プロローグ
※※注意事項※※
2025年10月18日現在、第11話『デビルズナイトメア』まで改稿済み。
第12話『ドラキュティックタイム・終』以降のエピソードは未改稿。
物語や設定に齟齬や矛盾がありますので、ご注意くださいm(__)m
ヴラドは飽きていた。
この世に。この身体に。この地位に。
串刺しにした人間の血を啜り続け、その肉体を吸血鬼へと進化させたまではいい。だが結局のところ、やっていることは人間だった頃と何ら変わりがなかった。
人を従え、国を統治し、世界を支配する。
果たして、吸血鬼に成ってまでやりたかったことがコレなのか?
こんな強大な力を手にしてやることが、人間の支配なのか?
ヴラドは悩み続けた。
太陽に弱くなったとはいえ、人間が何万人束になったところで今の自分に敵いはしないだろう。下手な軍勢なら一夜にして壊滅させることができる。人間に比べれば、吸血鬼とはそれほどまでに上位の存在だった。
ならば何故、自分は未だ人間の行いに執着しているのだ?
本当に吸血鬼に成っただけで満足だったのか?
確かに吸血鬼に成った当初は大いに歓喜した。喜びのあまり、敵味方問わず人間を虫けらのように屠りまくった。吸血鬼とはかくも強いものかと雄叫びを上げたこともあった。
しかし気持ちの高ぶりも、長くは続かなかった。
ふと気づいてしまったのだ。
自分はこんな所で燻ぶっているような存在では――ない。
だからこそヴラドは己の肉体以外をすべて捨て、姿をくらませた。
吸血鬼に成ってから得た魔眼の能力を使い、容姿の似た側近にヴラド・ツェペシュと名乗らせる。また近しい人間にも、彼がヴラドだと思い込むよう暗示を掛けた。こうしてヴラドは、人間という種族と地位に縛られない自由の身となったのだ。
そんな彼が目指すのは、吸血鬼よりもさらに上位の存在だった。
世の中には『完全なる雑種』と呼ばれる、ありとあらゆる種族の遺伝子が混じった血統が存在しているという。もちろん、その中には吸血鬼の血も入っているだろう。ならば『完全なる雑種』こそが目指すべき上位の存在だと、ヴラドは結論付けた。
だが『完全なる雑種』とは、長い歴史を積み重ねて自然と成り行くもの。果たして意図的に到達することは可能なのか?
いや……と、ヴラドは考える。
思い出したのは、自らが吸血鬼に成った方法だった。
ならば『完全なる雑種』に成りたいと願いながら、あらゆる種族の遺伝子を摂取すれば、一代で『完全なる雑種』は完成するのではないか?
試す価値はあり、彼にはその能力もあった。
歴史から姿を消した本物のヴラド三世は、ありとあらゆる人外を求めて世界を飛び回った。




