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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第一章 次元戦艦オイナリサン!
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空に浮かぶ次元戦艦 (挿絵あり)

ついに次元戦艦がその姿を現す! 樋伊谷真奈美ひいだにまなみは部屋の窓から、そのとてつもなく大きな姿を見て……微妙なリアクションをする。

 空に浮かぶ次元戦艦


 夕食は家族そろっての外食となった。寿司が目の前をクルクル回る……回転寿司だ。あの次元戦艦はこれを見て一体どう思うのだろう。

 私は納豆巻きを取って食べると、朝のことを思い出した。納豆菌は無駄に殺す? 腸内環境を整えてるんだから、無駄に殺している訳じゃないわ。

 確かに……残すのはいけないことだけれど……。


 次にいくらを食べる。

 ――う、確かにいくら全てが命だと考えると……少し残酷かもしれない。


 次に数の子を取ろうとして、さすがに躊躇ってしまい、手を引っこめた。

「はい、お姉ちゃんの好きな数の子」

 遠慮したかったのだが、母が御丁寧に取ってくれた。

「あ、ありがとう」


 結局頂いた。数万という命を――。


 変なことを考えて食べる寿司は少しも美味しく感じず、いつもより全然食べられなかった。……二十皿くらい食べたかな。


 家に帰ると私は自分の部屋で勉強机に向かった。別に勉強する分けではない。椅子を後ろに反らして考えごとをしていたのだ。

 ひとは人間の命は尊重する。他の食べ物だってありがたいと思って食べている。害虫や蚊を殺すときも多少は残酷だなあと感じるけど、……さすがに納豆菌や雑菌にまでに命の尊さなんて感じる? そりゃあ何億も殺してるわよ。

「それが君たち二足歩行型生物の矛盾だ」

 別に話したいわけじゃないのに……勝手に話しかけてくる。

「宇宙には未知なる部分が多いが、それ以外の部分では「存在する」、「存在しない」の二つ。君たちの言う命の尊重とは、自分の活動を最大限に永続させることであり、自分以外の命は自分のために利用するべき物。利用のために保護するのは必要だが、危害を与えてくるものを排除するのは、宇宙においても筋が通っている。待機中」


 次元戦艦の考え方は宇宙人っぽい。人間を完全に客観視している。

 ――いつも偉そうで、余計な御世話だけれど……。


「ねえ、この前は姿を見せると言って途中でやめちゃったけど、実際にはどんな姿しているのよ」

「窓の外を見るがいい。現在異次元内で移動中。私の全貌が見えるはずだ。移動完了」

 何を言っているのかよくわらないが、私は窓を開けて外を見て――あまり驚かなかった……。


 ――目の前に広がる真っ白の巨大な浮かぶ塊を、ただぼうっと眺めていた。


「これってCG(コンピューターグラフィック)?」

「違う。実在する次元戦艦である私の姿だ。披露中」

「披露中って何よ」

 横幅は学校の校舎より大きく、縦幅はここからでは見ても分からなかった。一体何メートルあるんだろう。

「全長約1km。最大幅約500m。地球での総重量は現在1グラムに調整中」

「1グラムって言うのは単位を間違えてるわよ」

「そう言うと予想した。私は重力制御推進装置により航行する。現在地球重力に対し、調整中のため、大気の質量より1グラムだけ重い」

 そっとその白い次元戦艦の先っぽに触ると、……少し生暖かかった。

 金属ではないのだろう。その後、力を入れて押そうとしても、次元戦艦は1ミリたりとも動かなかった。

 1グラムのはずがない……。


「重力制御にてこの空間に固定している。君が押した分、反対に重力制御がかかる。1グラムだが風で飛ぶようなことはない。君が乗っても平気だ。待機中」

「ちょ、ちょっと待ってよ! こんな姿さらけ出していたら大騒ぎになるじゃない! 早く隠れてよ」

 目の前に大きな白い物体が浮いていてもさほど気にならなかったが、自分の手で触れるとなると、急にその存在を実感したのだ。


 こんな大きな物が夜空に浮かんでいたら、パニックを巻き起こす――!


「君の角膜にのみ私が見えるよう調整中。他の生物からは私は見えない。触ることも不可。待機中」

「――だったら私も乗れないじゃない!」

「だ~か~ら、君の体の表面を異次元コーティング調整中。君は私の異次元80318の中で、私が指定した物だけを見ることや触ることが可能。さっき私を触れたはず。待機中」


 ……意味がわからない。

 今は異次元で私が包まれてるから、異次元にあるものに(さわ)れるってことなのかしら……。

 恐る恐る窓から足を出し、その白い甲板へとそっと降りてみた。


 よく見ると次元戦艦の一部が木や建物にめり込んでいる。異次元に居るから全く影響がないのだろう。

「あれ、さっき1グラムに調整中って言ったけど、異次元に居るなら重さなんてないんじゃないの?」

「……君にわかりやすく説明するために、1グラムと申告。落ちないよう注意」

「もしかして、ただ自分の性能を自慢したかっただけとか?」

 意地の悪い目をしてそう質問してやった。

「自慢など不要。私のスペックは完璧。現在53キロ飛んで1グラム。待機中」

「?」

 別に私の部屋からは少しも動いていない。53キロ飛んだのは異次元でのことなのかしら。


 自分の体重が53キロだと気付いたのは、甲板から部屋に戻った後だった――。


「もしかして、53キロ飛んで1グラムって私の体重?」

「気が付くまでの時間5分32秒。IQは低目と判断。現在異次元内での君の位置を艦首から艦橋内へ移動中」

 乙女の体重をばらさないでよ――! 怒ろうとすると、窓から見える次元戦艦が急に近づいてくる。

「ちょっと、危ない」

 ――ぶつかるわ!

 身をかがめると、次元戦艦は私をすり抜け、ゆっくり白色から透明に消えて行った。

「消えたのではなく君の視界から異次元内を見えなく調整。通常は異次元での君の位置は常に私の艦橋の中に位置している」

「艦橋の中? それは私も見えるの?」

「見えるよう調整」


 ――次の瞬間、今までいた私の部屋が急に白く広い空間に変わった――。


挿絵(By みてみん)

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