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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第二章 超次元戦艦オイナリサン!!
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八千五百兆人?

弁論大会は免れた真奈美だったが、遠い宇宙でスピーチをする羽目となる。

 八千五百兆人?


 休み時間になると、田中則子の周りにはワイワイ人だかりができた。

「ねえねえ、則子は全校生徒の前で話すの嫌じゃないの?」

 カナの問いかけに、不思議そうな顔をして則子が答える。

「え、どうして嫌なの? 自分の言いたいことなんだから、むしろ大勢に聞いて欲しいわ」


 友達の田中則子は成績も優秀で、スポーツも出来る――。


『その上、真奈美と違ってスタイルも性格も良い。全校生徒の人気者。待機中』

 ――真奈美と違っては余計よ!

 しかし……イナリにそう反抗しながら、認めざるをえないのが……チッ、ムカつく。


 自分の席から、そのクラスの人気者を眺めながらイナリに呟いた。

「大勢の人前で話すのって、私は苦手なんだけど、何で則子は平気なんだろう。緊張しないのかしら?」

 則子は一年にして女子ソフトボール部のエースだ。大きな大会に何度も出場していれば、少々の緊張なんてへっちゃらなのかしら……。

「緊張するのは失敗を過剰に恐れるため。則子の精神的構造は実力を出しきるタイプと解析。真奈美など凡人は、できるだけ良いところを見せたい願望が過剰。それにより緊張して自爆。自爆は我ら次元戦艦において愚の真骨頂。理解不能。待機中」

 誰も近くにいないからといって、声に出してワザワザ――凡人――だなんて言わなくていいわよ!

『ただし、凡人でも何度もそのような場を繰り返せば克服は可能。幸いにも真奈美はこれから大勢の前で話す機会あり。克服するチャンス到来!』

「はあ? なに言ってるのよ。私は弁論大会になんか出るつもりはないわよ」

『真奈美が話す機会と言うのは、ドルフィー銀河統一者としての所信表明。中継は超高速通信にて同時刻にドルフィー銀河全ての知的生命体、知的制御装置、さらには我が主であるサラマン様も御拝聴してくださる。数に換算すると、約八千五百兆人』

「ハ――八千五百兆人? 聞いてないわよそんな話――!」


 思わず大声でそう言って、立ち上がってしまった――!


 則子を含め、クラスのみんなの視線を一人占めしてしまい……顔を真っ赤にしてゆっくり座り直す。

『顔面赤色。血圧上昇確認。血流抑制処置実施。完了。正常範囲内、安定中』

 イナリの何だか解らない処置のお陰で、瞬時に平静さを取り戻すことが出来たのだが、先ほどの内容については平静でいられない~。

「……何で私がそんなことしなくちゃならないのよ。イナリがやりなさいよ!」

『ドルフィー銀河の統一者が行うのが大宇宙でも常識。ドルフィー銀河全ての民が真奈美に期待大。統一力を強めるためにも真奈美本人がセレモニーに出場するのは必要と判断』


 ああ……今ほど……夢であって欲しいと思ったことはなかっただろう……。


「それで、そのセレモニーっていつあるのよ。……まさか」

『地球時間で本日十六時に設定。ドルフィー銀河へ真奈美の都合上、その時間に向かうと先月返答済。現在ドルフィー銀河は空前の祝祭突入中。真奈美を今か今かと待っている。つまり待機中。待機中」

「ええ~? 十六時って言ったら、帰って着替える暇もないじゃない! それに、何て喋れば言えばいいのよ!」

『心配御無用! 先ほども言ったが、良いところを見せつける必要なし。原稿は適切なものを準備済み。場合によっては音声吹替えも可。真奈美は、ボ~っと口を開けて突っ立っているだけでいい』

「なーんだ。それなら……まあいいか」


 イナリと出会ってからはロクなことがなかった。

 宇宙の果てまで連れていかれたり、大きな要塞を破壊したり、銃弾から逃げたり、ボールが顔に当たったり……。

 でも、今回だけは少し乗り気になっていた。それは、セレモニーというカタカナを聞いたからだ。


 大勢の人が私に注目してくれるのは……少し悪くないかもしれないわ……。


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