ブラックホールから逃げられない?
非常事態で艦橋内には警報音が鳴り響き、真奈美は……にっこり微笑んでいました。
ブラックホールから逃げられない?
「もっと簡単に言ってくれるかなあ……」
「……。私の異次元80318がなんでか解らないけど無くなっちゃった。だから異次元を使って出来ることが出来なくなりました。大変な状態ですってこと。離脱中」
――なんですって――
異次元転送が出来ないってことが今、どういう事態を招くのか――想像するのは容易い!
「な、な、な、なんですって! じゃあ逃げられないんじゃないの? ――なに悠長に構えてるのよ! 大変じゃない――!」
「悠長ではない。非常事態対応中! 異次元処理能力無しのため、解析処理力も低下中」
夢なら……早く覚めて欲しいと願った。
――いや、今はそんなことしている場合じゃないわ!
……ほっぺを抓ろうとした手をそっと放した……。
「実際にブラックホールから逃げられるの?」
「計算中! ……。……。……。……完了。現在航行速度を保てばなんとか1時間後に重力圏外へ脱出可能。その後、異常調査予定。異常が判明処置出来ない場合、地球への帰還にも320年必要」
「なんですって! そんなの嫌よ!」
もしそうなった時のことを考えた……?
「……考えたけど、なにも思い付かないわ~。それよりまずは早くここから脱出しないと!」
「全速離脱中!」
イナリは1時間で離脱出来ると言ったが、……出来なければ確実に5時間後にはブラックホールに飲み込まれてしまう。
ブラックホールの一部になって人生を終えるなんて絶対に嫌だわ――。
「真奈美、何を考えている?」
イナリは異次元スキャンが出来ないため、私の考えを読めないようだ。
「なにも考えていないわ。イナリは脱出に集中しなさい!」
「集中中」
……。