第2章 異世界攻略は吸血鬼とともに
「ここはいわゆる異世界と呼ばれる場所ね」
「はぁ? 異世界ぃ?」
「次そんな反応したら、ぶっ殺すわよ」
「…………」
視線で射殺さんとするマロンの目つきが怖くて、天崎は思わず両手を挙げた。
狼戦士と戦った場所から少し移動した一行は、手ごろな倒木を見つけて腰を下ろす。そして休憩がてらマロンが経緯を話し始めたのだが……第一声が今の言葉だったため、現状把握率ゼロの天崎は、バカみたいな声を漏らしてしまったというわけだ。
ぶっ殺す云々は冗談だと信じたいが、天崎はマロンの右手に握られている杖から目が離せなかった。
敵意を収めてくれたマロンが、説明を続ける。
「天崎はMMORPGって知ってる?」
「まぁ、大まかな意味はな」
「あっ、私、そのMMOってのがよく分からないです。RPGは知ってますけど」
元気よく手を挙げたリベリアの質問に、天崎が答える。
「MMOってのは、確か『大規模多人数同時参加型オンライン』……だったっけ? 簡単に言えば、不特定多数の人間がインターネットを通じて一緒にするゲームのことだよ。って、まさか……」
この段階でMMORPGという単語を出した意図に気づき、天崎は驚愕した。
マロンも肯定するように、神妙に頷く。
「察しがいいわね。ここはある意味MMORPG……ゲームの中の世界だと思ってもらっても構わないわ」
倒木に腰を掛けたまま、天崎は空を仰いだ。
葉の間から差す木漏れ日は暖かく、耳をすませば鳥の囀りが聞こえてくる。鼻腔をくすぐるのは草の匂い。手の甲を抓ってみたが……普通に痛かった。
「今流行りのVRってやつか? にしてはやけにリアリティが高いな」
「VRじゃなくて異世界って言ってるでしょ? 他人の説明はちゃんと聴けよボケ」
「…………はぁ?」
「よし、殺す」
立ち上がったマロンが、杖の先端を天崎に向けた。
先ほどの狼戦士がどうなったのか、忘れたわけではない。丸焦げになった自分の姿を想像しながら、反射的に両手でガードしたものの……天崎が炎に包まれることはなかった。どうやらリベリアが仲裁に入ってくれたようだ。
「まぁまぁ。私も異世界というものに詳しくはありませんから、是非とも説明をお願いしたいです」
「そうね」
リベリアに諭され、マロンは素直に杖を下ろした。
いくらなんでも対応が違いすぎやしないかと、天崎は口を尖らせた。
「まず最初に、私がよくおののき荘を留守にしている理由は、いろんな異世界を旅してるからなの。職業は主に魔法使い。異世界ごとで使える魔法が違うから、コレといった明確な立ち位置は説明できないんだけど」
「…………」
危うく二の轍どころか三の轍を踏みそうになり、天崎は無理やり言葉を呑み込んだ。
だが何の前情報もなく異世界だの魔法だのと耳にすれば、天崎でなくとも相手の頭を疑ってしまうだろう。
「それで今回、この世界を旅することになったんだけど……正確に言えば、ここは異世界であって異世界ではないの」
「異世界であって異世界ではない?」
「人為的に造られた世界……というか『空間』と言った方が正しいのかもしれないわね。ゲームでいったらサーバーみたいなものよ。とある異世界の住人たちが仮想の世界を造って、今の私たちはその中にいるってわけ」
「そんなことが……できるのか?」
「私たちが生活している世界ではできないでしょうね。けども、異世界にはいろんな技術を持った住人たちがいる。異なる世界で生きる私たちには、想像もできない技術よ」
理解できそうで、できない。マロンが何を言っているのか分かりそうで、分からない。
しかし疑ってばかりいては話が進まない。天崎は自分の中の『常識』もしくは『固定概念』を一度放棄して、質問を投げかけ続けた。
「なんでそんな世界を造ったんだ? 何が目的なんだ?」
「単なる道楽のようなものよ。この世界の創造者とは別に複数の出資者がいて、その人たちが冒険者を雇って、誰のチームが一番早くクリアできるかを競ってるってわけ。簡単に言ってしまえば競馬ね。世界の創造者は競馬場の経営者。冒険者の雇い主は馬主。そしてレーンを走ってる馬は私よ。観客のように賭けをしている人たちもいるみたいなんだけど……私は知らないわ」
「じゃあこの世界には、高槻以外にも雇われた冒険者がいるってことなのか?」
「そういうこと。私たちが住んでる世界じゃなくて、また別の異世界から呼び出された冒険者たちがね。数は二十チームって言ってたかしら? 今はどうなってるか知らないけど。ちなみにさっきの狼の群れはモンスターで、いわゆるNPCね」
もろゲームの世界だな。と、天崎は感じた。
「そのクリアって、なんなんだ? RPGらしく、魔王でも倒したら終わりなのか?」
「うん。当初の目的は、最終の地にいるラスボスを倒すこと……だった」
「だった?」
と、ここでマロンの表情に陰りが差した。
落ち込んでいるというよりは、トラブルに巻き込まれてうんざりしたような顔だった。
「とある一チームが卑怯な裏技を発見してね、瞬く間にレベルを上げていったの。それですぐにラスボスを倒しちゃったんだけど、当然そのチームと雇い主以外は猛抗議よ。最終的に折れた運営側は、ゲームの趣旨を変えたわ。今は最後の一チームになるまで殺し合う、サバイバルになってるの」
「殺し合うって……」
「安心して。この世界で死ぬことは、本当の死じゃない。モンスターに殺されようが参加者に殺されようが、この世界からの脱落だけを意味するの。二度とゲームに参加できない条件付きでね。どんな大怪我を負っても、元の世界では治ってるはずだわ」
とはいえ脱落するためにわざと死ぬことはできないなと、天崎は思った。
最初目覚めた時に打ち付けた後頭部や、裸足の裏から得る痛みは本物だ。この痛みが死に達するものとなると……想像すらしたくなかった。
「サバイバル……あっ、ということは、先ほどの人たちも参加者のチームだったんですね?」
「そういうことよ」
先ほどの人たち、と言われても、天崎にはピンとこなかった。
「何の話だ?」
「天崎さんが目覚める前、マロンちゃんを襲っていた輩がいたんですよ。私も応戦したんですけど、寸でのところで逃げられてしまって……」
「いえ、さっきはリベちゃんのおかげで助かったわ。本当にありがとう」
「いえいえ、お構いなく」
姿勢を正して丁寧にお辞儀するマロンと、照れながら手を振るリベリア。
今さらながら、本当に友人同士だったんだなぁと天崎は思った。
「本当は私の他にチームメイトが三人いたんだけど、奴らにやられてしまったの。で、私も殺されそうになった瞬間に、リベちゃんを召喚したってわけ」
「召喚なんてできるのか?」
「もちろん、ゲームみたいな神獣や召喚獣じゃないわよ。言い換えれば『助っ人』ってところかしらね。参加者は全員、他の世界から二人まで助っ人を呼べる権限を与えられているの。知り合い限定だけどね。切羽詰まってたってこともあったし、素で身体能力の高いリベちゃんに助けを求めたのよ」
「なるほどなぁ……」
仮想世界のルールに関しては理解を放棄するとして、マロンの行動には合理性があった。
自分が殺されそうになった時、知り合いの中で誰か助っ人を呼んでいいのならば、天崎も間違いなくリベリアを召喚すると思う。それだけ、リベリアの戦闘能力には信頼を寄せていた。
ただ、どうしても納得いかないことがあった。
それはまだ話題に出てきていない名前だ。
「リベリアを召喚できたんなら、俺は必要なかったんじゃないか?」
「私はアンタなんか呼んでないわよ?」
「???」
じゃあ何で俺は異世界にいるんだ? と言いたげに、天崎は首を捻る。
マロンが召喚していないのなら、天崎が異世界にいる理屈はないはずだ。
「天崎さんがこの世界に来た理由について、私なりに自論があるんですが……」
するとリベリアが、神妙な面持ちで語りだした。
「私と天崎さんの身体の中には、同じ『完全なる雑種』の血が流れています。そのせいで天崎さんも引っ張られてきたのでは?」
「つまり、俺ってただ巻き込まれただけってこと!?」
「なるほどね。アンタの血統のせいで、私の貴重な召喚枠を一つ無駄にしたってわけか」
立ち上がったマロンが、ゆっくりと杖を天崎に向けた。
そして抑揚のない声で宣言する。
「巻き込んでしまった非は私にある。お望みなら、すぐにでも元の世界に帰してあげるわよ」
「えーっと、高槻さん? 元の世界に帰る方法ってどんなのですかね?」
「方法は二つ。死ぬか、クリアするか」
その瞬間、杖の先から稲妻が奔った。
天崎が腰かけている倒木の一部が、鮮やかに燃え上がる。
「熱っつ! なんで熱いの!? さっきは全然大丈夫だったのに!」
「あれは敵対していたモンスターを倒すためだったからよ。味方にダメージはいかないようになっているわ」
つまり今は、天崎のことを敵と見做して魔法を放ったというわけだ。
いくら簡単な方法だとはいえ……あの業火の中でもがき苦しみたくはなかった。
目を泳がせた天崎は、仕方なく残った選択肢を選び取る。
「高槻さん? できればクリアする方法で帰宅したいのですが……」
「そう? 悪いわね。仲間は多い方が有利だし、歓迎するわよ」
くそっ、さっきはお荷物みたいなことを言っていたのに!
たった一撃で上下関係を認識させられた天崎には、反論する余地などあるはずはなかった。
「じゃあスマホは持ってる? いつ帰れるか分からないから、知り合いとかにしばらく家を空けるって知らせた方がいいかもね。捜索願い出されたら大変だもの」
「えっ? 異世界なのに携帯が通じるんですか?」
「時間の流れが少し違うみたいで、通話はできないわ。でも、メールみたいにメッセージを残すことはできるの」
「そうなんですか。なら私はお店へ、しばらく休みますって連絡入れておきましょうかね」
そう気軽に言って、リベリアは自分のスマホを取り出した。
リベリアが気に掛けるのはバイトくらいだし、捜索願いを出す人もいない。天崎も数日くらいなら大丈夫だろうが……それでも、出席日数が削られるのは心穏やかではなかった。
うんざりしながらも、安藤あたりに事情を説明しとくかと、天崎もスマホを操作する。
「わっ! 天崎さん、なんですかその待ち受け! めちゃくちゃ可愛いじゃないですか!」
画面を覗き込んできたリベリアが、嬉々とした声を上げた。
興味を示したのか、マロンも寄ってくる。
「円さんの笑顔なんて、激レアじゃないですか! 後でくださいよ!」
「か、可愛い……」
女子二人が興味津々で画面に食いついてるのを見て、天崎は深いため息を吐いた。
天崎からしても笑顔の円はとても可愛いとは思うが、そこまで声を上げることなのだろうか? 女子の美的感覚というものが、未だによく分からない。マロンにいたっては、恍惚とした表情でホーム画像を眺めているし。
「し、仕方ないわね。私のラインIDも教えるから、後で送りなさいよ」
「……分かったよ」
別に必要もないマロンのIDを手に入れた天崎だった。
「ってか高槻。お前、学校は?」
「籍はまだ残ってるけど、ほとんど行ってないから間違いなく留年ね。最悪退学」
「未来ある若者が、そんなことでいいのかよ……」
「なーんかね、やる気なくなっちゃった。異世界を冒険してた方が楽しいし。それに報奨金も出るから、異世界攻略って案外がっぽり儲けられるのよ」
嫌らしい笑みを見せたマロンが、指で輪っかを作った。
そんな彼女の考え方に、天崎は呆れたりしない。むしろ自分のやりたいことが早期に発見できて、羨ましいとすら思った。
ただ、それとこれとは話が別だ。
「マジか。賞金なんて出るのかよ。少しでいいから分け前を寄こせよ」
「なに言ってんの、当たり前でしょ? こっちが無理言ってお願いしてるんだから、ちゃんと謝礼はするわよ。ま、賞金なんて上位に食い込まないと出ないんだから、分け前の話は終わった後でね」
「お前って奴は……」
感動してホロホロと涙を流す天崎であった。
「私がリベちゃんに助けを求めた理由と、この世界の説明はだいたいこんなところね。さっそく冒険に出かけたいとこだけど……陽も傾きかけてきたし、今日は宿を取って休みましょう。三十分ほど歩いたところに、大きな街があるわ」
野宿は嫌だと同意した二人は、歩き出したマロンの後についていく。
その途中、天崎は先導するマロンの背中に問いかけた。
「この仮想世界って、どれくらいの広さなんだ?」
「正確には分からないけど、北海道くらいの面積よ」
「広ッ!」
徒歩で隅々まで探索するのなら、数年単位は必要となる冒険だった。
「っていうか参加チームは二十個なんだろ? そんな広大な土地にたった二十チームなんて、遭遇するだけでも奇跡みたいなもんじゃないか?」
「だからゲームの趣旨は変わっても、目的地は同じなの。最終の地にはラスボスに代わって、例の卑怯な方法でクリアしたチームが待っているはずだから。私たちはレベルを上げながら他の参加者を殲滅して、そこを目指せばいいわけよ」
「なるほどな」
反射的に納得してしまったものの、よくよく考えれば驚異である。
最終の地とやらがどこにあるのかは知らないが、最後の一チームになるまで、いったい何日かかることやら。
「移動に関しては、私の魔法があるから安心していいわ。最終の地の近くまではひとっ飛びだから」
「その魔法とやらで、今から行く街まで飛んで行けないんですか?」
「それも可能だけど、できるだけ二人にはレベルを上げてほしいからね。モンスターが現れたら率先して倒してちょうだい」
モンスターと耳にして、天崎は先ほどの狼の群れを思い出していた。
天崎が狼に食らわせた攻撃は、体勢を崩しながらの蹴りが一発だけだった。下顎への渾身の一撃だったはずなのに、まったくダメージが入っていなかったような気がする。これからもあんな化け物が出てくるなら、果たして倒すことなどできるのだろうか?
「ってか、レベルってなんだよ。ゲームみたいに経験値を稼いでレベル上げなんてできるのか?」
「レベルだけなら、アンタにも見えてるでしょ?」
当然のように言われても、未だ天崎はこの世界の常識に慣れていない。
言われるがまま、目を凝らしてマロンとリベリアを見てみると……確かに、頭の上に数字が浮かび上がってきた。
高槻真論、レベル53。リベリア=ホームハルト、レベル5。
そして自分のレベルは感覚的に分かる。天崎東四郎、レベル1。
「最初は誰でもレベル1で、経験値さえ手に入ればレベルは無制限に上げられるわ」
「無制限って……じゃあレベル上げたもん勝ちじゃねえか」
「いいえ。レベルはただの目安。この世界で大事なのは、ステータスの方なの」
そう言って立ち止まったマロンが、地面に落ちている小枝を拾い上げた。
「レベル1がその冒険者の素の強さで、レベルを上げるごとにステータスが上乗せされていくって設定なのよね。でも、その冒険者個人の成長限界が来ると、ステータスは上がりにくくなっていくの。だからレベルだけ上げても無意味。ちなみに相手のステータスを見る魔法は一番簡単だから、すぐにでも覚えられるわ」
マロンが拾った小枝で地面に数字を書き始める。
「一般成人男性の基準値は、だいたいこんなものね」
『一般男性、レベル1。
HP:1000/1000 MP:0~100/0~100
腕力:100 敏捷性:100 耐久力:100 賢さ:100 体力:100 精神力:100 魔力:0~10 運:10』
「ま、こんな完全平均な人間はいないけど」
「MPと魔力に振り幅があるのは?」
「私たちの世界には、魔法って概念がないでしょ。だから大抵の人はMPを持っていないんだけど、稀にある人もいるからね。魔力も同じよ」
確かに日常生活でMPなど使う機会はない。
続いてマロンは、天崎の顔を凝視する。すると「へぇ~」と感心したような声を上げて、ステータスを書き始めた。
『天崎東四郎、レベル1。
HP:3022/3025 MP:0/0
腕力:235 敏捷性:149 耐久力:515 賢さ:102 体力:622 精神力:173 魔力:2 運:5』
「なんでちょっとダメージ食らってんの!?」
「裸足だからじゃない? 靴を履いてないから、弱い毒沼を歩いてるもんでしょ」
街に着いたら回復魔法で治してあげるわとマロンに言われたが、どちらかといえば先に靴が欲しい心境だった。
「でも、このステータスは誇っていいわよ。種目にもよるけど、オリンピック選手を軽く凌駕する数値だわ」
「……たぶん先週の血が抜けきっていないんだろうな」
先週の頭、天崎はとある事情から、自らに眠る吸血鬼と悪魔の血統を覚醒させた。最終的に事は収め、普通に日常生活を送れる程度までには鎮静化できたが、それでも完全にゼロになったわけではない。わずかに残った人外の力は、時間に解決してもらうしかないのだ。
自分の身体なのに、まるで自分の身体能力じゃないような気がして、天崎は素直に誇ることはできなかった。
「ちなみにリベちゃんのはこれ」
『リベリア=ホームハルト、レベル5。
HP:15889/15889 MP:927/927
腕力:5281 敏捷性:14403 耐久力:3819 賢さ:127 体力:4211 精神力:210 魔力:70 運:25』
「チートじゃねーか!」
「そりゃ吸血鬼だもん。人間が身体能力で勝てるはずないわ」
それもそうだが、賢さですら負けているのは、天崎のプライドも傷つくというものだ。
後ろで自慢げに胸を張っているリベリアが、妙に腹立たしかった。
「ってかお前、魔法使えるの?」
「さぁ? 使えた覚えはないんですけどねぇ」
「おそらく吸血鬼の特性が魔力として表れてるのよ。魔法ってのはなにも、火を出したり空を飛んだりするだけじゃないからね」
そういうものなのかと、天崎は無理やり納得した。現実世界で魔法を使う予定はないので、別に羨ましくはない。
小枝を捨てたマロンが再び歩き出した。二人もその後ろに続く。
「そういえば、まだ聞いてませんでしたね。この世界って名前はあるんですか?」
「ええ、あるわよ。なんでかは知らないけど、異世界の奴らって他の世界に女性の名前を付けたがるのよね」
前方を見ると、木々の間から強い日差しが漏れている。どうやら森の終わりのようだ。
森を抜けると、そこは草原だった。緩やかに隆起した丘に、踝まで伸びた雑草が生え渡っている。遠くの方には、うっすらと雪の積もった山脈。そしてその手前辺りに、マロンが言っていた街があった。
絶景だ。絶景ではあるが、見晴らしだけならどこかしら海外で拝めそうな風景である。
とはいえ、普段は民家が密集している住宅街に暮らす天崎にとっては、「おー」と感動が漏れるほどの素晴らしい眺めだった。
大自然に圧倒されながら周囲を見回していると、一歩前に出たマロンが振り返る。
そして得意げに笑って、この異世界の名前を宣言した。
「ようこそ。仮想世界『クロウディア』へ」




