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ドラキュティックタイム  作者: 秋山 楓
第3話『エンゼル・ヘンジェル』

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第5章 ダブルデート

 土曜日。


 参拝客や観光客で賑わっている神社の境内で、天崎と安藤とリベリアの三人は、何をするでもなく備え付けのベンチに座っていた。


 時刻は正午過ぎ。天気は雲一つない快晴。十一月初旬だというのに、強い日差しを浴びた肌からは汗が滲んでくる。夕方から一気に冷え込むことさえなければ、まだまだ半袖で十分だなと、天崎はぼんやり考えていた。


 ともあれ、休日に境内でボケッとするに至った理由は、隣で鼻提灯を膨らませて舟を漕いでいる吸血鬼にあった。


 昨夜、つまり金曜日の夜、突然リベリアが天崎の部屋を訪れて、両手の平を合わせるやいなや土下座しそうな勢いで懇願してきたのだ。


『天崎さん、一生のお願いです! 明日、私の友達たちとデートしてください!』


 まったく、この吸血鬼はいったい何回転生すれば気が済むのやら。

 あまりの唐突な申し出に二の句が継げなくなった天崎は、ひとまず説明を求めた。


 リベリア曰く、彼女のバイト先の女子大生二人が、天崎と安藤を一目見ていたく気に入ったらしく、紹介してほしいと言われたとのこと。正確には女子大生のうち一人が、安藤にご熱心であるもよう。


 しかしリベリアは安藤の連絡先を知らないため、天崎に頼み込んできたというわけだ。


 ただ、いきなり一対一で会うのはあちらさんが二の足を踏んだみたいで、結局付き添いという形で天崎も巻き込まれてしまった。向こうも二人組で来るらしい。


 つまり本日は、リベリア仲人のダブルデートだった。

 しかも相手は女子大生。高校生の天崎にとっては、ある意味未知の世界の住人だ。


 一応、相手とは一度だけ顔を合わせている。が、あの時は珍妙なコスプレをしていたため、普通の姿を見るのは今日が初めてだ。ただの付き添いとはいえ、心が高ぶってしまうのも無理はない。


 ならば、今日の主役はどんな面持ちなのか。気になって横を一瞥してみたのだが……安藤は仏頂面のままスマホゲームを嗜んでいるだけだった。


 友人の期待外れな反応に、天崎は肩を落とした。


「安藤。お前、緊張とかしてないのか?」

「なんで?」


 チラッと横目で天崎を窺いながら、短く答える。いつも通りの反応だった。


 いや、確かに天崎は、本日の主役はお前だと一言も伝えていない。女子大生に気に入られているという事前情報を与えないままデートに臨み、最終的に暴露することでどんな反応をするのか見てみたかった、という天崎の悪戯心が芽生えたからだ。


 なのにこんな平時と変わらない態度を取られては、さすがに面白くない。

 やっぱり中身悪魔の奴は分かってないなぁ。と言いたげに、天崎は安藤に諭した。


「だって女子大生だぜ、女子大生。いつも見てる同い年の女子とは違って、ワンランク上の存在なんだぞ。緊張しないわけないだろ」

「女子大生に夢見すぎだろ……。僕たちと二つ三つしか変わらないんだから、何も特別なことはないよ」


 ため息混じりで言う安藤を見て、天崎はようやく思い出した。


 そういえばコイツ、姉が二人いるって言ってたっけ。しかも二人とも県外の大学へ通っているらしく、今は実家には住んでいない。故に天崎は、会ったことがないどころか顔も知らなかった。


 安藤が平静平坦としている理由が判明し、天崎はつまらなさそうに青空を仰いだ。


 待ち合わせまで、まだ少し時間がある。暇つぶしがてら、天崎は先日の出来事を何気なく報告した。


「そういえば、この前天使に会ったぞ」

「天使?」


 スマホを弄る手が止まり、安藤が訝しげな表情を向けてくる。

 少なからず興味があると受け取った天崎は、簡単に説明を始めた。


「下界に降りてきてパトロールするんだってよ。地上に存在してはいけない存在を取り締まるために、だってさ。まったく、無関係な身としてははた迷惑な話だよな。そいつのせいで、おののき荘二号棟が全壊してさ……」

「おののき荘二号棟!?」

「……そっちは食いつくんだな」


 今の狼狽っぷりは、出会ってから初めて見たような気がした。

 まあ、気持ちは痛いほど分かる。


「ともあれ、天使が地上に降りてくることは稀にあるよ。もちろん目撃するどころか、会って話をするなんて滅多にないけど。なんせ十年単位くらいでしか見回りに来ないし、数もそうそう多くはない。運が良かったのか悪かったのか、貴重な経験をしたものだね」

「俺の血に引かれたって言ってたけどな」

「なるほど」


 と言って、安藤は再びスマホゲームに視線を落としてしまった。


 どうやらそれほど大した出来事ではなかったようだ。街の行く末を見守っている悪魔が言うのだから、間違いないだろう。少なくとも、あの天使が悪さをしない限り放っておいても問題ないと、天崎は結論付けた。


「というか、リベリアさんは大丈夫なのかい? こんな快晴の真昼間に外出して」

「さぁ?」


 首を傾げた二人は、横で寝息を立てているリベリアに視線を移した。


 今日は長く太陽の下にいる覚悟なのか、珍しくデニムパンツを穿いている。上はUVカットのパーカーで、手には同じく肘の辺りまであるアームカバー。頭と翼が生えている肩甲骨以外は、絶対に太陽に晒さないと誓った完全防備だった。


 また、顔は顔で露出度が極端に低い。サングラスに日傘にサンバイザーである。


 諸事情により、リベリアはほぼ吸血鬼の『完全なる雑種』になってしまった。純粋な吸血鬼よりも太陽に対する危険度が下がったとはいえ、気化する可能性がある屋外で居眠りできる神経は、ちょっと理解できない。人間でいったら、炎に囲まれたベッドで就寝するようなものだろう。


 呆れながら観察していると、突然リベリアがピクッと耳を震わせた。

 そして鼻提灯が割れるやいなや、唐突に立ち上がる。


「おっす、リベリベ。私服でもコスプレしてるって、本当だったんだね」

「こんにちはです! ミコミコさん、マジョマジョさん」


 女性が二人、こちらを見てにこやかに笑っていた。


 どうやら待ち合わせていた女子大生らしい。つーか、お前はご主人様を待ってた忠犬かよ。と、天崎はリベリアに突っ込んでやりたくなった。


「そしてこっちが、この前お店に来てくれた天崎君と安藤君だね。あたしは……リベリベがミコミコって呼んでるから、それでいいや。『ファンタジースクエア』で巫女のコスプレしてるから、ミコミコって呼ばれてるんだ。よろしくね」

「うふふ。じゃあ私はマジョマジョって呼んでもらおうかしら」


 リベリアに負けないくらい元気に挨拶するミコミコと、その斜め後ろで上品に笑うマジョマジョ。心の準備が整っていなかった天崎は、二人のオーラに気圧されながらも、立ち上がって一礼した。


「えっと……俺はリベリアの友達の天崎です」

「同じく友人の安藤です」


 危うくはじめましてと言いかけたが、それも無理なからぬこと。


 巫女装束のミコミコ、魔法少女のマジョマジョ改め、天崎たちの前に現れたのは普通の女子大生だったのだから。


 ミコミコは元気溌剌な発声と相まって、とてもボーイッシュな恰好だった。

 上はチェックのネルシャツに、下はデニムのハーフパンツ。ショートの頭には、今どき見ないハンチング帽が乗っている。生き生きとしているその表情は、年上とは思えない少年のような爽やかさがあった。


 対してマジョマジョは、実年齢以上の落ち着きがあった。

 紺色のワンピースは足元まで届き、全体的にお淑やかな印象を受ける。肌が弱いのか、リベリアと同じように手袋と日傘を差していた。


 女子大生二人の容姿をまじまじと眺めていた天崎は、ふと視線に気づく。

 ミコミコが、ニヤニヤと笑みを浮かべて天崎を見つめていた。


「うっふっふ。なんだい天崎君。女子大生たちの美貌に見惚れてしまったのかい?」

「い、いえ、そういうわけでは……」

「でも残念でした! ミコミコちゃんのバストはAカップなのだ!」


 そう言って、ミコミコは何故か泣きそうになりながら胸を張った。

 確かに真っ平だった。


「ミコミコ。泣くくらいだったら、自虐ネタなんて言わなきゃいいのに」

「そうですよ。胸の大きさで女性の魅力が決まるわけじゃないんですから」

「うぅ、そう言ってくれるのは天崎君だけだよ……」


 涙を流したミコミコが、天崎と熱い握手を交わした。

 あっ、この人のキャラクターがだいたい分かった。と、天崎は察した。


 そして安藤が視界の端からじっとこちらを睨んでいる理由は、何となく理解できている。少し前、女性の胸は大きい方が魅力的だと豪語した記憶があるような、ないような……?


 ともあれ、今日はデートである。日頃から気取った態度の安藤を揶揄うチャンスだ。

 イヤらしい笑みを見せた天崎が、安藤の肩に腕を回した。


「そんな顔してられるのも今のうちだぜ、安藤君」

「何が言いたいんだ君は。気色悪いな……」


 露骨に顔を歪めた安藤が、天崎の腕を払いのけた。どうやら彼はまだ、女子大生とデートをするという意味を理解していないようだ。


「そんじゃ五人もいて映画とかあり得ないから、まずはボウリングに行こう!」


 ミコミコの元気な掛け声とともに、一行は境内を後にした。


 休日の街はそれなりに人通りが多く、歩道を歩く一行はペアに分かれた。


 最前列には、本日の主役である安藤とマジョマジョ。続いて天崎とミコミコ。そして最後尾にリベリアがついてくる。


 ただ天崎は、自分が一番後ろの方がよかったんじゃないかと、歩いている途中で気づいた。なぜなら背後のリベリアが、器用にも眠りながら歩いているのだ。もし突然倒れても、気づかないかもしれない。


「天崎君。今日は貴重な休日に来てくれて、ありがとね」


 隣を歩くミコミコが、下から覗き込むように見上げてきた。

 不意に顔を近づけられた天崎は、ドギマギしながら返事をする。


「構いませんよ。リベリアの頼みでしたし、俺も楽しみにしてましたから」

「ふーん。リベリベの頼みねぇ」

「?」


 意味深に呟いたミコミコが、悪戯を思い浮かべた少年のように細く微笑んだ。


 やがて一行は、この近辺では一番大きいアミューズメント施設へと到着した。


 まずはミコミコの要望通りボウリング場へ。男女混合の二チームに分れてスコアを競う。チーム分けは当然、天崎ミコミコペアVS安藤マジョマジョペア。リベリアはボウリング場の騒音に一度は目を覚ましたものの、再び眠ってしまったのでそっとしておいた。


 結果は天崎ミコミコペアの圧勝だった。しかも交代に投げていたにもかかわらず、二百二十スコアという高得点を叩きだす。天崎は元より、ミコミコも運動神経が良いのかもしれない。


 二ゲームほど終えた後、次は同じ施設内のカラオケに行くことになった。

 だがここで、安藤が二の足を踏む。


「君がさっき言っていたことは、こういうことだったのか……」


 顔を赤くさせながら、安藤は天崎を睨んでいた。


 意地の悪い笑みを浮かべた天崎は、心の中でビンゴと叫んだ。女子大生とデートっていうからには、コースにカラオケが入ってることくらい容易に想像できる。そして大悪魔である安藤の性癖も、少し前に本人から聞いていた。


 安藤曰く、悪魔は歌声に性的興奮を覚えるらしい。


 躊躇う安藤を天崎とミコミコが強引に引っ張り、無理やり部屋へ押し込める。嫌そうな顔はしていたものの、処世術として空気を読むことに長けている安藤は、不承不承ながらも席へ座った。


 また、この時点でさすがに安眠できないと悟ったのか、リベリアが目を覚ます。

 コスプレ喫茶というマニアックな店で働いている同志だからか、三人は終始アニソンを選曲していた。


 そして安藤はというと、ノリノリとはいかないまでも、女の子が歌う歌に合いの手を入れていた。さらにマジョマジョとデュエットするという無謀。カラオケボックス内の照明がもう少し明るければ、火が出るほど顔を赤らめている安藤の姿を拝むことができたであろう。


 やがて終了時間が来て、一行はカラオケボックスを後にした。最後に部屋から出た安藤は、どっと疲れたように肩を落とす。天崎が気遣うと、本気の拳から繰り出される無言の腹パンが彼を襲った。


 それからビリヤードとダーツを少しだけ嗜み、ゲームコーナーを一通り回った。


 アミューズメント施設を出る頃には陽が傾きかけており、国道を走る車もちらほらとスモールランプを点けていた。


「そんじゃ、歩きがてら帰りましょー!」


 ミコミコの提案で、近くの森林公園を歩くことになった。


 途中、尿意をもよおした天崎が、公園内の公衆トイレへと立ち寄る。戻ってみると、ベンチにはミコミコとリベリアしかいなかった。


「あれ、安藤とマジョマジョさんは?」

「二人でその辺歩いてくるって」


 確かに今日の主役はあの二人だったわけである。安藤に会いたかったマジョマジョにとっては、最後くらい二人きりになりたかったのだろう。


 そう納得した天崎は、ベンチの空いてるスペースに座ろうとした。


 が、天崎が近づくとミコミコはリベリアから離れ、今まで自分が座っていた場所を軽く叩いた。どうやら真ん中に座れと言っているらしい。


 仕方なく、女の子二人に挟まれる形で天崎は腰を下ろす。

 するとミコミコが腰を低くし、天崎の顔を下から覗き込んできた。


「にしてもリベリベ、ずっと眠ってるよね。起きてたのってカラオケの時くらい。疲れてたのかな?」

「夜型なんですよ、コイツ。完全に昼夜逆転してるんで、そっとしといてやってください」


 まさか、吸血鬼なんで昼には弱いんですよと言えるはずもなかった。


 日没も近いし、そろそろ目を覚ます頃合いだろう。そう思って、未だ寝息を立てているリベリアを確認する。そして顔を戻したところで……ふと、ニマニマと笑っているミコミコと眼が合った。


「天崎君さぁ、リベリベとはどこまでいってるのさ?」

「へ?」


 どこまで行く? はて、なんのことやら。生憎、リベリアと旅行したことなど一度もない。


「またまた惚けちゃってぇ。早朝の訪問を許してるくらいの仲なんでしょ? 普通の友達以上の関係なのは間違いないよね!」

「いやいや、ただ単にコイツが朝食をたかりに来るだけですよ」

「えぇー、本当にそんだけぇ? 寝起きを襲われたりとかはしてない?」

「してません」


 なんだつまらないのー。と、ミコミコが不機嫌そうに口を尖らせた。

 何なんだ、この人は。他人の恋愛に興味津々の女子中学生か。


「でもでも、もしそのうち襲われでもしたら、抵抗せずにちゃんと受け入れてやるんだぞ。その時くらい男を見せてやれ」

「そうなったら命の危機なんですけどね……」


 一時期本気で命を狙われていた天崎にとっては、冗談になっていなかった。


「いうてもリベリベは可愛いし、天崎君の方から襲っちゃってもいいんじゃないかな。あたしが許可する」

「あなたにどんな権限があるんですか」

「あたしはリベリベの先輩だ」


 飲食店の上下関係って怖えぇ。いや、さすがにこれは冗談だって分かるけども。

 と、ミコミコの声のトーンが変わった。


「でもさ、たぶん相手が天崎君ならリベリベも満更でもないと思うからさ、ちょっとは考えてみてあげなよ。今すぐじゃなくてもいいからさ」

「…………」


 そりゃあ『完全なる雑種』である天崎の血統は、吸血鬼のリベリアにとっては最高級の御馳走だ。満更でもないどころか、是非ともご賞味したいとまで言うだろう。


 けど天崎の方から襲って、リベリアが喜ぶと思うか? まさか吸血鬼ともあろう種族が、人間の相手をするわけがなかろう。返り討ちに遭うのがオチだ。


 そう心の中でミコミコの言葉を嘲笑っていると、不意に肩をこつんと叩かれた。

 何かと思って、そちらを見てみる。

 バランスを崩したリベリアが、天崎の肩に頭を預けていた。


「――――ッ!?」


 脈拍が一気に跳ね上がる。経験したことのない動悸が、天崎の胸を襲った。

 なんで自分がこんなに驚いているのか分からないまま、ある疑問が脳裏に浮かんだ。


 ――あれ? リベリアって、こんなに可愛かったっけ?


 もちろん、吸血鬼であるリベリアが美形であることは最初から認めている。だが、それはあくまでも一般論であり、テレビの中のアイドルと同じようなもの。可愛くて綺麗なアイドルが歌って踊るのは視覚的な保養にはなるが、本気で恋心を寄せることなどあり得ない。


 ん? ってことは、自分は今リベリアに恋心を抱いているのか?


 いやいや、そんなはずはない。自分は『完全なる雑種』だ。人間以外に恋をすることなど絶対にない。リベリアの美貌に目を奪われてしまったのは、たぶんアレだ。突然、真横にミロのビーナスが出現したようなものだ。あんな最高峰の芸術がいきなり目の前に現れたら、誰だってビックリする。


 そう思い込むことにして、天崎はリベリアに肩を貸したまま視線を逸らした。

 そして強引に話題を切り替える。


「そういえば、どうしてマジョマジョさんって安藤のことを気に入ったんですかね。アイツ、地味だし特に取柄もないのに」

「あぁ、それは安藤君が童貞っぽい感じがするからだよ。マジョマジョって、実は童貞キラーなんだ」

「へ?」


 予想外の返答に、天崎はついつい間抜けな声を上げてしまった。

 ミコミコも冗談を言っているようには見えない。


「って言っても、男性の経験人数は一人以下のはずなんだけどねぇ。あ、このことは安藤君には言わないであげてね」


 あっけらかんと暴露するミコミコ。

 女子大生って、こうも簡単に友人の性事情を暴露するものなのだろうか。


「……それって、本人が言ったんですか?」

「そだよー。サークルの飲み会でナンパされてさ、その時にマジョマジョがきっぱりと言い放ったんだわ。『私は童貞にしか興味がありませんから、あなたたちのような遊び惚けてる男の誘いは受けません』って。あたしゃビックリしちゃったね。身が堅いとは思ってたけど、まさかあんな場ではっきりと言うとは思わなかったもん」

「へ、へー、そうなんですか」

「後から聞いたんだけど、高校の時にちょっとヤンチャな男と付き合ってて、酷い目に遭ったらしいの。それからは誰とも付き合ってないって言ってたし、大学でもあたしは知らないかなぁ。だからたぶん経験人数は一人以下と推測できるわけ」

「な、なるほど……」


 聞くんじゃなかったと、天崎は目を逸らした。

 大っぴらにしすぎだろうに。まだまだ初心な高校生の天崎には、少しだけ刺激の強い話題だった。


 それから数分ほど待っていると、近辺を散歩していた二人が戻ってきた。

 周囲はすでに暗くなっており、街灯も灯っている。


「そんじゃ、みんな揃ったというわけで、〆にラーメンでも食べに行きますか!」


 元気よく立ち上がったミコミコが、飲み会の後みたいなノリで声を上げた。

 同時に、天崎の肩に乗っているリベリアの頭がピクリと動く。


「ラーメン食べます!」


 どうやら吸血鬼の活動時間が訪れたようだ。

 肩を組んだリベリアとミコミコが、先頭を歩いて行く。その背中を追う際、天崎は安藤に耳打ちした。


「まったく、羨ましい奴め」

「?」


 何のことだかと首を傾げた安藤だったが、天崎は特に説明をせず、悪魔の友人の背中を思い切り叩いたのだった。

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