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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第一章 次元戦艦オイナリサン!
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夢オチ

自分の部屋で目覚めた真奈美は、ぼんやりとイナリのことを思い出し……涙する。

 夢オチ

 

 イナリを返しなさいよ――!

 ――勢いよく手を出して目覚めた。


 一瞬で何が起こったのか解らなかったが、気が付くと見慣れた私の部屋だった。

 机の上の日記帳がベトベトになっていたが、よだれでではなかった。

 

 ――目には流れた涙の痕だけが残っていた。

 

 時計を見ると夜の十時五七分。そして時計の日付は、十二月二九日を表示している。

 次元戦艦が送られてくる――四時間前……。

「イナリ……」

  

 目の前に「待機中」の三文字はもう……見えない。

 また頬を涙が伝い落ちた。

 

 

 書きかけの日記帳に、ぼんやりとイナリが来てから覚えていることを書き始めた。


 最初に文字が目に映った事や、声が聞こえたこと。

 橘君とのデート作戦を一緒に考えたことが、遠く昔のことに思える。


 ……昔のわけがないのに……。


 イナリが敵と言って、大勢の人を殺した――。

 ヌガヌグ帝国を主砲で滅ぼした――。

 そして、私が……次元戦艦オイナリサンを……大好きだったイナリを、不良品だと決めつけて……。


 ――電子レンジにしてしまったんだわ――!


 日記帳にまた涙が零れ落ちて、書いた字が滲んだ……。


 

「真奈美、起きてるんだったらはやく風呂に入って頂戴」

 一階から母の声が聞こえた。今はお風呂になんか入りたくもない――。

「今日は入らないわ!」

「でも、もう二日も入ってないでしょ! 残り湯を洗濯に使いたいから早く入ってしまいなさいよ」

 私にとって、その日の記憶はあまり残っていなかった。


 サラマンは銀河の時間を戻すと言ったが、私の時間と記憶は……戻っていない……? それとも――。

 

 日記帳を布団の中に隠してお風呂に入ることにした。

 かかり湯もせずに湯船に浸かる。風呂の天井を見ると、先ほどまで高ぶっていた脳細胞が落ち着きを取り戻し始めた。

「……夢。だったのかしら」

 漫画や小説で「夢オチ」というものを読んだことがある。結末は主人公が見ていた夢だったっていうパターンだ。

 悲劇の場合は。それが夢ならハッピーエンドなのかもしれないけれど、私にとってはちっともハッピーではない……。


 ――?

 次元戦艦とのハッピーエンドって、……なに?


 人が死ぬような事件が、夢だったのであれば――、まさしくそれこそが一番のハッピーエンドだ。

 ――ライフルで狙われたり、自分の目から熱線が出て人を怪我させたり、無実な人を大勢殺してしまったり……。そんな事件は起こってはいけない――。

 ――それどころか私は、自分の身を守るため、一つの帝国をも滅ぼした。――ヌガヌグ帝国を滅ぼしたのだ。


「ドルフィー銀河での戦争も全部夢だったのかしら……」

 サラマンは、私のいる銀河だけ時間を戻すと言っていた。でも、それ自体が夢だったのかもしれない。


 頭の中の記憶は、今や私だけの記憶――。その記憶を証明できる物がここには何も残っていない――。


 まるで私だけの異次元空間……。



 体を洗いもせずにお風呂を上がり、いつものように体重計に乗った時、確信した――!

「絶対夢じゃない! イナリはちゃんといた! 私が夢だと思って忘れてしまったらイナリが本当に夢になってしまう!」

 絶対に忘れないようにしないといけない――!

 

 ……そう確信したのは、体重計の針が54キロを指していたからだ――!

 私の記憶する正月前より……2.5キロも! 太ってしまっている~!


 これこそがリアルだ! 動かぬ証拠だ――! あぶら汗が流れる!

 正月太りをして、さらに先ほどサラマン第一惑星で焼き肉を食べたからだわ――!


 少しウエストがきつくなっている部屋着を着て、自分の部屋に向かった。


 眠るとイナリとのことを忘れてしまいそう――だから――、


 全てを書き終わるまで寝るまいと決心した――


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