二度目の保健室
真奈美にまたしても危機が迫る! 痛みが襲う! 記憶が遠のく……。
二度目の保健室
「サード、危ない! って真奈美! なんでグローブ外して泣いてるのよ~!」
「あっ!」
『あっ?』
則子の声とほぼ同時に私の顔に……ソフトボールが強打し、……意識が、本当に遠退いてしまった……。
ドテッ。
保健室のベッドの上で……ゆっくりと目が覚めた。
「あ、マナ気が付いた。大丈夫?」
カナの顔が見える。その横には保健の先生と則子がいる。
「はあ……。樋伊谷さん。少しは授業に集中しなさい。あなた最近ソフトボールする度に保健室に来ているわよ」
保健の先生はため息交じりにそう言う。以前にも同じようにボールが顔に当たって運ばれているのだ。
最初なぜここにいるのか分からなかった。記憶をたどろうとしても思いだせない。……なんか凄い大切なことを忘れているようだ。
授業のベルが鳴ると、カナと則子は保健室を出て行った。私はもうしばらく横になっていくように保健の先生に言われたのだ。
「おいコライナリ! 自慢の異次元シールドはどうしたのよ。なんでボールが当たったのよ!」
小さい声でそう言う。
『異次元コーティングは展開していたが、とっさのことでボールを自然な形で異次元処理不可能となった。真奈美に当たって倒れるのが一番自然。私の存在や異次元転送が他の者にバレなくてすむ。待機中』
顔はまだ痛む――。
「じゃあこの痛みはなによ!」
『痛覚設定弱で真奈美の痛覚神経に直接インプット中。真奈美の演技力は皆無。当たった頬の反対側を痛がる可能性も大。そのため、実際に痛覚が必要と判断。待機中』
「――いらんそんなもん! 早く治せ!」
思わず声を出すと、保健の先生が慌てて駆けつけて来た。
「大丈夫? 打ちどころ悪かった? 気分が悪かったら救急車を呼ぶわよ」
「え、いえ、結構です。ちょっと夢を見てただけです。もう治りましたから教室へ戻ります」
ベッドから起き上がるが、保健の先生は心配そうな顔で見ていた……。
保健室を出る時には顔の痛みは消えていた。