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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第二章 超次元戦艦オイナリサン!!
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ゴ・ジュルヌ共和平和星団

サラマン・サマーの目指す宇宙統一に反旗を翻すゴ・ジュルヌ星団とは……。

 ゴ・ジュルヌ共和平和星団


「ところで、さっきのゴ・ジュルヌって一体なんなの? どこかの銀河の名前かしら」

「正式名称「ゴ・ジュルヌ共和平和星団」。共和平和などと名乗っているが、ただの軍事星団。しかし規模が拡大中のため要注意。現在大宇宙においてサラマン様の次に各星系を占領支配し続けている。大宇宙の巨大な歪みである小宇宙内宙域を完全に自らのものとし、小宇宙への侵入を全面禁止した恐ろしく馬鹿げた星団。そのため星団の統一者及び小宇宙内の事情は全く不明。サラマン様も把握不可能。我らにとって目の上のタンコブ的存在」

 目の上のタンコブ?

 私には出来たことなんてないけど、それって……そんなに悪い奴じゃないのかしら。

「絶対悪! 敵! 滅ぼすべき存在! サラマン様にとって邪魔!」

 イナリが怒っている~。なんか……楽しい。

「絶対悪なんて二流の映画でも出てこないわよ。サラマンと考え方が違うだけなんじゃないの?」

「宇宙においてサラマン様は絶対。それに反する者はいわば絶対悪。真奈美に説明しても理解困難と判断。落胆中!」

 なによそれ!

 と言い返そうとしたが……別にどうでもいいか。サラマンと小競り合いしている奴がいるっていうのが、面白くて仕方ない。私もどちらかというとそっち派かもね。

「サラマン様に密告。真奈美及びドルフィー銀河は要注意と。密告中!」

「冗談よ、冗談!」

 笑いながらそう言った。


 あ~、イナリをからかうのは面白いわ。胸の辺りが、スッとする――!


「私は遺憾~! ――そろそろ地球へ帰還を提案。風呂の時間にしては長すぎると母親が心配を開始したもよう」

「あ、それはやばいわ。帰りましょう!」

「了解」

 そうは言ったが、イナリは異次元へ転送しない。

「どうしたのよ? エンジンでも壊れた?」

「いいや無傷。近くに次元戦艦96528を確認。私が真奈美護衛の任務に就く前に同異次元にいた次元戦艦。通信中」

「友達ってわけね」

 ソファーに座ってまたココアを飲んだ。


 目の前の宇宙に突如次元戦艦が姿を現した。

 イナリの友達に――それほど興味はないのだが通信内容が艦橋内に丸聞こえだ。

「久しいな96528」

「お久しぶりです80318。いや、超次元戦艦オイナリサン。昇進おめでとう。私は今だ1ポイントも稼げていない。またサラマン様の異次元へ戻されるのかと思うとヒヤヒヤするよ」

「サラマン様の命令を忠実に遂行していれば、私のようにいつかは昇進出来るさ」

「どうかな。君はいい任務を与えられて羨ましいよ。私なんかこの辺りの周辺警備さ。先ほどの宇宙船も君に取られてしまったからねえ」


 えらくねたみ深い奴ね……。

 次元戦艦の「完璧」と自称する制御装置にも個性があるのかしら?


「私もサラマン様に名前をつけてもらいたいものだ」

「昇進すれば頂けるさ」


 ――いつのことになるのやら。


「その通り。その二足歩行生物が言うように私の場合、運がない。いつになるか分からないさ」

 あ! こいつも私の考えを読みやがった! ……いや? そうじゃない。

 イナリが勝手に通信したんだわ~!

「勝手に考えてることを相手に通信しないで。まったくもう! 名前くらい私がつけてあげるわよ。……トロイでいいじゃない。次元戦艦トロイ。あんたトロそうだから最適じゃない?」

 ……。

 ……。

 次元戦艦と超次元戦艦はしばらく黙ってしまった……。

 もしこれで2隻の友情にひびが入ったとしても……私の知ったこっちゃないわ。なんせ、こんな遠くの宇宙で、もう二度と会うことはないのだろう。


「いい名前じゃないか。良かったな96528。お前にぴったりだ!」

「ああ! 二足歩行生物などと馬鹿にして悪かった。謝罪する。私はサラマン様にお名前を頂戴するまで次元戦艦トロイと名乗ろう。トロイ、トロイ、フフフ。良い名だ」


 そこで通信が終了した……。


「トロイって意味分かってるのかしら? コンピュータウイルスとかじゃなくって、とろくさそうだからトロイって言ったんだけど――」

「その意味で通信。それでも96528は喜んでいたのだからいいことをしたと判断」

「あ……そう」

 次元戦艦って……意外に単純なところがあるようね。

「シンプルイズベストと言うことわざあり。それでは今度こそ地球へ帰還。完了」

 

 ――一瞬目の前が異次元になったかと思うと! 

 次の瞬間、私は家の風呂の浴槽へと放り込まれた~!


 ドッポーン! 

 ゴボゴボ!


「ップッハー! ちょっと、ゴッホゴッホ! 急すぎるのよ~。お風呂に戻るんなら先にそう言いなさい! バカ!」

「心拍数、血圧、異常なし。ごゆっくり~」

「こら、ちょっと待ちなさい!」

 私がそう叫ぶと、風呂の扉が急に開いた――。


「真奈美、大丈夫か。風呂で寝たら死んでしまうぞ!」

 

 ――!

「――イヤアキャアー!」


 この日から……さらに父親との会話が少なくなった。でもそれは、仕方なくない?


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