員に似ているような?
「どういう事だ?家族は?」
「わたしにもわかりませんよ。家族は・・・あっ、そうだ!お母さんに会いに行かなくては」
「あっ、おいっ!どこへ行く!」
「さようなら、かみみみやさん。すみません、噛みました。それでは」
入口へ向かって走り、外へ出て行く女の子。
俺は後を追って外に出るが、女の子はいなかった。
周囲を探すもゾンビしかいない。
あの体ほどもあるリュックなら、すぐわかるはずだが。
「おいおい。ゾンビだけでも精一杯なのに、そのうえホラーはやめてくれよ」
背筋が寒くなりながらも、調査を続ける事にした。
事の始めのメインエントランスを通過し、モール南側の店舗へ向かう。
そこは案の定、崩壊しており、扉のガラスや窓ガラスが割られ、パニックがあった事を伺わせる。
ただ扉が開いていたせいか、中にはゾンビはいない。
最初のクラクションでの誘導で、外に出て行ったようだな。
ゾンビが入らないよう扉を閉め、次は1階の最後、西側の店舗へと向かう。
西側には3店舗しかないが、それぞれが大きいショップだ。
最初に入ったショップは、インテリア雑貨を置いてあり、小物などが店内に並べられている。
店内では、店員だったゾンビがアーウー言いながらレジに立っていた。
ゾンビになってもレジに立つとはプロ根性だな。
だが残念ながら外に出ていただく。
次に入ったショップは、おしゃれなカバンやサイフを販売しているショップだ。
ここにはゾンビはいなく、店員も既に逃げ出した後みたいだ。
次が1階最後の店舗だ。
ここのショップには小物に加え、服等も売っている。
残念ながら俺が着るような服はない。
だがずっと警備員の制服を着ているので、そのうち着替えたい。
店内には3体ほどのゾンビがいたので、サクッと外に出してしまおうとしたのだが、様子がおかしい。
店舗の奥にある扉の前に集まり、扉をバンバン叩いている。
もしや生存者が?
扉の前にいるゾンビを外に誘導し、声をかけてみる。
「誰かいるのか?」
「その声、まさか神谷君?」
中から聞こえてきたのは、聞き覚えのある声だった。
そして、扉の中から颯爽と出て来たのは、俺の良く知っている人物。
元カノの 斎藤 千 だった。




