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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第二章 超次元戦艦オイナリサン!!
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突然訪れる非常事態!

ディアブロ・ゾンタをイナリが調査しているとき、真奈美に危険が!

 突然訪れる非常事態! 


 身も凍るような寒空の下、校庭でソフトボールをしなくちゃいけない理由は? 教師による虐め以外の何でもないと私は思う。

「いいじゃない。ソフトボールは楽しいから!」

 則子は笑顔で重たいベースを運んでいく。

 放課後、部活でもソフトボールをする則子は、はっきり言ってソフトボール馬鹿だわ。今日もしっかりマウンドに上がる。

「先ほどのディアブロ・ゾンタからの首輪は罠と解析。宇宙的危険物ではなく、人間レベルでの罠。待機中」

「ちょっとイナリ、授業中に喋りかけないでよ。またソフトボールが顔に当たったりしたらどうするのよ」

 私はまたサードを守備していた。


 則子は体育の授業中は手加減をして投げるから、みんな打ってく可能性がある。

「真奈美は前を見て構えていても、横を向いていても守備力は同程度。それより、ディアブロ・ゾンタの経歴調査完了。イタリアでも日本へ移り住んでからもチョイワル程度の問題児。そのため転校を余儀なくされている状況。この高校も時間の問題と推測」

 ちょっと、ちょっと、気になるじゃない!

「なにか悪いことでもしたの? チョイワルってそれ……褒め言葉なの?」

「大勢の人間雌と遺伝子を残すための濃厚接触欲望を確認。女教師も同様。同様の手口で今回も作戦遂行中」

「――遺伝子を残すためにの濃厚接触! それって……きゃ~、なんのことよ~」

 顔が耳まで赤くなるう~。

 思わずそう言った瞬間、カキーン! 音と共に唸りを上げて打球が飛んできた。

「サード! 危ない!」

 則子がそう言ったが、私の意識はソフトボールなどには全くない!

「え? どうしたの? なにが危ないのよ」


 気がつくとボールは、私のグローブの中に納まっていた。


『顔面に直撃する寸前に異次元転送実施。グローブ内へ再転送完了。不自然なし。待機中』

 イナリがそうメッセージを表示するのだが……、皆の視線は私に釘付けである。

「ええっと、あ、ナイスキャッチだわ私! ノーバンだからアウトよね、はい則子!」

 マウンド上の則子へボールを投げると、則子はそれを受け止めながら呟いた。

「ナイスキャッチ……と言いたいところだけど、早すぎて見えなかったわ。真奈美って、実はすごい運動神経の持ち主なの?」

 右手で鼻をこすって答える。

「へへ、まぐれよまぐれ」

 それを聞くと、則子はマウンドに戻り、また打者に向かってボールを投げ始めた。

『指に鼻水付着大。拭き取るか異次元転送するか選択可能。待機中』


 ――恥ずかしいことわざわざ表示するな!

 私は指に着いた鼻水をグローブにねじくった。


「ウハア~! 学校の物なのに。次に使うものが可哀想。哀れみ中。待機中」

 機械の制御装置の分際で「ウハア~」とか言うな! なにが哀れみ中だ!

「いいのよべつに。こんな古臭いグローブ!」

 そう言って……ちょっと気になって、そっとグローブを外して左手の臭いを嗅いでみた。

(くっさ)っ!」

 ――慌てて左手から顔を遠ざけた。

 使い回しであるそのグローブは、想像を絶する匂いがしみついている~!


 毎度のことなのだが、体育が終わってから石鹸で何度も手を洗わないと、この匂いは消えないのだ……。嫌になってしまう……。

「クサイを知って嗅ぐはタワケということわざあり。真奈美の脳細胞に強烈にインプットされた臭気を再確認したい好奇心は、人間においてまれに発生する行動。真奈美は病みつきと判断。待機中」

「病みつきなわけないでしょ!」

 慌ててそう言った瞬間、またしてもカキーン! と金属音がして――、

「――真奈美危ない!」

 則子が叫びながらこちらを向く!


 私がサードを守る時は、なんでこんなに打球が飛んでくるのよ! 

 皆……私に恨みでも持ってるわけ? 必死に顔を両腕でかばった。ボールを取ろうともしない。――当然よ! グローブを外していたのだから――。

 放したグローブが、ドサッとグランドに落ちた。


「真奈美大丈夫? ボールが顔に当たったように見えたけど?」

 則子が近づいてきて心配してくれる……。そっと手をどけたが、別にどこも痛くない。

「ええっと、大丈夫みたい。でもボールは?」

 辺りを見渡すがボールがない。まさか、イナリが異次元へ転送したのかしら?

『それは不自然と判断。現在ソフトボールは落ちた真奈美のグローブ内。待機中』


 ……そんな所に転送した方が、もっと不自然じゃない!


 そっと臭いグローブを拾い上げた。

「あ、ボール入ってたわ。またまたナイスキャッチ! ツーアウトね!」

 笑顔で則子にボールを手渡したのだが、……則子は細い目で私を見続ける。

「危ないでしょ真奈美。いったいグローブ外して何をやっていたわけ?」

 他のみんなもサードに集まってきてしまう。

「なにをって……、このグローブの紐が緩くて、すぐに抜け落ちゃうのよ」

 それに臭いし……とは言わない。異臭フェチかと勘違いされては甚だ迷惑極まりない~!

 すると則子は、私の着けていたグローブを手に取って見た。

「そうねえ。紐が緩んでるから危ないといえば危ないわ」

 則子は自分がしていたグローブを外して差し出してきた。

「私のを使った方がいいわ」

 見ると、皮が物凄く奇麗で光っている。則子は体育の授業中も自分のグローブを使っていたようだ。

「え、いいの?」

「もちろん。真奈美が怪我する方が心配だもの。さあ、残り時間も少ないわ。9回裏まで全力投球するわよ!」

 マウンドに走って戻る。皆もそれぞれの守備位置へと戻って行った。


「やっぱり則子は優しいわね。自分のグローブを貸してくれるなんて」

「田中則子の手が異臭に侵されるのが気の毒中。待機中」

 私は則子のグローブに手を入れようとして、一瞬戸惑った……。

「……真奈美はグローブを早く装着しないと危険と判断。打球が再び来る可能性あり」

 イナリの忠告を無視して、私はそっと則子のグローブを鼻に近づけ、臭いを嗅いでみた――。


 ――!

『――!』


 記憶が遠ざかる――。

『真奈美の身体に異常発生! 緊急事態! 嗅覚に異常認識! 神経修復操作実施。脳細胞への記憶を遮断。呼吸器異常のため咳を促進処置実施!』

「ゲホ、ゲッホ!」

『涙腺拡張確認。涙流出確認。人体構造上自然症状。心拍数、血圧安定調整中。――完了』

 則子のグローブからは、先ほどのグローブと比べ物にならない異臭がしたのだ――。


 まるでワサビを鼻の下に練りつけて、肺いっぱいに新呼吸したようにむせかえってしまった! 

 おう吐しなかったのが……不思議なくらいだ。涙目で私はイナリに言った。


「こ、これ……。く、臭いわ。ゲホゲッホ。死ぬかと思った!」

「異臭と言うよりは……化学兵器級。危険物として判断必要。田中則子のグローブは酢酸系異臭危険レベル。警戒必要とデータベース変更中」


 その時、またしても打球が飛んできていた――。

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