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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第二章 超次元戦艦オイナリサン!!
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宇宙にたった一つのドレス

真奈美はセレモニーに着て行くドレスを超次元戦艦オイナリサンに要求する。

 宇宙にたった一つのドレス 


「ねえイナリ。……ドレスとかちゃんと用意してるんでしょうね。制服やこの前の古くさ~い艦長の服なんかだったらセレモニーなんて出ないからね!」

『当然準備済み。フリフリからブリブリまで網羅。完璧。待機中』


 白く華やかなドレスをまといホテルの会場のような所でイケメンを前にスピーチするのを想像していた。

 ああ、そしてスピーチが終わると――そのイケメン達がグラスを片手に私に集まって来るんだわ。ああ、どうしましょう。私には橘君っていう彼氏がいるのに。困っちゃう~。

『ドルフィー銀河に人間は皆無(かいむ)。ガイザク将軍ほか御偉方が賛同予定のため、イメージ修正中、完了』

 頭の中に思い描いた空想のセレモニーが……イナリによって強制的に書き変わった!


 ――並んでいた大勢のイケメンが――でかい口だけの化け物に早変わりし、ヨダレをダラダラ溢している~!


 ほぼ全員がその姿に変えられたところで私は抗議した!

「――人の想像まで勝手に妨害しないで!」

 まったく! これじゃプライバシーも何もないじゃない!

 化け物だらけになってしまったセレモニーの想像を頭から振り払った。

『予行練習断念と判断。残念。待機中』

「もうずっと待機してなさい!」


 机にうつ伏せになってため息を吐く……。

「あーあ。せめて橘君にだけでも見てもらいたいなあ。私のドレス姿……」

『……正体がバレては、現状の生活を続けるのは困難。別の機会にしたほうが良いと判断。どうしてもと言うのなら実行は容易』

「バカ……。冗談に決まってるでしょ」


 超次元戦艦オイナリサンが私の護衛を始めてもう2ヶ月になる。

 ……実際には1ヶ月しか経っていないのだが、どこかの誰かさんが自分の不手際を隠すために一ヶ月時間を戻してしまったのだ。……そのせいで私は、冬休みを二回もエンジョイ出来たのだが、実際には分かりきった日々をバレないように過ごすのは酷だった。

 ――フラれると分かっていて、橘君に告白したのは……自分でも「何をやってるんだろう」……呆れてしまった。


 掃除が終わり、私は颯爽と下校する。グラウンドにはいつものように橘君目当ての女子がこの寒い中、フェンスに群がっている。

 ――はたから見ていると、馬鹿な暇人に見えてくるわ。

「真奈美も同類と判断。馬鹿な暇人。待機中」

「うるさい! それよりイナリ、急がないと間に合わないんじゃないの?」

 もう三時半を過ぎているわ。ドルフィー銀河までどれくらいの距離があるか忘れたが、私の準備だってあるのだ。

「了解。周囲に視線無しを確認。では真奈美を異次元へ転送。完了」

 私の周囲は一瞬にして通学路から白く殺風景な超次元戦艦の艦橋内へと姿を変えた――。


「着替えはどこよ」

 小さな白いテーブルとソファー。それ以外には何もない。窓もないが息苦しさは全くない。むしろここは私にとって落ち着く空間となっていた。

「真奈美テイストのドレスを転送。本来地球上全てのドレスから選択可能であるが、真奈美の制御装置処理速度は極めて遅く、時間の浪費と判断。そのため、私が選択。転送完了」

 なんか、腹立たしいことをさらっと言われた気がするが、目の前のテーブルに一着の黄色と橙色の明るいドレスが現れた時、一瞬――黙ってしまった!

「……まあまあね。他のはないの?」

 早く着てみたくてウズウズするのだが、腕を組んでわざとそう言う。

「他にもたくさんある。地球上の全てのドレスから選択可能と先ほども報告済み。ただし、このドレスは完全受注製作品! 真奈美のしょぼい体型に合わせた完全オーダーメイド! この大宇宙に一着のみ。待機中」


 ――胸がキュンとした!

「オーダーメイドですって? 私のために?」


 直ぐに手に取ってドレスを見る。キメの細かいシルクのような触り心地……。実はシルクなんて触ったことなんてないんだけどね。てへっ。

「じゃあこれを着るわ。ありがとうイナリ!」

「喜んでもらえて光栄。縫った甲斐があったと判断。満足中」


 縫った? イナリが? あんた……手なんかあるの?


「ドレス作成のために異次元空間内で艦内の一部を専用アームへ改造。その後、裁縫処置施工。完了後にアームは解体。恐ろしいほど時間を浪費」

「……だったらアームなんて使わずに、そのまま絹を裁縫したら良かったんじゃないの」

 異次元で物の移動や変形は自由自在なんでしょ? だいたい、ロボットアームなんて不器用そう。針なんて持てるのかしら?

「裁縫以上に繭からの糸取りが困難。人間の根気に少々感服した」


 ドレスを持ったまま呆れていた……。

 前に時間の浪費が勿体ないとかどうか言ってたくせに、イナリは異次元で一体何をやっているのよ。


「私の本来の任務は樋伊谷真奈美の護衛。勤務中。それはさておき、早く着替えないと時間がない。催促中」

「あ、そうね。じゃあ向こう向いてなさい。着いたら言って」

 周りが壁だらけの部屋で、誰にという分けでもないのだが、そう言ってから制服のスカートを脱いだ。

「ドルフィー銀河主星にはドレスを選択する前に到着済み。現在ドルフィー第一惑星宇宙港。艦外には真奈美が出てくるのを護衛と役人が首を長くして待っている。待機中」


 部屋の壁が全て艦外を投影するモニターへと変わっていった――。


「ええ~! もう着いてるんなら早く言いなさいよ! っていうか、壁を全部モニターにするなあー! なんか、全員に見られているようで恥ずかしいじゃない!」

 慌ててドレスを着た。


 周り全てのモニターが、小さな窓位の大きさへと変わる。

 ……もしかして、イナリはワザとやったんじゃないかしら――。


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