ガイザク提督との再会
ドルフィー銀河第一惑星宇宙港にて真奈美とイナリは、共に闘った戦友との再会を果たす。
ガイザク提督との再会
イナリの助けを借り、ドレス姿へと変身した私が透明なクリスタル状の宇宙港へと降り立つと、周りからは大きな歓声が響いた。
宇宙港の周囲は宇宙人やら機械やらでうめつくされている――。
「ねえ、イナリ。こんなに大勢いるけれど大丈夫かしら。テロとか暗殺者が私を狙ったりしてないわよね?」
振り向くと、イナリこと超次元戦艦オイナリサンは空間から消えていた。
「イナリ! ちょっとどこ行くの、一人にしないでよ~」
『異次元へ移動しただけ。地球上と同じように真奈美の護衛は継続中。異次元シールドで真奈美はコーティング中。心配無用。待機中』
「なんだ、そうなの。でも地球じゃないんだから勝手にどこかへ行ったりしないでね」
大勢の警備員の中から偉そうな宇宙人が数匹前に歩み出てきた。
「お越しいただきありがとうございます。私が現在ドルフィー銀河全体を統括しているマドランと申します。統括とはいえ、この銀河の全権利は樋伊谷真奈美様のものであり、我々はあなた様を平和の女神としております」
そう言って私の前に膝まづく。
「ちょっと、よしてよ。私なんて、ただの女子高生なんだから」
私もドレスで同じように膝を着くと、マドランは慌ててもっと頭を下げ始めた。
――大勢見ているのでこっちが恥ずかしいじゃない!
『真奈美はドルフィー銀河の総支配者。少しは偉そうに振る舞うのが礼儀と判断。また、宇宙人同士は様々な挨拶などがあるが、ここでは権力が上位である真奈美の挨拶を真似るのが宇宙では常識』
目の前に映るイナリの文章を読んで立ち上がった。
「じゃあ、握手でいいのかしら……」
ほぼ頭を擦り付けた土下座のような姿をしているマドランへ片手を出した。
マドランはこちらを見て同じように立ち上がる。
――その背丈は祐に5メートルを越え、首から先が3本ある。キングキトラって怪獣に似ているかしら……。
握手の仕方を知っているかどうか知らないが、イナリがそれなりに私の声を翻訳してくれたようだ。マドランは大きな爪のついた手を差し出した。
「初めまして。ドルフィー銀河のことは全然知らないんですけど、よろしくお願いします」
「勿体ないお言葉です。真奈美様のお陰で、この銀河の平和がございます。見てください。この祝福を!」
マドランが両手を広げる。
どこを見て良いのか分からなかったのだが、よく見ると、宇宙港を大きく囲んでいるお椀型の形状は、超巨大スタジアムだった――。
遠くの方は霞んでいてよく見えないがとてつもなく大きいのは確かだ。今立っている宇宙港は、そのお椀に浮かぶ……一つのネギ程度の大きさで、下にもびっしりうごめく宇宙人がいる! そして、そのお椀型の中心に私の立体映像が投影された――!
「デカっ―!」
『? 警察? 意味不明のため翻訳せず。待機中』
馬鹿、違う! 大きすぎるってことよ!
あれじゃ、巨身兵か新人のウルトラマンだわ! ちょっと恥ずかしいから小さくしてもらってよ!
『了解。遺憾だと警告! 完了』
マドランの顔が――瞬時に青ざめ、真奈美の立体映像は瞬時に小さく消えて無くなった。
「とんだご無礼申し訳ありませんでした!」
またしてもマドランが地に這いつくばって謝罪する~!
……イナリがどう翻訳したのかがすごく心配だ。もうやりづらくて困ってしまうじゃない!
その時、マドランの後ろから見覚えのある宇宙生物が歩み出てきた。
「お久しぶりです、真奈美様」
「あ、久しぶり! ……ええっと?」
……名前を忘れてしまった。
でかい顔に直接生えた足。顔の半分以上ある口からは前と同じようにヨダレをダラダラ垂らしている。拭けって言いたくなってしまう。
「おお、すまんすまん。ちなみに私の名はガイザクです。思い出して頂けましたか?」
「あ! はい! ちょっと忘れてしまっただけです。御免なさい」
『真奈美の記憶媒体から名は完全に消滅していた。改めて落胆中』
――うるさいわねえ。宇宙人の名前って覚えにくいのよ!
それよりも、ヨダレを拭けって伝えたりしないでよ!
見るとガイザク提督はウエスのような物で口の辺りを拭いている。足しかないのに器用なものだ。
「でもガイザクさんがいてくれてホッとしました。他は知らない宇宙人ばかりですから」
「私もまた真奈美さんに会えて光栄です。マドラン様は正式な投票により現在は統括者の任に着いてますが、本人は気が弱くて……。気を悪くしないで下さい」
見かけはドラゴン並の強そうな怪獣に見えるが、オドオドしている様子を見ると、宇宙人にも色んなのがいるんだと……改めてため息が出る。
「それより、せっかくですのでドルフィー銀河の民にお言葉を頂けませんか?真奈美様の声を聞くために大勢の者がこのスタジアムに来ているのです」
そう言うとマイクのような拡声装置を他の宇宙人が示してくれた。そこで喋れということなのだろう。
また私の立体映像がデカデカと現れると、大きな歓声のあと、辺りは驚くほど静まり返った――。