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3話目 『 金次郎さんの薪 』


今はどうなんだろう?

私が小学生の、えーと、確か、低学年位の頃、だったかな?

私が通っていた小学校ではこんな噂が流れていた。


『二宮金次郎が背負っている薪の数を数えて他の人と違うと不幸になる』


今なら馬鹿馬鹿しい噂だって笑い飛ばせるけどね。

あの頃は本当に他の人と薪の数が違ったら不幸になるって思ってた。

それである日、クラスは違うけど登校班が同じ、そうだなー・・・・・・・仮にチビ子としようか。

チビ子とチビ子のクラスメイトの、えーと、仮にノッポでいいか。

あ、私は仮にポチャ子ってことで。

それで、えーと、そう!

チビ子とノッポと私の3人で二宮金次郎の薪を数えることになった。


1つ、2つ、3つ・・・・・・・・・


私は13本。

チビ子とノッポは12本。

何度も数えなおしたけど、それは変わらなかった。


「あー!ポチャ子ちゃんだけ薪の数違うー!!」

「ポチャ子、近づくなよ!私達まで不幸になっちゃう!!」

「ポチャ子ちゃんと友達だと私達まで不幸になるから絶交だよ!!」


そう言って2人はケラケラ笑って、楽しそうに走っていった。

残された私はただ泣いていたっけな。

不幸になる事が怖かったんじゃない。

チビ子とノッポに絶交だって、友達じゃないって言われたことが悲しかったんだ。

まぁ、元々大人しい性格で、社交的じゃないし、見た目もぽっちゃりしていたし?

今思うと、虐めの標的になりやすい子だったと自分でも思うよ。

だから、チビ子とノッポにあんな嫌がらせされたんだと思う。

チビ子とノッポにとって私はいい玩具だったんだろうね。


あー、えーと・・・・・・さて。

それで、薪の数が2人と違った私が不幸になったかと言うと、別にそんな事無かった。

すっごく幸せかと言われると、別にそんな事無いけど、不幸かといわれれば違う。

ごく普通な、ありきたりな人生だと思うよ?


誰の目から見ても不幸になったのはチビ子とノッポの方。


二宮金次郎の薪の数が違ったのはチビ子とノッポの方だったんだ。

チビ子とノッポと二宮金次郎の薪の数を数えた後、チビ子とは別の登下校の班が同じクラスメイトの女の子が教えてくれた。

二宮金次郎の薪の数は13本が正解なんだって。


『二宮金次郎が背負っている薪の数を数えて他の人と違うと不幸になる』


って言う噂の『他の人』は、“一緒に数えた人”じゃなくて“今までに数えた全ての人”って事だったんだ。

今まで数えた人が13本だと言った中で2人だけは12本と答えた。

だから、不幸になった。


チビ子は、あの後単身赴任中の父親の浮気がバレて両親が離婚。

チビ子を引き取った母親は酷いヒステリー持ちで、夫の浮気による離婚で更に其れが酷くなってチビ子を虐待するようになった。

大きな畑を挟んだ先にある私の家まで、母親のヒステリックにチビ子を怒鳴る声が聞こえるほどそれは酷いものだったよ。

小学校を卒業すると同時に、チビ子は引っ越したからその後どうなったかは分からないけど。


ノッポの方は父親が小さな会社を経営していたんだけど、過労とセクハラ、パワハラで若い従業員の女の子を自殺に追い込んだ。

その人以外にも被害者は沢山いて、被害者やその家族全員が結託して訴えて、父親は逮捕。

ノッポの父親はそれ以外にも色々ヤバイ物に手を出していたって噂があった。

それで、ノッポの家は膨大な借金を背負ってしまった。

で、直ぐに夜逃げしてその後は不明。


これが、唯の偶然か二宮金次郎の呪いか。

それは分からないけど、つい最近テレビの中でノッポを見た。



恋人と一緒に実の娘を虐待して殺した母親として、ノッポを



もしこれが呪いだったら、2人の呪いは20年近く経った今でも解けていないみたいだ。




  *****

  

  

  

そう言うと少し悲しそうに笑って、ぽっちゃりした若い女性は蝋燭の炎を吹き消した。



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